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2009年7月19日 (日)

幸せの赤い靴 -1-

幸せの赤い靴

-1-
 
仕事から帰ってくると、何とか企画という聞き覚えのない所から包みが届いていた。
「モニターに当選しました。一週間使用していただき、ご感想を同梱の封書で返送ください。」とのメモが入っていた。

包みの中には、何故か女物の真っ赤な靴が入っていた。良く見ると女物ではあるが、靴のサイズは俺のものと同じだった。
モノは試し…と履いてみると、あつらえたように俺の足をぴったりと包み込んだ。立ち上がってみる。女物だけあって、かかとが高い。ふらつく足でフローリングの床の上を歩いてみた。
不思議と歩き易く感じた。ファッションモデルのようにクルリと回ってポーズを決めた。空気を孕んで舞い上がったスカートの裾が落ちてきた。

「?」

何で俺はスカートなんか穿いているんだ?
慌てて洗面台の鏡を覗き込んだ。

それは「俺」の顔には違いなかったが、何故か女のように化粧されていた。着ている服も艶やかな女物である。
「どうなっているんだ?」
視線を下ろすと、そこには胸の膨らみがあった。それが服のデザインだけで盛り上がっている訳ではないと、俺の皮膚感覚が訴えている。
手を胸に充てた。
俺の胸の膨らみは、潰れるどころか、弾力をもって俺の掌を押し返してきた。そして、俺の胸からは押してきた掌の感触が伝わってきた。

まさか?とスカートをたくし上げ、パンツの中に手を入れた。

俺の指先には、あるべきモノは触れることは適わず、代わりにソコに穿たれた溝の存在が知らされてきた。
とにかく、この「目」で確認しなくては…
と、着ている服を脱がし始めた。ブラウスを脱ぐとブラジャーに包まれたバストがあらわとなった。
更にブラを外すと、形の良い(俺が本物の女であれば…)誰もが羨む乳房が現れる。
その先端には程良い色と大きさの乳首があった。

ふと床の上を見た。
そこには脱いだばかりのブラジャーとブラウスがある筈だった。が、そこにはさっきまで俺が着ていたTシャツとワークシャツがあった。もしや…とスカートを脱いだ。
床に落とされたスカートはしばらくするとジーンズのズボンに戻っていた。

俺はパンツ一枚…と赤い靴を履いたまま寝室に向かった。

パジャマに腕を通してみた。パジャマはあっと言う間にネグリジェに変わっていた。
ワイシャツに背広を着てみた。それは女物のスーツに変わった。
押し入れの奥から高校時代の学生服を出してみた。それはセーラー服に変わっていた。

俺は床の上に座り込んでいた。セーラー服のスカートの裾がめくれ、瑞々しい太股を覗かせていた。
こんな娘が目の前にいたら、俺は即、押し倒していただろう。だが、この娘は俺自身なのだ。

俺は靴を履いたままだった事を思い出した。足の先を見ると、確かに俺は靴を履いていた。が、それは包みに入っていた赤い靴とは色合いも形も違っていた。
靴の色は赤ではあったが、最初のような真っ赤ではなく、茶色に近い落ち着いた赤であった。
形もまた変わり、かかとが低く女子高生らしいデザインになっていた。

即にこの靴が普通のモノでないと解る。この靴に全ての原因があると理解した。
次に取る行動は「この靴を脱ぐ」事である。が、ピッタリと俺の足に填った靴はどうやっても脱げなかった。
靴は着ている服に合わせて形を変えているのかもしれないと、セーラー服を脱いでパジャマを着てみた。パジャマは先程と同じにネグリジェに変わった。
靴はどうなったか?と足元を見ると、薄っペラな室内履きに変わっていた。色は淡いピンク色に近い赤だった。
やはり、これも脱げない。

しばらく思案して、俺は海パンを取り出した。
パンツを脱ぎ、見た目は「女」の股間に海パンを穿かせた。

すると、自然法則を無視するように、海パンの上端がするすると昇り、腹と胸を覆った。背面も同様に覆われ、肩のところで結合された。
伸縮性の高い生地が「俺」の体型を際立たせる。海パンは女物のワンピースの水着に変わっていた。
足元を確認する。
思った通り、真っ赤なビーチサンダルになっていた。かかとを上げるとサンダルのゴム底から離れるのが解った。
が、それでもビーチサンダルは俺の足から離れようとはしなかった。鼻緒に指を掛けて隙間を作ったが指の付け根の所がしっかりと密着していた。

とにかく、靴が脱げない事は解った。モニタ期間は一週間となっていたので、一週間後には何らかの変化があるだろうと考えた。
生活する上で「靴」を穿いたままというのには抵抗があったが、パジャマを着れば室内穿きになるし、ビーチサンダルなら風呂で濡らしても問題ないだろう。
問題は、この「女」の肉体だ。顔は良く見れば「俺」と解るが、この体型では端から「俺」だとは見てもらえないだろう。男装でもして体型を隠すことができれば良いが、何を着ても女物に変わってしまうのだ。
つまり、この一週間は「男」の俺は存在を失っていることになる。幸いにも、明日からは大型連休なので最後の2日に年休を取れば、何とかごまかせる。
しかし、食料は買い置きが少ない。到底一週間をこなせる量などない。何かしら買い足す必要がある。その為には外に出る必要があった。
「俺」ではない、それも「女」が、俺の部屋に出入りしている所を見られたらどう言い訳すれば良いだろうか?最悪の場合、「俺」に女装癖があると勘違いされかねない。
とりあえず「女」の俺を従姉妹と仮定しよう。「俺」が長期休暇を利用して旅行に出ているとする。その留守に家の掃除とかに手伝いに来た…と言っても、毎日この部屋にいる理由がない。
逆に、俺が本当に旅行に出てしまったらどうだろうか?この近所をうろついていれば知り合いに合う確率は無視できない。旅先であればそんな事もないだろう。
旅行鞄は出てから買えば良い。必要最小限のものだけ持って、旅に出るのだ!!

 

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