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2008年4月10日 (木)

想い_裏話(前)

あたしは明さんの為に朝ご飯を作っていた。形はどうあれ、同棲している女の子が家事をするのが当たり前だと思う。けれど、あたしは明さんと向かい合って食事をすることはできない。食卓に出来たての朝ご飯を並べると明さんのベッドに向かう。スカートを脱いでパジャマに着替える。「明さん。朝ですよ♪」そう言ってベッドに入り込む。
「あ~あっ」と俺はわざとらしく伸びをした。もう一度寝直すことなく、ベッドの上に起き上がる。パジャマを脱いでズボンに穿き替えた。面倒ではあるが、こうでもしないと俺は自己を保てない。そう、浩子として行動しているのは、他ならぬ俺自身なのだ。
浩子の意識と混ざり合っているため、浩子の希望を満足させようとすると、浩子がしたいと思った事を「俺」がやる事になるのだ。俺の為に料理したいと彼女が望んでも、結局は俺が自分で作っているのと同じになる。しかし、彼女は俺の為に自分自身で作っていると感じているのだ。
だから、少しでも「彼女が作っている」という感じを出す為に、俺は浩子に成り切る事にした。誰にも見せたくはないが、俺はスカートを穿き、自分の事を「あたし」と言う。体は男のままではあるので、そのままでは違和感が生じてしまう。俺は浩子としての記憶を前面に出し、自分が女であると刷り込むようにした。生まれた時からずっと女をしていた事になれば、スカートも「あたし」と言うのもおかしくはない。
浩子としての自分と、本来の俺自身を明確にする為に、浩子が起きている間の「俺」はベッドで寝ている事になっている。浩子がベッドに戻って初めて「俺」が目覚めるのだ。

今日は明さん、朝から具合が悪いみたい。せっかくお粥を作ったけど、いらないって言うから、あたしが食べちゃった。明さんは動けないけど、冷蔵庫の中は少ないので買い物に行かないといけない。いつもは明さんに頼んでいたけど、今日はあたしが行かなくちゃね♪久しぶりの外出なので、お化粧にも力が入った。

俺は今、何をしているのだろう?カーラーで毛先を丸めている?鏡に写っているのは俺の顔ではなかった。マスカラで睫毛が強調され、アイラインとの効果でパッチリと見開いているように見える。眉毛が愛らしく描かれ、チークが健康的な肌に見せている。ピンクの口紅が清楚な女の子を演出していた。

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