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2009年5月31日 (日)

未来惑星(2)

 
ハルマゲドン(最終戦争)の終焉は特殊なウィルスによりもたらされた。
全ての雌を死に至らしめるソレは、雌雄を分かつ全ての生物に感染していった。海の生物も、陸の生物も、空の生物も。全て等しく、そのかたわれを失った。
当然、雌がいなければ子孫が残せない。その種が絶滅すれば、その種を糧とする生物も余命をまっとうできない。
生態系が一気に瓦崩していった。

 

人類は英知を集結した。
先ずは食料問題を解決した。動植物に頼らない栄養源を確保した。工場からは休みなく「食料」が供給されるようになった。
次に手を付けたのは「種の保存」であった。

彼等は男性の遺伝子を持ったまま、子宮を保有し、胎児を宿すことのできる「薬」を開発した。しかし、誰を「女」にするかは討議が重ねられた。
彼等の命題は「優良種」…すなわち、自分達の「子孫」を残す事であった。誰もが「女」になることを拒絶した。
一時的に「女」になるのであれば、好奇心の強い奴は何人か出てくるかも知れない。が、この「女」は子孫を残す義務があるのだ。
普通の女性でも、妊娠・出産は命懸けのものである。本来は「男」である肉体を強制的に「女」にして妊娠させるのだ。
机上では何も問題はないと出ているが、やはり不測の事態というものを否定しきれなかった。

 

「俺がやる。」
最期に手を挙げたのは、最年少の新実剛だった。彼は隣に立っていた同僚のコウネル・ワトソンに振り向いた。「コウ。俺のパートナーになってくれないか?」
赤髪の美丈夫は新実の顔をマジマジと見つめた。「良いのか?」ワトソンはやっとの事でそれだけを言った。

 

新実はその名をミニと変え、ワトソンの精子を受け入れた。
ミニの子宮に胎児が確認された時には盛大なパーティが開かれた。冷凍保存されていた天然の食材が僅かばかりではあるが振る舞われた。
やがて臨月を迎えた。
ワトソンは自らの手で、彼とミニの子を取り上げることになった。

ここ数年来の久々の赤ん坊であった。

しかしミニ一人では到底、種を維持する事はできない。
結局の所、若い罪人を洗脳するという事に落ち着いた。

「女」達も増えてゆき、その子供達も逞しく成長していった。
ミニは病床につく夫の手を握っていた。
「もう、お前しか残っていないな。」年老いた手がミニの艶やかな黒髪を撫でた。「とうとう、お前達が年を取らなくなった事が解明できなかったな。そう、息子達を教育しても俺達と同じ能力を持たせられなかった。」
彼は大きくため息を点いた。
「薬の処方と新たな社会の仕組みだけが残されてしまったな。」
彼はゆっくりと瞼を開けた。
「俺の人生は、君と君の子供達への謝罪で綴られているようだ…
 すまなかった…」

彼の手から力が抜け落ちた。
「コウッ!!」ミニは何度も夫の名を呼び続けただろう。
だが、彼の目が再び開かれることはなかった。

 

 

 
「何してたの?」
ダイが声を掛けてきた。ミニは漆黒のドレスを着て「研究所」から出てきたのだ。
「今日は夫の命日だからね。」と微かに微笑む。
「あなた、子供産んだ事があるんだ。あたしとは付き合い長いけど、その前?」
「そうね♪」と曖昧に答える。
「彼等が来たようね。」とミニが視線を挙げた先で「女」達の悲鳴が上がっていた。

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