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2008年8月 3日 (日)

異郷

そこは不思議な空間だった。

占い師の天幕は、らしく香の煙に包まれ、皺だらけの老婆が水晶玉の前に鎮座していた。が、その背後、レースの幕の向こう側にはラブホテルのようなベッドを擁した異質の空間が存在した。
「女を求めているのじゃろう?」占い師の老婆は流暢な日本語で問い掛けてきた。「この国にはそのテの商売女はいないからねぇ♪」ヒッヒッヒと謎めいた笑いを浮かべる。

俺が先輩にこの占い師を紹介されたのは、つい昨晩の事だった。歓楽街のカケラもないこの国に来て一ヶ月が経とうとしていた。最近では毎晩のようにホテルの部屋で先輩に愚痴を吐いていた。
「ギャンブルはともかく、酒も女もダメってのは独身男には酷ですよね。まあ、酒はこうやって先輩と飲めますが、下半身はもう腐り始めてますよ。」そんな事を言った俺に先輩が「ココに行けばお前の不満も解消できると思う。」と教えてくれた。翌日は休日だったので早速訪れたと言う訳だ。

「女が欲しいのじゃろ?」老婆の問いに俺は「ああ」と答えた。「この事は他言無用じゃからな。それと、少しばかりの我慢が必要じゃが大丈夫かね?」
俺が問題ないと言うと、老婆はヨッコラと立ち上がった。背後の幕を開き俺を招き入れた。「服を脱いで裸になりなね。」何でも我慢すると言った手前、抗議もできず俺は老婆の言う通りにした。「ほら、パンツも脱ぐんじゃ。あと少しで理想の女が手に入るんじゃぞ。」
「理想の女」を想像し、俺の股間が一気に硬くなった。「元気な事は判ったから、早く脱がんかい。」と老婆の声が飛ぶ。俺は恥ずかしさを堪えて最後の一枚を脱ぎ取った。

 
「そのベッドの上で仰向けになりなさい。」俺は言われた通りにする。老婆の手が俺のペニスを握った。「理想の女が欲しければ、言う通りにするんじゃぞ。」と老婆の口が俺のペニスを包み込んだ。超絶的なテクニックが俺のペニスを射精寸前の状態で更に大きさと硬さを増大させた。
「頃合いじゃな。」と老婆は口を離すと着ていた服を脱ぎ去った。そのまま俺の上に跨る。俺のペニスは大きさと硬さを維持したまま、老婆の膣に入っていった。
天井に吊るされた鏡が俺と老婆を映していた。俺の上で老婆が体を揺する。膣が射精寸前のペニスに快感を与える。が射精に至ることはない。膣とペニスが一体となり、快感だけを増大させてゆく。

一瞬、老婆の姿が理想の女に見えた。最大の快感が俺を襲う。俺はギリギリまでに溜められた精を吐き出す。彼女の膣がその全てを受け入れる。更に俺の中に残った精も吸い取ってゆく。俺の魂までも吸い取られたかのように、俺は快感の中で気を失っていた。

 

男の声がした。聞き覚えのある…先輩の声だった。あの老婆と話をしている。幾莫かの金が老婆に支払われたようだ。
俺は体に力が入らず、身を起こす事もできなかった。ふと、天井を見上げた。そこには鏡があり、ベッドの上の俺を映している…筈だ…
鏡に映っていたのは見知らぬ女だった。知らない女だったが、彼女の姿は俺の理想とする女のものだった。
「どうだい♪理想の女を手に入れた気分は?」先輩が服を脱ぎながら近づいてきた。「こうでもしないと、この国では女を抱けないのでね♪」
「や、止めて…」俺は女のように怯えていた。全裸になった先輩が、俺の上に伸し掛かってきた。俺のなにもなくなった股間に、先輩のペニスの先端が圧し付けられた。「痛いのは最初だけだよ。後は気持ちよいだけだ。俺も先任者から教えてもらったから、良く判っている。気持ちを楽にするんだ。」先輩の言葉に一瞬気が緩んだ。

ヌッ!!

俺の中に先輩のモノが侵入してきた。痛みはなかった。不思議な充足感に満たされる。先輩の下半身が俺の股間に密着していた。
天井の鏡には脚をM字に開き、男に組み敷かれた女の姿が映っていた。「動くよ♪」直後に快感が沸き上がる。「ああん♪」俺は女のように喘いでいた。
鏡の中の女は悦びに淫らな笑みを浮かべていた。俺がこの理想の女を組み敷いていたのなら、どんなに良かっただろうか?「あん、あふぁん♪」女が淫声を漏らす。
「どうだ?気持ち良いだろう?」先輩が問い掛けてくる。確かに、先輩が動く度に快感が訪れる。それは男では知り得ない、甘美な快感だった。「けれど、もっと気持ち良くなっていくよ。」
「キャン!!」俺が叫んだのは、乳首が摘まれたからだ。しかし、痛みは最初の一瞬だけだった。乳首が弄ばれると、そこからまた違った快感が湧き起こる。
先輩の唇が首筋を這っていった。「んあんっ♪」俺は体中が性感帯になってしまったように思った。様々な快感が干渉し、共鳴し、更なる快感の高みへと俺を押し上げていった。

 

「異動が決まった。」先輩が本社からの通知を見せてくれた。「お前も、もう元に戻っても良いぞ。」俺はレディース・スーツに包まれた自分の体を見下ろした。「元には戻れないかも…」
最初の頃は週末だけ女になって先輩に抱かれていたが、今では毎晩のように抱かれている。当然、俺は24時間女の姿でいることになる。俺は女でいることを当然のことと思うようになっていた。
先輩がいなくなってしまう。もちろん、先輩がいなくても一人でやれるだけの仕事は覚えている。しかし、この国では女は男と一緒でないと仕事ができないのだ。「後任が来るまでは我慢して男に戻るんだな。」そうは言われても、俺はもう先輩なしでは生きていけそうにない。
「いや!!行かないで。」俺の目から涙が落ちていた。「お、おい。女みたいな事言うなよ。」「あたしは女よ。貴方に女にされたの。責任取って!」自分でも支離滅裂な事を言っていると思う。
「ご、ごめん…会社の決めた事だものね。」俺はそのまま事務所を出ると占い師の天幕に向かった。

 
「ダーリン、早く戻ってきてね♪」俺は出国ゲートに消えてゆく先輩に手を振っていた。占い師の老婆の計らいで俺はこの国の女として先輩と結婚する事ができた。既に俺のお腹の中には先輩との新しい命が宿っている。先輩の辞表は既に受理されている。手続きのために一旦帰国するのだ。
先輩が戻るまでは休業状態になるが、それも数日の事。先輩が帰ってくれば、仕事は再開できる。しばらくは俺も手伝えるが、子供が産まれればそれどころではなくなる。会社の書類上は男の俺が産休を取る訳にはいかない。だから、先輩は俺の替わりになってくれることになっている。既に俺自身を俺の扶養家族として申請してある。

俺は空港の窓から、先輩の乗った飛行機が雲の彼方に隠れるまで、ずっと見つめていた…

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コメント

コレは厳しい国ですね。
でも、この秘術を知っているということは、先輩もこの術で・・・でも戻ったんだ先輩は・・だろうか?
実はこの先輩は、元女だとか?^^

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