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2009年5月31日 (日)

交差点(1/7)

僕は交差点で信号待ちをしていた。
ふと見ると、綺麗な女の娘が道路脇の公園から出てくるところだった。その娘は真っ直ぐ前を見ながら、広めの歩道を横切ってゆく。
このまま進めば、車道に出てしまう。公園の関係車両のためにガードレールはなかった。
彼女には行き交うクルマが見えていないのだろうか?気が付くと、僕は彼女に向かって走り出していた。

「あぶない!!」
僕は彼女と車道の間に割り込んだ。
彼女は立ち止まり、僕を見上げた。「どうしたの?」と無邪気に問いかけられた。
「君は自殺する気なのか?このまま進めば、クルマに轢かれてしまうだろう?」
「大丈夫。あたしは生きてないから、死ぬことはないわ。」と答える彼女に、係わらなければよかったかな?との内なる声が囁いていた。
「とにかく、この道は横断禁止なんだ。渡るなら、あっちの信号のある横断歩道を使わなくちゃね。」と、先ほどまで僕のいた交差点を示した。
「そうなの?」と言うなり彼女は90度身体を回転させると、交差点に向かって歩き始めた。

「まだ赤だよ。」
いきなり渡ろうとする彼女の前に腕を出して止めた。一度係わってしまった以上、この先も見過ごす訳にもいくまい。「ねえ、どこまで行くつもりなの?」と、取り敢えず聞いてみた。
「○○大学」と答えが返ってきた。それは偶然なのか、僕の目的地と一致していた。「僕もそこに行く所なんだ。一緒に行こうか?」そう言うと、彼女が僕を見た。
「一緒の方が効率が良いのですね。あなたに依存がなければ、そのようにします。」何とも難しげな表現であったが、こちらの意は通じたようだったので「僕の方は問題ないよ。」と答えた。
「それでは、融合します。」と、彼女の目が輝いた…

「それではナビゲートを開始してください。」と彼女の声がした。
しかし、それは僕の耳に届いたものではなく、直接頭の中に伝わってきていた。どういう事かと辺りを見回したが、彼女の姿はどこにもなかった。
「あたしはここにいます。ナビゲートを!!」と再び彼女の声。
と、前の信号が青に変わった。
「渡って良いのですね?」と彼女。と同時に僕の足が勝手に動きだしていた。

道を渡った先には店のショウウィンドウがあった。ガラスに辛うじてではあるが交差点の様子が映っている。僕はその中に彼女の姿を認めた。
ガラスに近寄る。彼女の姿が大きくなる。…そして、そこには「僕」の姿は映っていなかった。
視線を下ろす。
僕が着ていた服は先程まで彼女が着ていたものと同じだった。もちろん僕には女装の趣味はない。第一、いつの間に着替えられるというのだろうか?
結論…僕は「彼女」になっていた…

「ナビゲートを続けて欲しい。」と彼女の声がした。とにかく、大学まで行くのが先決のようだった。大学まで行けば何か解るのだろうか?
「教授が説明してくれるでしょう。」と彼女が答えてくれた。

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