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2009年9月 1日 (火)

人魚伝説

そこは人魚姫の伝説のある郷であった。
郷の若者に恋した人魚姫は「人」となり、その若者と結ばれた。幸せな一時を過ごした後、人より遥かに長寿である「人魚」に戻ることはせず「人」として短い命の終焉を迎えたと聞く。その亡骸は、郷の外れに伴侶とともに埋葬された。
その墓の所に社が建てられたのが、この海宝神社の起源と言われている。

この地方には鳥や獣が「人」となって嫁いで来たという伝承が多数存在していた。
僕は大学の資料室にあった民間伝承の断片を辿ってみた。あまたの伝承は「話」だけのものが多く、ここのように墓が存在したというものは珍しかった。
僕は実際にその伝承の特異性を確かめるため、この地に足を運んだのだった。

 

雑草に囲まれた社の周囲を見て廻ったが、墓らしきものを確認する事はできなかった。
ふと見ると、雑草の中に紅い実を付けた植物があった。珍しい葉の形をしている。植生は専門外であるが、どうやらこの地方独特のものなのだろう。

この実は食べられるのかな?と、手に取ろうとした時
「それは食べない方が良いですよ。」と女性の声がした。
振り向くと巫女さんが立っていた。
「ありがとうございます。食べれそうな気がしたので…」
「いえ、食べれない事はないのですが、この実は特別な儀式の時にだけ使われるものなのです。」
「へ~。何か、お祭りとか? …すみません、自己紹介がまだでしたね。僕は武藤清彦といいます。大学で民俗学を専攻しています。」
「恐れ入ります。私は静香と申します。ここで巫女のような事をしております。よろしければ中に入りませんか?」
と僕は静香さんに導かれて、社の中に入っていった。

僕は伝承の詳細を巫女さんの口から聞く事ができた。
その女が「人魚姫」であったかの真偽は定かではないが、相当な美人であった事は確からしい。ある日、どこからともなく現れた女は、自分の事を人魚の化身だと称していた。
素性は定かではないものの、気立ては優しく村の為に労を惜しまない態度が好感を呼び、すぐにも村の中に受け入れられた。
以降は普通の女として一生を完うしたのだが、彼女の死後に村を訪れた旅人が、話に尾鰭を付け、墓のあった場所に社まで建ててしまったところから、現在の伝承につながったという事だった。

 

「それで、あの紅い実は?何の儀式に使うのですか?」
一通りの話を聞き終わった後、僕は気になっていた事を聞いてみた。
しばしの沈黙の後、静香さんが口を開いた。
「人魚姫はその実を食べて人に変じたと言われています。人魚云々は作り話としても、その実を食べた人は全くの別人に変化します。この地方で鳥や獣が人に変じたというものの幾つかも、この実を食べて別人となった人の事が伝えられたのだと考えられています。」
「変身…するのですか?」
「なんなら、試してみますか?儀式では一夜限りの人魚姫との逢瀬に使われます。この実の効果は半日から一昼夜となっています。」
「僕なんかが使っても良いのですか?」
言葉ではそう言っても、僕は好奇心の塊となっていた。
「ええ。でも、ここでは何ですから、私の家にいらっしゃいませんか?」

 
静香さんの家はそう遠くはなかった。巫女装束のまま田舎路を歩いてきた。
自室に戻り普段着に着替えた静香さんは、ソファの前に大きな鏡を置くと僕を手招きした。
「ここに座ってくださいな。本当は裸になった方が変化が解り易くて良いのですが、恥ずかしさもあるでしょうから、シャツのボタンを外しズボンはベルトを緩めるだけで良いですよ。」
僕は彼女に言われるままにソファに腰掛けた。
「さあ、これをどうぞ♪」と、紅い実が乗った皿が差し出された。

僕は皿から紅い実を取ると口の中に入れた…

鏡の中で変化が起こってゆく。
ザワザワと肌が波打ち体毛が消えていった。指先が腕が脚が細くなってゆく。
全体的に身体が縮んだように見える。
しかし、皮膚は弛むことなくピンと張ったまま。更に瑞々しさを溢れさせていた。
もともと陽に焼けていない肌が、白さを増していった。

劇的な変化は顔にあった。
鏡に写っていたありふれた男の顔が、みるみる内に美しい「女」の顔になっていったのだ。

「これがボク?…」

その声も、鈴を鳴らしたような女の声になっていた。
「これが人魚姫の正体よ。何故か女性がこの実を食べても変身は起きないの。けれど、男性が食べると美女に変身してしまうの。」
僕はだぶだぶとなった服の上から胸に手を当てた。そこには、確かに女の胸が存在していた。
「だいたい一日以内で元に戻るけど、紅い実を食べ続ければ変身は継続するわ。何らかの理由で元の姿を放棄したのが人魚姫達の正体だったのね。」
僕はソファから立ち上がり服を脱いでみた。鏡にはまさしく「女」の肉体があった。

