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2008年6月15日 (日)

大怪我の末

まさか?
とは思ったが、それが無くなっていたのは事実だった。

俺の股間を覆ったガーゼと包帯が切り取られてゆく。排泄物を導いていたチューブが外された。俺の目の前に俺の股間があらわになった。下腹部を縦に走る傷跡が痛々しい。俺に傷を残した凶器は、単に俺の股間に傷を付けただけではなく、俺の大事なモノを奪い去っていた。
臍の下15cm位の所から始まる傷跡を辿ってゆくと、何もなく股の間に到達してしまう。俺の大事な…ペニスのあった所は醜く穿たれていた。
「整形で傷跡を綺麗にする事はできるが、ペニスを復元する事は難しいな。」と医者は言い放った。「何なら女の子にしてあげようか?今の君の状態なら、ペニスを造るよりずっと簡単だよ。」とニヤリと笑って見せた。
「俺は男です。そんな事は絶対にしません!!」俺はそう言って、股間の現状から目を背けるように瞼をぎゅっと閉じていた。

胸がチクチクと痛んでいた。パジャマのボタンを外すと、俺の胸で乳首が膨らんでいた。嫌な考えが頭をよぎる。「ホルモンのバランスが崩れているからだね。」往診に来た医者がソレを見て言った。「しばらくすると、少しは胸も膨らんで来ると思うよ。ブラジャーが欲しかったら処方してあげるよ。」
「俺は男です。女の下着はいりません。」胸の痛みを訴えると、乳首の上に絆創膏のようなものを貼ってくれた。

確かに俺の胸は思春期の女の子のように膨らみ始めていた。「男性ホルモンを注射してくれませんか?」と聞くと、「あまり薦められないね。」と一蹴された。
「外部から強制的に注入すると、体の男性ホルモンを造る力が弱まってしまう。結果として、注入を止めた途端、更に女性化が進行する可能性がある。」と脅すような事を言った。

何度かの手術の後、下腹部の傷は綺麗に消えていた。リハビリも進み、一人で立って歩けるようにもなっていた。もちろんトイレも自分でできる。が、小用を足すにも女のように座らないとできない事が屈辱的だった。

「やはりブラジャーを着けてもらえないかな?」と処方された女の下着が目の前にあった。「私達職員は慣れているが、病院には一般の患者さんや見舞いに来る人達がいる。院内でも問題になり始めているんだ。」
何故か俺の胸はどんどん成長を続けていた。既にDカップの威様を誇っていた。加えて、カロリーの制限された病院食とリハビリの適度な運動で、俺の体はメリハリのある曲線を獲得していた。伸び放題の髪の毛を左右に束ねた姿は、どこから見ても女にしか見えなかった。
結局、医者の指示には従わざるを得ず、下着ばかりか、パジャマもまた女性用のピンクのものに替えられてしまった。

「君、そっちは男性用だよ。」リハビリの途中でトイレに入ろうとして呼び止められた。「あ、すみません。」俺は女として見られていた。改めて女性用に入った。清掃のおばさんがいたが、咎められることもなかった。
用を足して手を洗いながら鏡に写る自分を見た。どう見ても女にしか見えなかった。髪の毛が乱れていたので、結わえていたリボンを解いて束ね直した。

 

退院の日がきた。俺は看護士さん達からプレゼントされたワンピースを着ていた。「退院、おめでとう。」花束が手渡されると、何故か目から涙が溢れてきた。「お世話になりました。」レースのハンカチで涙を拭いながら挨拶する俺は、すっかり女の子だった。

タクシーが新しく用意されたマンションに俺を運んだ。エレベータに乗り、聞かされていた部屋の前に立つ。
表札には新しい=女の=俺の名前が描かれていた。ドアを開ける。玄関に並んでいた靴はどれも女物だった。
リビングの窓にはレースのカーテンが掛かり、家具はパステルカラーで統一されていた。
寝室は更に女の子していた。ベッドの上にはヌイグルミが溢れ、鏡台の前には化粧品が並べられていた。クローゼットには様々な女の衣服が掛けられ、タンスの引き出しには女物の下着が詰まっていた。

保険金や補償金でこの部屋が準備されたのだろう。これだけやっても俺には働かずに生活できるだけの金が残っているらしい。これだけの金があるなら俺を男に戻して欲しい所なのだが、それは無理な相談であった。
男の俺は死んだことになっていた。女になった俺は、男の俺とは縁もゆかりもない全くの別人という事になっている。それが約束だった。この先、俺が男と結婚すると祝い金が支給されるらしい。子供ができると、更に増額されるそうだ。
そう、今の俺は子供が産めるのだ。俺の腹の中には子宮が埋め込まれ、しかも、それが正常に機能する事が確認されている。それが、この莫大な補償金の出所となっていた。

俺の外見は完全に女性になっていた。男に戻るには手術が必要だと言い渡された。手術には費用が要るが、その時の俺は無一文…これまでの手術を考えるとかなりの借金があるに違いないと思っていた。「いっその事、本物の女にならないか?」
耳元で囁く声があった。「働かなくても生活できる程の金が手に入るよ。」「君はもう男には戻れないんだ。」「お金は必要だろう?」

俺は無意識の内に手術に同意していた。そして、気が付くと俺は再び股間に包帯を巻かれベッドに寝かされていた。病室も替わっていた。これまでよりも広く、部屋の雰囲気もワンランク上のようだった。
ネームプレートに目が止まった。それは俺の名前ではなかった。俺の知らない女の名前が掛けられていた。「それが新しい君の名前たよ。」
いつの間にかベッドの脇に医師が立っていた。「手術は成功したよ。君はこれで完全な女になったんだ。…いや、契約上は君は元々女の子だったね。一週間後には退院できるから、それまでに契約内容を覚えておくと良い。」
その三日後、俺は生理になった。女として、様々な検査を受けさせられた。俺は腹の中に子宮が存在することを認めざるを得なかった。

 

ここから、俺の新しい人生が始まるのだ。
窓を開け、ベランダに出た。暖かな陽が差している。鳥が空をよぎった。その後から風が吹いてきた。

風が俺のスカートを舞い踊らせた。

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コメント

目覚めると、自分は・・・
事故のあと目を開けるのは怖いですね^^;
綺麗だったらいいかも?

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