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2009年7月19日 (日)

幸せの赤い靴 -6-

-6-

「女」としての生活ももうすぐ終わる。
あと二日だ。
自宅に戻り荷物を置くと、残りを外に出ないで済ませるよう、食料を買い溜めておく。
商店街を歩いているとショウウィンドウに可愛らしい服が飾られていた。欲しいなぁと思ったが、あと二日で男に戻ってしまうのだ。これ以上女の服を買っても着る機会はない。
誘惑を追いやって、スーパーで食料品を買い込んでゆく。いつもなら惣菜モノだけで済むのだが、何故かあれもこれもと目移りしてしまう。出来合いのものより、食材を買って自分で調理する方が安いし、バリエーションが得られる。
カゴの中にはいつもの「俺」が買うものとは全く違ったもので埋まっていた。

トントントンと包丁を鳴らして下ごしらえをしてゆく。パットに野菜が切り揃えて並べられた。
普段は義務的な感じで料理をしていたが、何故か今日は調理をする事自体が楽しくて仕方がない。
フライパンを揺らして、次々に料理が仕上がってゆく。できたものから食卓に並べてゆく。ご飯も炊けたので、箸と茶碗を並べて置いた。

…って、何で二人分の食器が並んでいるんだ?
との疑問は即に回答されることになった。
ガチャリ
と玄関のドアが開いた。「ただいま。」と男の声。俺はエプロンを外して玄関に向かっていた。
「お帰りなさい♪」と当然のように返事をしていた。
玄関から上がってきた男は…「俺」だった。

俺の目の前にもう一人の=男の「俺」がいた。
「何故?」と頭の中は疑問付で埋め尽くされながらも、俺の体は「俺」に抱きついていた。「俺」の腕に抱かれて唇を合わせる。
キスが終わると「晩ご飯出来てるわよ♪」と「俺」を食卓に誘っていた。

「美味しいよ。」と褒められて、俺は上機嫌だった。
「旅行は楽しかったかい?」「えぇ。でも、あなた独りにさせちゃってごめんなさいね♪」「良いんだよ。君が満足してくれればね。」
俺の意思とは別に、会話が進んでゆく。それは俺が思い描いていた家庭の情景であった。こんな風に自然な感じで会話できる女性が妻になってくれないかなぁ…などと思っていた。
ピピピッと音がした。
「お風呂が沸いたようね。お先にどうぞ♪」と夫を風呂場に送り出す。夫のパジャマとトランクスを用意し、俺は再びエプロンを着けて食器を洗い始めた。

風呂から上がった夫は、いつもの俺と同じように床に寝転がりTVの野球中継に見入っていた。
洗いモノを終えた俺は、風呂に入った。
化粧を落とし、洗い終わった髪をタオルで巻いた。ネグリジェを身に着け夫の下に向かう。
脚を崩して床に座ると、夫の頭が俺の太股に移動してきた。俺は野球中継が終わるまで、夫の顔とTVを交互に見続けることになる。

それは俺が理想としてきた夜の一時だった。そして、TVが終われば二人で寝室に向かう。俺の妻は人一倍感じ易く、誰よりも淫乱なのだ…

 

朝、目覚ましが鳴る前に俺は起きていた。
まだ寝ている夫を起こさないようにベッドを抜け出し、朝食の支度を始める。
普段はトースト一枚を齧るだけだが、俺の理想は白いご飯に海苔と卵焼だ。冷蔵庫から卵を取り出し、殻を割り、手早くかき混ぜる。調味料で味を整え、フライパンで焼上げてゆく。我ながら会心の出来だ。
味噌汁と漬物の準備ができた所で夫を起こしにゆく。「あなた♪朝ですよ。起きてくださいな。」俺がこうやって起こされたいなと思っていた通りに夫を起こしていた。
布団の中から二本の腕が伸びると、前屈みになっていた俺を捕らえた。「きゃん♪」と小さく叫んで、俺は布団の中に倒れた。
そのまま数度、キスが繰り返すされた。「お早う。」と夫。「夕べのキミは素敵だったよ。」その一言で俺ね顔は真っ赤に染まった。
夫婦の営みとはいえ、毎晩、あれ程までに乱れていては体が保たないと思われるくらい、俺は激しいSEXに酔い痴れていたのだ。
俺は昨夜の記憶から強引に抜け出すように、上体を起こし、首を左右に振った。
「思い出させないでよね♪もう朝なのよ。早く支度しないと遅れちゃうでしょ?」とベッドから降り、夫のワイシャツとネクタイを用意した。

 
「いってらっしゃい♪」とキスをして夫を送り出すと、俺には主婦としての一日が待っていた。
洗濯機に俺の下着と夫の下着を放り込む。洗剤と柔軟剤を入れ、スイッチを入れた。
ベランダに布団を干し、部屋に掃除機を掛ける。洗濯機が完了を告げたので、取り出してハンガーに吊るしてゆく。元は俺のものであった男物の下着と、今の自分が身に着けている女物の下着が並んで干されてゆく。
男物の衣類は、もう俺のものではない。それは、俺の愛する「夫」のものなのだ。

俺は「夫」を愛していると再認識していた。再び昨夜の光景が脳裏に展開される。ソレを意識した途端、ジュンと股間が潤む。
俺はエプロンを外し、寝室に向かっていた。

そろそろ昼ご飯の支度を始める時間だった。しかし、それは俺一人の分だけである。一食くらい抜いても問題ない。それよりも、貴重な午後のひと時を有効に使いたかった。
スカートを外し、ベッドに上る。濡れかけたショーツの上に指を這わせた。
昨夕はこの中に逞しい夫の分身を迎え入れていたのだ。俺の膣を満たしたモノを思い出す。それだけで愛液の量が倍増した。

俺はショーツを降ろした。サイドテーブルの引き出しから、バイブレータを取り出していた。
脚を開き、股間に圧し当てる。バイブはズブズブと俺の中に沈み込んでいった。
昨夜の快感を反芻する。俺の膣を埋め尽くしたペニスが与えてくれた快感を思い出す。

俺はバイブのスイッチを入れた…

 

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