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2009年5月31日 (日)

交差点(5/7)

その日は最後の講義まで三人一緒だった。宍戸さんともうちとけ、一緒にトイレに行く事もあった。
「純ちゃんは武藤君の事どう思ってるの?」「どうって?」「もちろん恋愛感情はあるのかって事♪」
「大樹とは親友だよ。姿はこんなになったけど、ボクと大樹は男同士の友情しかないよ。」「そう?」と宍戸さんの目が悪戯っぽく輝いた。
「なら、武藤君の彼女に立候補しても良いのね?」

「ダメ!!」
とボクは叫んでいた。
 
 
ボクは二人と分かれて、考古学の嶋田教授の所に来ていた。
毎日の日課となっているのだ。服を脱ぎ、椅子に座り電極が貼り付けられる。
「おや、春日君の意識が目覚めたんだね。」悟られないようにしていたが、機械は騙せないようだ。
「判りました?」「奇石との結合に変化が見られる。情報がスムーズに取り出せられるようだ。」と教授はモニタに没頭し、いつもより長い時間、拘束されていた。
「また明日も頼むよ。」と言われ、解放されたのは、深夜に近い時間になっていた。

校内には誰もいない。閉ざされた正門の脇の通用口から外に出た。
もちろん、街を歩く人もいない。いつもはひっきりなしに大通りを行き交うクルマもまばらになっている。交差点の信号機がボタンを押さないと変わらないようになっていた。
道路脇の公園の中も所々に闇が生まれ、女の子が一人で足を踏み入れるには危険な感じがした。
ボクは遠回りでも、明るめの道を選んで帰ることにした。

 
部屋に戻ると、すっかり「女の子の部屋」になった自分の部屋を眺め回した。
記憶では確かにボク自身が買い揃えたものばかりである。玄関に並んだ靴も、クローゼットの服も…箪笥の中の下着も…全てボクが買ってきたものばかりだ。
どこか居心地の悪い気もするが、今更元の男の子の部屋に戻しても違和感がある。ボクはフローリングの床に腰を降ろした。無意識のうちに胡座ではなく、女の子座りをしていた。
クッションを両腕で抱えて、今日の事を思い返してみる。
「純ちゃんは武藤君の事どう思ってるの?」宍戸さんの声が聞こえる。
「なら、武藤君の彼女に立候補しても良いのね?」
なんでボクは「ダメ」なんて言ってしまったのだろう?本当の所、ボクは大樹の事をどう思っているのだろう?
「好き?」
ドクリと胸がな鳴った。
「それはもう、恋愛感情以外の何物でもないな♪」彼女の声がした。
でも、ボクは男だし…
「今のあなたは女よ。」
 …

「大樹…」

ボクはそう呟いていた。

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