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2009年7月19日 (日)

幸せの赤い靴 -7-

-7-

気が付くと陽は西に大きく傾いていた。
俺は慌てて濡れたショーツを替えると、ベランダに干していたものを回収した。夕食の支度の前には食材の買い出しがある。
服の乱れだけではなく、化粧の乱れも直さなければいけない。と、自分が女であることを疎ましく思いながら、鏡の中の顔に見入っていた。

程なくして食材の詰まったレジ袋を腕に提げて戻ってきた。
エプロンを着け食材と格闘しているうちに、夫の帰宅時間になっていた。チャイムが鳴る。「開いてるから、入って来て♪」
カチャリとドアが開いた。「それでは失礼します。」
「だ、誰?!」
それは女の声だった。料理の途中だが、火を止め、振り返った。
「あ、貴女は…」

彼女は箱根の温泉で出会った女の娘だった。しかし、あの時は2~3の言葉を交わしただけで、住所など話した筈もなかった。

「今夜が最後よ。」
と彼女が言う。
「何の事?」と俺
「モニター期間は一週間と書いてあったでしょ?」「あ、貴女があたしを?」「そう、あなたを女にしてあげたのはわたし。二重の意味でね♪」
「二重の意味?」俺が理解していたのは、あの赤い靴を送りつけてきたのが彼女であったという事。つまり、俺を「女」にした張本人であったと言うこと。「二重の意味」と言うからには、もう一つの「何か」がある筈だ。
「解らないわよね。でも、これならどうかしら?」
と、俺の目の前で彼女の姿が大きく歪んだ。

次の瞬間、俺の前に居たのは別の人になっていた…彼は、俺が箱根で知り合った男だった。
俺は彼とSEXをして「女」の快感を教えられたのだ。そう、もう一つの意味で「女」にされたのが彼であった。
「どうでしたか?あなたの理想の家庭は?ご主人とのSEXは私より良かったですか?」彼がにっこりと微笑み掛けてくる。
俺の頭の中は混乱していた。
彼は俺を女にした彼女と同一人物だった。彼は俺が女にされた事を知った上で俺に近づいてきた。
「何故?」

「貴女が理想の家庭を経験するためには必要な事だったのですよ。貴女が女である事に慣れ、男を受け入れる事に嫌悪感がないように導くのが私の役目だったのです。」再び彼の姿が歪む。
「で、今夜が最後の夜だから、君の一番相性の良い相手とSEXさせてあげようと思って彼らを呼び寄せた。っていう訳だ。」
そこに現れたのは俺の夫…男の時の「俺」…の姿だった。
「最後の一夜だ。俺に抱かれるもよし、初めての男に抱かれるもよし。目先を変えて女同士ってのもアリかもね♪」彼女は元の女の娘の姿に戻っていた。

「ふう~」と俺は溜め息をついた。
「兎に角、今は晩ご飯の支度をしてるから、TVでも新聞でも見てて待っててくれないかしら?貴女があたしの夫でないとしても、料理は二人分作っちゃっているから、ちゃんと食べてちょうだいね!!」
俺はそれだけ言うと料理を再開した。

無言のまま食事が終わった。俺は洗いものを終えると、ゆっくりと風呂に浸かった。
女の体とも今夜で最後となる。女の肉体をひとつひとつ確認するように磨きあげていった。
俺は俺の最も好みの「女」なのだ。もう二度と出会う事はないだろう。この一週間の出来事が次々と思い浮かんできた。
俺の手は自然と自らの股間を慰めていた。

彼女は寝室で俺を待っていた。
「ねえ、決まった?」と彼女。俺の答えは決まっていた。「別に夫や箱根の彼でなくても良いでしょ?貴女は何にでも変身できるのでしょ?」「え?ええ、まあ。」俺の質問は彼女の意表を突いたようだ。
「なら、あたしはあたし自身としてみたい。あたしが理想としていた女を一度で良いから抱いてみたいの。」
「貴女の相手が貴女自身という事は了解したわ。」俺の目の前で彼女の姿が歪み、俺の理想の「女」…今の俺自身と同じ姿が現れた。
「でも、ひとつだけ表現が違ったわね。」彼女は俺に近づくと、俺をベッドに押し倒した。「あくまでも、抱かれるのは貴女の方なのよ。貴女は貴女自身に抱かれて思う存分にイって頂戴ね♪」
 

…俺は…

 
俺は俺の「理想の女」の手でイかされてしまった。
何度か、彼女を組伏せようとしたが、その度に俺の感じる所を責められて、逆に俺の方が喘ぐことになってしまう。
肉体は女同士であるが、俺の意識は男のままであった。しかし、その立場は彼女に主導権を握られ、俺は受け身の立場でイかされ続けた。
男と違い、出すものが尽きればそれでおしまいとはならない。気を失っていても、新たな刺激に目覚めさせられ、再び快感の坂道を昇って行くのだった。

 

 

 

ベッドの上で目覚めた時、部屋の中は俺一人だけだった。
机の上に置き手紙が残されていた。
「モニターのご協力、ありがとう御座いました。貴重なデータが収集できました事、感謝致します。お礼といたしまして、この度の「幸せの赤い靴」は回収致しません。末永くご愛用くださいますよう、よろしくお願いいたします。」

俺はもう、何も考えない事にした。
一人分の朝食を作り、一人で食べ、スーツに着替え、会社に向かった。
タイムカードを打って更衣室に向かう。俺はロッカーに吊るされた制服に着替えると、自分の席に座る。
いつものように仕事を始めようとした時、課長から声を掛けられた。「今晩、プライベートで飲みに行かないか?」

「幸せの赤い靴」の効果が早速現れたようだ。独身の課長は女性社員達の憧れの的だった。俺も彼となら結婚したいな♪と思っていたのだ。

その夜、俺は彼に抱かれていた…

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