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2009年8月12日 (水)

翠(1)

 

「よろしく♪」
と手を伸ばしてきたのは姉さんの婚約者になった男だった。
俺は何も言わず、手だけ差し出した。彼は姉さんが喜びそうな白い歯を輝かせた笑顔を俺に向けた。

姉さんはメンクイである。顔が良ければ、性格も知性も二の次となってしまう。数々の男性遍歴の果てに、ようやく両親が結婚を認めたのが、この飯島博章であった。
この男の顔は何度か写真で見ていた。実際に会ってみると、何か危険な感じがした。どこがどう危険だと言えないでいるうちに、結納の儀式が進んでいった。
「ヒロアキ♪これが弟の裕也よ。」と姉さんが最期に俺を紹介した。形式的な握手の筈が、彼の掌に握られた途端、背筋を冷たいものが走っていった。

 
それからは、彼はちょくちょく家に顔を出してきた。もちろん姉さんのデートのお迎えだ。家には上がらず即に出ていってしまうので、俺は部屋に篭もって顔を会わせないないようにしていた。
しかし、その日はまったく違っていた。両親も姉さんも出払っており、俺一人が家に残っていたのだ。
「姉さんはいませんよ。」と言うと、「今日は裕也君に用があるんだ。」と家の中に上がり込んできた。
「どうしても、裕也君でなければ出来ない用事なんだ。」キラリと彼は姉さんを参らせた輝く歯を俺に向けた。
「もともとは翠からの頼みなんだ。今、彼女は手が離せない状態なんだ。だから、代わりに僕が君を迎えに来たんだ。良いね?」と俺の腕を掴んで玄関に向かった。
外に出ると博章さんの車が待っていた。助手席に座らされた。いつもはここに姉さんが座っているのだろう。
「シートベルトは良いかな?」と、いつも姉さんにそう言っているのだろう。俺が「大丈夫です。」と運転席を見る。姉さんはいつもこの向きで博章さんを見ているのだろうか?

 

車はかなりの距離を移動していった。やがて木々に覆われた山の中に入っていった。
途中、湖畔のドライブインで食事をした。
何故か、店員の案内を拒否して店の中を歩き回ると、最も目立つ場所に席を確保した。
料理の注文にも事細かに確認するので、即に店中の注目を浴びていた。食事の後も併設のショップで姉さんに贈るのだろう、アクセサリーを長い時間品定めして回った。

あからさまなアリバイ工作めいた事をした後は、これといった寄り道もせずに、更に山の中に入っていった。
別荘の点在する森の中を進む。車は更に森の奥へと進んでゆく。しばらく人家が途絶えた先にポツンと一軒の家が建っていた。
車は、その家の前に止まった。

 

博章さんに連れられ、家の中に入った。玄関の先には、広いリビングがあった。そこのソファの上には先客がいた。
「お、俺?!」
そこにいたのは、鏡に映したように「俺」にそっくりな男だった。
男はニヤリと嗤った。「良く出来ているだろう?」俺の姿をした何者かがそう言った。そいつは後頭部に手を掛けるとグイと皮膚を引き裂いた。マスクが外れると、中から現れたのは博章さんだった。
俺は俺の腕を掴んでいる男を振り返った。彼もまた博章さんだった。
「ひ、博章さんが二人?!」

「今はそう言う事になるな♪」俺の腕を掴んだ方の博章さんがそう言った。「しかし、彼はすぐまた別人になってしまう。だから、僕が本物の博章となるんだ。」

「裕也君。彼の正体が解るかな?」と俺の「皮」をソファに残してもう一人の博章さんが立ち上がった。「翠さんだよ♪」
隣にいる博章さんを見上げると、白い歯を輝かせて笑っていた。
「彼女はメンクイが高じて、自分自身がイケメンになる事を選択したんだ。そのために、いろいろと画策してきたようだ。僕との婚約もその一つだった。」と彼がもう一度後頭部に手をかけると、
「だめよ!!明日まではそのままと言う約束でしょ?」と姉さんだと言われた博章さんが割り込んできた。

