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2008年10月 4日 (土)

密航者

 

宇宙は暗く
…そして、広い。

俺はキャノピの先に広がる空間を、ただ無気力に眺めていた。
宇宙艇はエンジンを切り、自由落下を続けていた。スピード自慢の愛艇も、燃料がなければどうにもならない。崩壊する恒星系からフルパワーで逃げ切った代償と考えれば、安いものだと納得せざるをえない。
残りの予備燃料の使い道に悩む前に、俺はただ、ぼーっと宇宙を見ることにしたのだった。

 
カサコソと何かが動く気配がした。
この艇は多少ではあるが、人や物を運ぶための空間を擁している。が、基本的に俺が独りで乗り廻すことにしているので、俺の許可なく何者かが艇に入り込むことはできない。
ネズミの一匹たりとも…

俺は艇内モニタを起動させた。艇の隅々までカメラが写し出す。
キャビン異常なし、バス・トイレ異常なし、機関室異常なし、エアロック異常なし…
次々と異常なしの報告が上がる…コクピット…
密航者発見!!

俺が振り向くと、ドアの影に蹲っていた少年がモソモソと立ち上がった。「いつからソコにいた?」俺が声を掛けると、少年の姿は掻き消すように消えてしまった。
テレポート…超能力者だったのか。

宇宙は広い。いくつかの惑星では、独自の進化を遂げた人類が生息している。その中には超能力…テレパシーやテレポート能力…を獲得した種族もあった。
超能力者であれば、この宇宙艇への密航も不可能ではない。逆に何故、少年は見つかる危険を侵してまでコクピットに現れたのだろうか?
いや、答えは簡単である。
俺は燃料の節約のため、エンジンを止めた際にコクピットの主要機器以外の機器を停止していた。もちろん、各部屋の空調も停止していた。空気が無くなる訳ではないが、その中で人が呼吸をしていれば次第に濁ってくるのは避けられない。
心優しい俺は空調を回復させてやると、ナビに指示した条件の変更に着手した。

俺がナビに指示していたのは、現在位置の特定と最寄りの燃料補給可能なステーションへのルートである。もちろん最低限の燃料消費が大前提にある。
現在位置の特定は、ここが辺境宙域のため公的位置信号(ビーコン)が届かない。従って、昔ながらの恒星を特定しての測量方式で求めるしかなかった。
時間を掛けて位置を割出した後にルートの検索がある。これも辺境のため宙航図には抜けが多い。これもまた測量で補完するのだが、前提条件の乗員数を2に変更し、燃料消費のリスクを負っても最短で到着できるルートを選択するように指示を出した。

一通りの入力を終えると、俺はシートから立ち上がりキャビンに向かった。ロッカーの奥から普段は使わない機材を取り出し、テーブルに並べた。
ひと仕事を終えると、艇内スピーカで呼びかけた。
「メシを食わしてやるから出て来いよ。」

 

少年はラキと言った。食事の前に風呂に放り込みシャワーを浴びさせた。服は洗濯に廻し、出てきたラキにはバスローブを羽織らせた。
テーブルの上に食事が並ぶ。ラキを向かい側に座らせた。「まずは食え。すぐに放り出すことはしないから。」
ラキはフォークを手にすると片端から俺の料理に手を出していった。俺もまた、久しぶりに一人でない食事に美味しさを噛みしめていた。

ラキをベッドに寝かす。食器を片付け、ロッカーの奥に戻そうとした時、そこに忘れかけてていたモノが目に止まった。
ミドリ…一時期、俺と行動を共にしていた女…の残していったものだ。彼女の服や使いかけの化粧品が一纏めにしてそこに置いてあった。何故か捨てる機会を逸していたのだ。
ラキの服がボロボロであったのを思い出した。下着やスカートは無理だが、船内服は着れるだろう。サイズを確認し、畳み直してラキの枕元に置いてやった。

その夜、俺は久しぶりにミドリの夢を見た。

 

ナビは最寄りのステーションまで一週間と回答してきた。データをオートパイロットに転送すると、後は何もする事がなくなる。
いつもであれば、コクピットでボーッと星を眺めているのだが、同乗者がいてはそうも言っていられない。(ミドリと組んでいた時は、男と女…それなりにヤる事はあった)
ドアがノックされ、ラキが入ってきた。「オハヨウ。」の声に振り返ると、ミドリの船内服を着たラキが立っていた。
一瞬、ミドリが帰ってきたかと錯覚する。彼女…いや、彼はミドリではない。しかも「男」だ。抱き締めたい衝動を無理矢理押さえ込む。
「一週間もすればステーションに辿り着けそうだよ。」そう言うと、ラキは喜ぶと思いきや顔面に悲しみをたたえていた。「どうした?」と聞くと、ラキは何も言わずキャビンに戻っていった。
ラキの後を追うようにキャビンに向かう。ドアを開けるとラキは鏡に向かっていた。彼の前にはミドリの残していった化粧品が並べられていた。
「降ろさないで。何でもするから…」ラキが俺の胸に飛び込んでくる。彼の胸はミドリの服に合わせるように膨らんでいた。「抱いて…」俺は意思の力を振り絞り、ラキの肉体を離した。
「君はミドリではない。この艇は俺のものだ。どのような理由があろうとも、ステーションに着いたら降りてもらう。」俺はすがり付こうとするラキを振り切り、キャビンを後にした。