「元に戻るまでは、これを着ていた方が良いわよ。」
と先ほどまで彼女が着ていた巫女装束が手渡された。
「今夜はうちに泊まっていきなさいな。明日まではその姿のままでしょ?」
静香さんの提案には従うしかないのだろう。
「今は女同士なんだから、一緒にお風呂に入りましょうね♪」
夜になるとそう言って風呂に連れていかれた。他人に身体を洗われるのは小さな子供の時以来のことだった。
風呂から上がると、静香さんの下着とパジャマを借りて着た。
「清香ちゃんは何を着ても可愛いわね♪」
いつの間にか、僕の名前は「清香」になっていた。

畳に並べて布団を敷いた。明かりが消えると静香さんが僕の布団に潜り込んできた。
「こうして抱きあって寝るのも久しぶりね。」
と身体を擦り寄せてきた。
「し、静香さん?女の子の姿になっていても、僕は男なんですよ。そんな事されると理性で制御できなくなってしまいます。」
「大丈夫よ♪女同士なんだから。襲ってくれても構わないわよ。」
と耳元に甘い息を吹きかけてきた。
「逆に、あたしが襲っちゃおうかしら♪」
静香さんの手が僕のパジャマのボタンを外し、胸の先端を責め始めた…

 

 

「よう、起きたかい?」
まどろみの中で、僕は男の声を聞いていた。
「夕べは十分に楽しめただろ♪」
男の手がうなじに触れてきた。
「静香さん?」

そう、静香さんもまたあの実を食べていたのだった。
夜中に戯れている間に効果が切れ、男に戻ってしまったのだ。女の静香さんに責められて、女の肉体に火を焚かれていた僕は、流れのままに男の静香さんを受け入れてしまったのだった。

僕の手に静香さんの剥き出しのペニスが触れた。それがピクリと反応する。
「寝起きにイッパツいくかい?」と静香さんが笑いかけてきた。
「意地悪言わないでください。恥ずかしいです。」僕が慌てて手を引くと、静香さんは布団から起き上がった。
もちろん全裸である。その股間には僕のものより数段立派なペニスがぶら下がっていた。
夕べの僕は、嬉々としてそれを咥え、膣に受け入れていたのだ。
思い出すだけで恥ずかしくなると同時に、オンナの快感が甦り、股間が湿り気を帯びていった。

「そろそろ清香も起きた方が良いわよ♪」
いつの間にか女の静香さんに戻っていた。
朝食を済ませると、僕は昨日と同じ巫女装束、静香さんはトレーナにジーンズのラフな格好で再び神社に向かった。
神社に着くと静香さんはエプロンをして境内を掃き清め始めた。
何もしないでいるのも悪いと思い、僕も竹彗を手に境内を掃いていった。
「結構様になってるじゃない。しばらくココで巫女さんやっていかない?」と静香さんが囃したてる。
「そんな事したら、静香さんのお仕事が無くなっちゃうんじゃないですか?」
「そん時は街に出て、カラダを売ろうかしらね♪」
「やめてくださいよ。僕には大学がありますから。ここの巫女は静香さんしかいません!!」
このまま話を合わせていたら、静香さんは本当に実行しかねない雰囲気がした。
「神様も若い娘の方が喜ぶと思うんだけどな…」どこか未練がありそうに、静香さんはバケツを手に社の中に姿を消していった。

 

昼が過ぎ、しばらくして不意に腹が締め付けられた。
身体が一気に元に戻っていったのだ。袴を止めていた紐が元の大きさに戻った腹に食い込んできたのだ。
「静香さん!戻ったみたいです♪」と社に上がって行った。

「あらやだ!!」と僕を見た静香さんが大声を上げた。
「どうしたんですか?」と聞くと「ごめんなさい。あなたの洋服を家に忘れてきてしまったわ。」
その言葉に僕の頭はパニックで思考停止していた。
「このままじゃ帰れないでしょう?もう一晩うちに泊まろうよ。」と紅い実が差し出された。
「これを食べれば苦しくなくなるわよ。」と促される。
僕は何の疑いもなく紅い実を食べた。静香さんの言った通りすぐに苦しさはなくなった。
「今夜も、うんとサービスしてあげるね♪清香ちゃん。」
僕は女の子に戻っていた。静香さんが僕の頭を優しく撫でくれていた。

 

 
その神社には、美人姉妹の巫女さんがいた。
訪れる者の皆無な境内には、娘二人の明るい笑い声に満ちていた…

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