「で、俺に何をさせようとしてるんだ?」
俺は二人の博章さんを交互に見ながら言った。
「君も薄々は気づいていると思うがね♪皮はこれだけではない。もう一枚用意されている。」と俺の「皮」を被っていた方の博章さんが、そのもう一枚の「皮」を取り出した。
「これは翠さんの皮だ。裕也君にはこの皮を着けて翠さんの替わりをやってもらいたい。」
「な、何で俺なんだ?博章さんがやっても良いんじゃない?」

「簡単な事よ。彼に翠の皮を被ってもっても、親戚の集まる結婚式ではボロが出てしまうわ。あんたなら知らない親戚はいないから大丈夫でしょ?」
「俺が姉さんの替わりに結婚式に出るのか?」
「素敵なウェディングドレスよ。あんたにも良く似合うわよ。」と白い歯を輝かせて俺に微笑み掛けてきた。

俺はウェディングドレスを着てバージンロードを歩いている自分の姿を想像してしまった。祭壇の前で俺を見つめていたのは博章さんだった。
「あんたもメンクイだから丁度良いでしょ?」「お、俺は男だ!!」
俺は頭に浮かんでいた妄想を首を振って振り払った。「恋愛対象は女の子だからな。」
「そうかしら?」と姉さんは博章さんの顔でクスリと笑った。「女の子になったら即に考えは変わるわよ。解らないなら、たっぷりと教えてあげるわ…あんたがオ・ン・ナ・ノ・コだって♪」

俺は男だ!!と抵抗したものの、あっと言う間に服を脱がされ、姉さんの「皮」が手渡された。
背中のスリットから脚を入れる。指の位置を合わせると、腰までがすっぽりと皮に包まれた。腕を入れると、肩まで皮に包まれた。最後に頭を被せる。
目、鼻、口の位置を合わせた。後頭部のあわせめが閉じられると、一瞬めまいに襲われた。
次の瞬間「皮」は俺の「皮膚」になっていた。「皮」を着ているという違和感が無くなっていた。

今の俺の胸には二つの膨らみがあった。完全に俺の「皮膚」となった「皮」は、乳首の先まで感覚を持っていた。「どうだい?本物のオンナの肉体は♪」博章さんが背後から俺を抱き締めた。
「あ、ああん♪」乳首を摘まれただけだが、俺は思わず喘いでしまった。
博章さんの手が俺のバストを揉みしだく。「オンナ」の快感が俺を襲い始めた。性的な快感に反応して硬くなる筈のペニスは、股間から失われていた。
そこには女の割れ目が穿たれていた。ペニスが先走りを滴らせる替わりに、割れ目の奥から愛液と思われるモノがにじみ出てきていた。

お、男なのに…
俺は博章さん手技だけで軽くイッてしまったようだ。

鏡の前に連れて来られた。
鏡には博章さんに責められる俺の姿が鏡に映し出されている。鏡に映っているのは姉さんと博章さんである。
しかし、淫陶なオンナの顔をした「姉さん」は「博章さん」な姿をした姉さんに責められ、喘いでいる俺自身だった。
 

ベッドに連れて来られた。そこには全裸の博章さんが待っていた。
「これから、たっぷりオンナの快感を教えてあげるわね♪」
ベッドに上がると博章さんの頭を胯ぐように座らされた。姉さんの手が俺を身動きできないように拘束する。博章さんの舌が俺の股間を舐めあげた。
ゾクゾクするような快感が背筋を昇ってくる。「我慢は体に毒よ。素直に声を出しちゃいなさい♪」
我慢するまでもなく、俺はすぐにも嬌声を上げ始めていた。俺は二人の博章さんに、思い切り「女」の快感を教え込まれていった。

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