気不味い時間が流れていった。「食事、作ったよ。」とラキが呼びに来て俺はキャビンに戻った。ラキはミドリの服を着ていた。胸元が大きく開いたワンピースだった。ラキの胸にあるバストは本物のようだった。
終始無言のまま食事が終わった。ラキはエプロンを着けて食器を片付けた。「先に寝てます。」と俺の目の前で服を脱ぎ始めた。ラキは下着も女物を着けていた。ブラを外し、ショーツ一枚になる。昨夜見かけた男のシンボルはその布の下にはなさそうだった。
ラキがベッドに潜ると、俺は酒のボトルを取り出した。薄めずに原液のまま喉を潜らす。熱い塊が胃の中に落ちてゆく。「どうすれば良いんだよ!!」
つぶやきを残し、俺はソファに倒れていた。

夢の中だった。
全裸のミドリが俺の上にのし掛かっている。俺は指一本動かすこともできず、ミドリのするが侭に任せていた。ミドリの唇が俺の口を塞ぐ。官能的な舌が俺の口の中を攻めたてる。俺の股間が勃起していた。
ミドリの唇が俺の口を離れた。カタツムリが葉の上を這うように、彼女の舌が俺の胸の上を這い進む。臍を通り越し、腹の上を更に下へと向かっていった。
ミドリは俺の股間で丸くなっていた。その口に俺の逸物が含まれる。程なく俺は精を吐き出し、夢が終わる。

同じような夢がくりかえされる。そして、その内容は日々エスカレートしていった。
朝になりラキが目の前に現れると、夢に引きずられ彼を押し倒そうになる。何とか意思の力で押さえ込むが、日に日にそれも困難となってくる。間違いが起きないように、食事の時以外はコクピットに篭もりラキと顔を合わせないようにしていた。

五日目の晩、ラキが言った。「ボクではミドリさんの代わりにはなれないの?」
俺は彼が超能力者であることに思い至った。「あの夢はお前が見せていたのか?」「ボ、ボクは貴方に必要なヒトになりたいんだ。このままボクをここに置いて欲しいんだ。」
「それでミドリの格好を?」俺はラキを見た。確かに着ている服や化粧の所為ばかりではない。ラキの姿は限りなくミドリのものに近づいていた。「そうまで言うなら抱いてやっても良い。だが、お前を降ろさない理由にはなれないな。現に、ミドリも俺が降ろしたのだから。」
その夜、俺はラキを抱いた。

 

俺は夢を見ていた。
カチャリとドアが開く。振り返るとそこに「俺」がいた。
「解ったよ。」「俺」が言う。「ボク自身がこの艇に必要不可欠なヒトになれば良いんだね。」
彼は多分ラキなのだろう。コツコツと床を鳴らしてベッドに寝ている俺に近づいてきた。
「ボクが貴方になれば、ボクは降ろされることはない。もちろん、ボクは貴方を降ろしたりはしませんよ。」ラキはニヤリと笑った。

「あん、ああ~ん♪」女の艶声がキャビンを埋め尽くしていた。
昨夜はラキが俺の腕の中であげていた。今は俺自身がラキに貫かれ嬌声をあげていた。
まる一日、女になった俺の肉体を攻めたてられ、俺の脳には女の喜びが幾重にも刻み込まれていった。いつしか、俺は自ら快楽を求めるようにラキに抱き付いていった。
ここ数日、夢の中で繰り広げられた事が忠実に再現される。立場は入れ替わり、ミドリとなった俺が「俺」自身=ラキに奉仕していた。俺は自らの股間にラキの逸物を咥え、快感に悶えるのだった。

 

「アパッチ・ステーション。これより燃料補給のため入港します。」入港シーケンスが手順通り進められてゆく。
艇が所定の位置に固定されると、俺はシートに座ったラキの頭を撫でてやる。「よくやった。十分だよ。」
ラキは俺の代わりに入港操作を行ったのだ。今の俺はミドリの船内服を着ている。シートの背にバストを乗せ、ラキの後ろから各機器のチェックをした。
ラキが不安げな顔で俺を振り仰いだ。「降ろさないでくれるよね?」
俺はニッコリて笑ってやる。「今じゃラキがいないと艇が動かせないからね♪」
生体認証で「俺」でなければこの艇は動かせないし、ラキだけでは艇を動かす知識と経験がない。
しかし、それ以上に俺はラキと離れられなくなっていた。
ラキの顔に笑顔が戻る。キュンと俺の胸が締めつけられる。身体の芯が…俺のオンナが熱くなる…
俺は背もたれから身を乗り出すように、ラキの唇に接吻した。

「これからも、ずっと一緒だよ♪」

 

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コメント

『冷たい方程式』かと思ったのですがこれは・・・
TS版、暖かい方程式?ですか。^^

一種の『冷たい方程式』ですね。
普通は船長側が頭を悩ますのですが、
今回は密航者側が知恵?を振り絞りました。

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