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2008年7月 5日 (土)

君と僕 

君は僕
僕は君

鏡の中の女の子に僕は愛を囁く

あたしはあなた
あなたはあたし

あなたの囁きにあたしは幸せに包まれる

 

何でこうなったのか解らない。気がつくと僕は女の子になっていた。
女の子の服を着て、女の子の靴を履き、女の子の鞄を提げていた。
キキキーとブレーキの音。僕の目の前を巨大な物体が通り過ぎていった。既視感。目の前に迫っていたトラック…
僕はトラックに跳ねられた。普通なら即死の筈だ。だが僕は今、こうして立っている。
(因果律を少しいじったのさ)
誰かの声が頭の中に響いた。霧が掛かったように頭の中が解らなくなっていた。だから自分が今、スカートを穿いている事に気がついても、それを不思議と思う事はなかった。

僕は歩きだしていた。自分の家に向かう。「ただいま。」と玄関のドアを開け、階段を昇り、自分の部屋に入った。
着替えるためにクローゼットの扉を開ける。内側の鏡に自分の顔が映った。それは見知った顔…でも、僕自身の顔ではなかった。僕が恋してる女の子の顔だった。
(因果律が変わっているからね)
僕は制服を脱ぐと、スカートを穿いてカーディガンを羽織った。「ちょっと出かけてくる。」とサンダルを履いて外に出た。向かう先は彼女の家だ。歩いて15分程の所にある。
が、そこには何もなかった。彼女の存在が家ごと抹消されていた。僕の記憶には、彼女のいる家の姿とダブルように、そこが昔から空き地だった思い出が存在した。
僕の記憶があやふやになっていた。男の子として育ってきた記憶の他に、女の子として育ってきた記憶もあった。大事にしていたヌイグルミ。初めて着物を着せてもらった七五三。オママゴトで遊んだ幼友達。あたしを苛める男の子。
そう、あたしは男の子がキライだった。だから女の子だけで遊んでいた。やがて、みんなは男性アイドルの話を始めた。だれかがクラスの男の子にバレンタイン・チョコレートをあげた。男の子の話題で盛り上がる…
あたしだけ、理想の男の子が見つからなかった。でも…
ときどき見かけるあの人は誰?気になり始めると、あの人の顔が瞼の裏に焼き付いてしまったよう。同じ学校、同じ学年。だけど、これまで一緒のクラスになった事がない。
いつのまにか、あたしの目は常に彼を追っていた。校庭で走る彼、通学中の彼、休みの日に街を散歩している彼。彼はどんな女の子が好みなのだろう?

その日、学校の帰りに彼を見かけた。突然、大きなブレーキの音。一瞬の後、彼は突っ込んできたトラックと壁の間に挟まれ、潰されていた。

 
嫌…
 

それは声にはならなかった。彼と一緒に押し潰されてしまったみたい…いっそ、彼と一緒にいられたら、それが一瞬であっても、どんなに幸せだったことだろう…
(なら、一緒になるかい?因果律を少しだけ捻ってあげよう)

 

あたしは彼とひとつになった。あたしは彼。僕はあたし。あたしは僕。
僕は鏡の中のあたしに愛を囁く。あたしは僕の囁きに幸せな気分になる。僕は唇にルージュを塗ると、鏡の中のあたしに接吻した。
「あたしはあなたを愛してるわ♪」今度はあたしが僕に愛の囁きを返すのだった。

 

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コメント

一心同体?
因果律の操作は、因果律を深めますね。
これで、いいんが?

これって自己愛って事なんでしょうか。

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