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2008年12月14日 (日)

先輩の…

 

先輩がブレゼントしてくれたのは、無地のトレーナーだった。
幾分か大きく丈も結構長めだったが「次の試合にはコレを着てきてくれると嬉しい」
と言われては、着て行かない訳にもいかない。

ユニフォームの上にジャージのズボンと貰ったトレーナーを着て試合場に向かった。
途中で制服姿の女の子達を見かけた。クラスの娘だ。「応援に来たわよ。」と僕を取り囲んだ。
「応援するのは来栖先輩だけだけどね。」先輩がモテるのは良く判っている。「あなたもチャンと応援するのよ。」
ユニフォームは着ていても僕は万年補欠で、チームメイトを応援する事しかできないことは十分承知している。が、彼女等が僕に応援しろと言っているのは来栖先輩個人を指しているのだ。
「そのワンピース、来栖先輩の見立てでしょ?」「可愛いんだから、試合中はジャージを脱いだ方が良いわよ。」
「ち、ちょっと待てよ。確かにコレは先輩に貰ったものだけど、単なるトレーナーだよ。ワ・ワンピースなんかじゃないって!!」とは反論したものの、どこかにトレーナーにしては…と不自然さを感じてはいた。
「何たってあなたは来栖先輩の公認「彼女」なんだから、もっとオシャレしてあげなくちゃ。」「そうそう、お化粧とまでは言わないけど、リップくらいは塗ってあげたら?」
「ぼ、僕は男子です。「彼女」なんてコトはあり得ません!!!!」と、僕は彼女等を置き去りにするように、一気に歩くスピードを上げたのだった。

試合場では先輩が軽いウォーミングアップを始めていた。
僕を認めると手を振ってくれた。ワンセットのアップを終えて僕の所までやってきた。
「それ、着てきてくれたんだ。ありがとう。」と僕の腕を引いて客席に向かう。「今日はココで応援しててくれないかな?」とベンチに近い最前列の席を指した。
「ここからだと先輩方の練習の手伝いに行けませんよ?」と言うと、「そっちは他の部員に任せておけば良い。話はつけてある。」と僕の肩に手を置き、座るように言った。
「それから、できればジャージのズボンは脱いで欲しいな。下にユニフォームを着ているから問題ないだろう?」と僕がジャージを脱ぐのを待っていた。「じゃあ、応援頼むね♪」と僕の荷物とジャージを持って行ってしまった。
まばらだった客席も試合開始時間が近づくと結構埋まってくる。僕の周りは先輩目当ての女の子達で溢れかえっていた。私服もいれば制服の娘もいる。制服はうちの学校のものばかりではなかった。
その最前列に僕はいるのだ。ベンチから先輩が出てくると、女の子達の声が津波のように押し寄せてくる。
「センパ~イ、頑張ってくださ~い!!」負けずに声を張り上げると、先輩が僕に向かって手を振ってくれた。
「「キャー!!」」と、自分に手を振ってくれたと勘違いした女の子達が感激の悲鳴を上げていた。

 
ホイッスルが鳴り試合が始まると、もう周りの娘達の事は気にならなくなっていた。
一生懸命に先輩を応援する。
先輩が点を入れる。
「キャー!!」感激のあまり叫んでいた。

 

あっと言う間に試合は終わっていた。うちの学校の圧倒的な勝利だった。その立役者は勿論、先輩だった。
試合後のミーティングのため、先輩がベンチの奥に消えると、応援席の女の子達は一斉に移動を開始した。試合場の外で先輩を待ち受けるのだ。
しかし、その流れに逆らって僕の方に向かって来る一団があった。クラスの女の子達だった。「ちょっと付き合って頂戴。」と僕の腕を引いて、立ち上がらせる。
連れて来られたのは女子トイレだった。
「くやしいけど、来栖先輩が頑張れたのも、貴女の応援のおかげなのよね。」「来栖先輩の為に、あたし達で出来る事をしたいの。」
「で…でも、何で女子トイレなの?」
「ここなら、貴女も変に騒げないでしょ?」「しばらくは大人しくあたし達の言う事を聞いてね。」
先輩の為…という言葉に、僕は彼女等の言う通りに眼を閉じた…

 
「さあ、出来たわ。」案の定、鏡には化粧をされた僕の顔が写っていた。「じゃあ頑張ってね♪」とトイレの外に追い出された。

「よ、よう。」と、そこにいたのは先輩だった。「勝ったら何かプレゼントがあると聞いてたが、この事だったのか。」
化粧をした顔を見られたのが恥ずかしくて下を向いてしまった。「お化粧して、一段と可愛くなったね。」と言われると更に顔が紅くなる。
「皆の行為を無駄にしちゃいけないな。さっさと裏口から出てしまおう。」と手を引かれる。「こ、こんな格好で外にはでられません!!」と抗議したが
「大丈夫。君は十分可愛い女の子だよ♪」と先輩の笑顔にドキリと胸がトキメいてしまった。

裏口には先輩目当ての女の子達は一人もいなかった。彼女等に今の状況を見られたら、僕が先輩の「彼女」だと誤解されかねない。

「なぁ、腕組んでくれないか?」と先輩がつないでいた手を放した。「良いだろう?今日一日は俺の「彼女」なんだから。」
「な、何を言ってるんですか?僕は男ですよ!」「誰が男だって?ほら、そこの店のガラスに写った姿を見てごらん♪」確かに僕は女の子にしか見えなかった。
「だから、ほら、腕!」と僕に腕を潜らせるように差し出した。
僕にはもう断るという選択肢はなかった。先輩と腕を組んだ僕は、本当に先輩の「彼女」にしか見えなかった。

「じゃあ、デートを続けようか?」と先輩が僕の顔を覗き込むように近づく…
チュッ!!
ほっぺたにキスされた。

「さぁ、行こう♪」

あたしは「はい」と答えて先輩の腕に頬を寄せた。

 

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コメント

TS版源氏物語の「若紫」でしたっけ?
自分好みの彼女を作る方法なんてね。

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