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2009年5月31日 (日)

交差点(4/7)

朝が訪れていた。
あたしは起き上がると身支度を整えていった。ピンクのブラにお揃いのショーツ。フリルの沢山付いたブラウスに、下はレザーのミニスカート。軽くお化粧して、今日の講義のテキストをカバンに入れ、サンダルを履くと大学に向かった。

交差点で信号待ちをしていると、何かがおかしいと警告する気配があった。そう言えば、この交差点で何かがあった筈…
信号が変わり、歩き始めたけど、あたしの頭の中は何かを思いだそうと必死になっていた。
渡り切ったところに、お店のショウウィンドウがある。そのガラスは交差点の様子を映している。その中には当然のように、あたしの姿もあった。
何かが気に掛かる。あたしはガラスに近寄った。ガラスに映るあたしの姿が大きくなる。…これは本当に「あたし」の姿なの?

それは「僕」の姿じゃない!と微かに声がした。

ガラスに映る「あたし」はピンクのブラウスを着て、レザーのミニスカートを穿いていた。
あたしの姿にどこかおかしな所はない?「大丈夫よ。あなたはどこから見ても可愛い女の娘よ。」内なる声が囁く。
ボクが「女の娘」?「それが最大の「誤り」だよ。」と別の声がする。どこから見ても女の娘にしか見えない。男だったと言われても、その痕跡はどこにもない…

そう、「僕」は女の娘なのだ…

「泣いているの?」彼女の声が聞こえてきた。僕の頬に雫の跡が残っていた。
僕は自分が女であることを受け入れるしかなかった。この交差点で彼女に出会った時点で、それは運命付けられていた。「男」の僕は失われ、今ここにいるのは「女」の僕なのだ。

 
ここ数日の記憶が蘇る。ショックで意識を失っていた「僕」は、いつの間にか春日純子という女の娘として受け入れられていた。
「何も問題はなかったでしょう?」彼女の言葉を否定することはできなかった。
僕はもう一度、ガラスに映った女の娘=ボクを見た。
そう、これが今のボクなのよね。
そう自分に言い聞かせて、ボクは大学に向かって歩き始めた。

 

「おはよう♪」
声を掛けてきたのは親友の武藤大樹だった。「あ、おはようさん。」と返すと大樹の顔が「おや?」と歪む。
「純也か?元に戻ったのか?」
大樹には彼女が全てを話していた。ボクの「記憶」には、他の学友からの好奇の接触から守ってくれた大樹の姿があった。
「ああ、なんとか自分を取り戻すことができたみたい。」と肩を並べて校舎に入った。
教室に入ると学友達の視線が集まった。ボクはスッと大樹の後ろに廻っていた。
「よっ!!」と大樹が彼等に声を掛けた。ボクは大樹の後ろに隠れたままだった。大樹の背中が広く、逞しく見えた。
ボク等は、彼等から離れた席に座った。
「オッス♪」と女性の声がした。このクラスでは紅一点の宍戸加代子だった。これまで、ほとんど会話もした事もなかったのだが「女同士」となったことで、何かと世話を焼いてくれる。
「お、おはよう…」と返事だけはした。
「何か、昨日と雰囲気違うじゃん?」との宍戸さんに「ああ、純也の意識が戻ったんだ。」と大樹が応じた。
「へぇ、今は春日君なんだ。でも、春日君てこんなにはオドオドしていなかったんじゃない?」そう言われて、何故かボクは大樹の腕にしがみついていた。
「まぁ、自分が女だと認識できたと言う事じゃないか?何事にも慎重になっている。」「まあ、春日君でも純子ちゃんでも関係ないわ。女の子同士、仲良くやりましょ♪」とボクの隣に座り込んだ。

講義に入ってしまえば男も女もない。ボクは一学生として講義に集中した。

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