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2008年5月 7日 (水)

確率と可能性 -2-

ズボンを穿いていないというだけで恥ずかしさがこみ上げてくる。

実際はスカートを穿いているのだから下着姿を人前に晒している訳ではない。気になるのなら、と母さんがタイツを穿かしてくれたが、気分的には何も変わらなかった。更に胸を締め付けるブラジャーが、僕が「女装」している事を知らせ続ける。僕の女性化は、まだ股間だけで他はまだ男のままなのだが…女の子の服を着て、前髪を揃えられ、眉毛の形を整えられた姿を鏡に写すと、どこから見ても「女の子」にしか見えなかった。
「常に膝小僧が触れ合うように気を付けてね。ハイヒールを履いているつもりで歩くと良いわよ。ダメよ、ちゃんと胸を張りなさい。女は胸元で男を惹き付けるものなのよ。」母さんからいろいろ注意を受けた。たかが病院に行くだけなのに女装することはないとは思ったが、男の服は母さんに隠されてしまい、スカートを穿くしかなかったのだ。
しかし、それも母さんの心遣いだと気づいたのは病院に着いてからだった。案内されたのは産婦人科の待合室だった。まわりは皆、女の人ばかりである。そこにいる男は赤ちゃんや就学前の幼児しかいない。こんな中で男の格好をしていたら、それこそ目だってしまい、僕が自然性転換症だと言う事が知られてしまっただろう。
超音波診断装置のモニタには、はっきりと子宮や卵巣が映っていた。「正常に活動を始めていますね。しばらくはホルモンバランスが崩れて気分が優れないでしょう。安定剤を処方しておきますね。ご希望があればホルモンも出しますが?」医者は淡々と事実を語った。「それって男に戻れるんですか?」
「女性化を促進するためのものです。中途半端な状態が長いと社会生活に支障を来す方もおられるのでね。なくても大丈夫。貴女は至って健康だから、すぐにも生理が始まりますよ。」

一週間程で「その日」は来た。隠していたが目敏い母さんの追求には抗うこともできず、白状することになった。当然のごとく、その晩は赤飯だった。
やがて胸が膨らんできた。僕は女子の席に移された。制服も女子のものに替わった。トイレも女子用を使うようになっていた。
僕は女の子達のお喋りの輪の中にいた。話が「気になる男の子」に移っていた。「どう?誰が気になる♪」と振られ、ざっと男子の顔を思い浮かべた。「啓治…」ぽろりと名前がこぼれ落ちる。
「武藤君?」「良いんじゃない?」「アタックしたの?」と突然騒ぎが巻き起こった。啓治は昔からの友達である。最近は何か距離が開いているが、親友の一人だ。僕が女になったからと言って、その事が変わる事はない…筈である。
「ねえ、彼のどんなとこが気になるの?」と振られて初めて僕は「女の子」の目で奴を見始めていた事に気づいた。

それは、だれでも経験する事ではないが誰もが経験する可能性を持っている。僕の身に起きた事は明日の君に起きないとは誰も保証してはくれない…

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コメント

う~ん、絶対にないとはいえない確率。でも親友を好きになるか確率の方が高いかも?親友の方もね。

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