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2008年4月10日 (木)

女難(第3話)

「あなたの顔には女難の相がでている。」見るからに胡散臭そうな風体の占い師は、俺にそれだけ言うと姿を消していた。

前にもそんな事を言った占い師がいたような気がしたが、今の俺にはどうでも良かった。もし、それを忠告するのであれば、親友の敬司の方であろう。今まさに、奴は女難(?)に合おうとしているのだ。
俺は敬司と飲んでいた。俺は、飲み過ぎて足下が怪しくなっているように見せていた。「大丈夫か?」と奴の問い掛けに「大丈夫だよ。」と答えたつもりで「たーたーうー」と言ってやった。
肩を組んで道を歩いていた。空のタクシーが来そうになると、気分が悪い振りをして注意を逸らしているので、タクシーはなかなか捕まらない。奴がようやく「ホテルでも良いか?」と聞いてきた。「良いぞ、任した。」と答えながら、俺はにんまりと笑みを浮かべていた。
「ヒトミ~」酔って相手がだれだか判っていない振りをして、敬司をベッドに押し倒した。シャツのボタンを一つづつ外してゆく。肌着をたくし上げ、奴の乳首に吸い付いた。
「ヒトミィ、愛してるよぅ。」と言いつつ、俺も服を脱いでいった。「お、おい!しっかりしろ。僕は敬司だ。」俺の手がズボンのベルトに掛かると、慌てて俺を押し退けようとした。が、俺が離れると一緒にズボンが脱げてしまった。
「ヒトミは今日も可愛いショーツを穿いているね。」たじろぐ敬司の下半身に縋り付いた。「なんだ、まだ準備ができていないのかい?俺がしっかりと濡らしてあげよう。」と言って奴のトランクスを半ば下ろした。俺の目の前に萎えたペニスが現れた。(しっかり、頑張ってくれよ)と心で呼びかけ、俺は奴のペニスを口に含んだ。チュパチュパと音を発てて吸いあげる。「お、おい!やめろよ。」と言ってはいるが、奴のペニスは次第に俺の口に入りきれなくなってきた。
もし俺に豊満な乳房があれば、それでパイ擦りくらいしてやっただろう。しかし、今の俺が奉仕できるのは口だけなのだ。俺は丁寧に先端から首周り、竿全体と袋の裏側まで舐めあげてやった。そろそろ俺の方も準備が整ったようだ。俺はパンツを脱ぎ去ると、体を擦り上げていった。

「敬司、何も言うなよ。」俺はそう言って奴のペニスを俺の膣に導いていった。充分に濡れているので、何の抵抗もなく、スルリと飲み込んでしまった。「どうだ?他の女と何も違いはないだろ?」俺はゆっくりと腰を動かした。俺が感じているのと同じように、奴にも快感が伝わっている筈だ。奴はそれを快感と認めたくないようで必死に我慢していた。
意思でいくら頑張っても、肉体は正直である。俺の膣の中で奴が高まりを迎えようとしているのが判った。「良いんだぜ、中に出しても。」そう言って俺は奴のペニスに新たな刺激を与えてやった。「だ、駄目だ!!」と奴は言ったが、俺は奴を解放しなかった。「むむっ」と奴がうめく。どくりと熱い塊が俺の膣ち放出された。
「あん、ああん♪」俺も同時に達していた。女のように媚声を上げ、快感を増幅させる。俺の中では奴は未だに威力を保っていた。続けざまに射精させる。動く度に溢れた精液が俺の太股を滴り落ちていった。

俺は敬司に見えるように股を広げ肉襞を指で押し開いた。「手術…した訳ではないよな。お前がまとまった休みを取っていた筈がない。だが、以前連れションした事がある。その時には確かにお前にもあったよな。」奴は俺の「女」を見ないように視線を逸らした。
「つい、最近なんだ。気がついたら、こうなっていた。」「だからと言って男とSEXする事はないだろう?」「これが疼くんだ。女の器官が男を欲しがっているの。このままだと、どうにかなっちゃいそうで…」俺の目には涙が浮かんでいた。「判った。それ以上言わなくて良い。」そう言って敬司は俺を抱き締めた。

まさかとは思ったが、俺は妊娠していた。不意に吐き気があり、つわりじゃないか?と冗談を言っていたが、念のためにやってみた妊娠検査薬が妊娠を告げていた。知り合いの医者の伝で婦人科の検診を受けたが、見事におめでたの判定が下された。
今はまだ体は男のままだが、臨月が近づくにつれ女らしい体になるらしい。それよりも先に俺の戸籍が変更された。男から女へ。名前も女らしいものへと…
そして名字も変わった。敬司と同じ姓になる。

俺は今、白いドレスを着てバージンロードを歩いていた。その先に敬司が待っている。
結局俺は女難に会うことなく、逆に女の幸せを手に入れたのだ。

「ヒトミ。あなたは敬司を夫とし、愛する事を約束しますか?」司祭の問いに俺ははっきりと「はい。」と答えた。

女難(第2話)

「あなたの顔には女難の相がでている。」見るからに胡散臭そうな風体の占い師は、俺にそれだけ言うと姿を消していた。

気分を害した俺は親友の敬司と別れ、繁華街を抜け出した。明かりの消えた商店街を抜け駅に向かったが、既に終電を終えてシャッターが下ろされていた。駅前にはタクシーもいない。ふと見ると「空室」の文字。俺は吸い込まれるように、そのホテルに入っていった。
シャワーを浴び、備え付けのビデオを見ていると、ドアをノックする音がした。「ルームサービスです。」と女の声がした。「頼んだ覚えはないよ。」と言ったが、女はワゴンを押して部屋の中に入って来た。
「お部屋の番号も合ってますし、お金も戴いています。このまま帰るとあたしが叱られてしまいます。間違いでもご迷惑を掛けませんから、サービスを受けてもらえませんか?」涙目の女の子の姿に、あの占い師の姿がダブッた。「女難の相」という言葉が俺の口を点いていた。
「あぁ、その事を心配されているなら大丈夫ですよ。あたしは女の子じゃありませんから。」じゃあ「男」なのか?と聞く間もなく、俺はベッドに押し倒されていた。「快感を高めるクリームを塗りますね。」
彼女?のペースで「サービス」が始まってしまった。クリームの効果か、触られただけで快感がわき上がってくる。「ココの感度は特に良くしときますね。」と胸の上を撫でると、吸盤のようなものを乳首に被せた。体の中から何かが吸い出されていく気がする。
「今回は女性を相手にする必要がないので、こちらのオプションは別のに変更しておきますね。」俺のペニスを摘むと、スキンのようなものを被せた。「ちょっと痛むと思いますが、すぐに済みますからね。」坐薬のようなものが尻の穴に突っ込まれた。その途端「!!」俺の叫びは声にならなかった。金玉が押し潰され、締め上げられたような痛みがあった。が、それも一瞬の事。すぐに痛みは跡形もなく消えていた。
「では、こちらも準備しますね♪」と紙の毛に手を入れると、スッポリと取り払った。カツラになっていたようだ。ジジッとファスナーが下ろされる音がした。彼女の手が後頭部から腰のあたりまで動いていた。怪獣のきぐるみみたいだなぁと思っていると、彼女は両手を後頭部に廻してグイッと引っ張った。
怪獣の中身のように、中から若者が現れた。裸のままきぐるみに入っていたようで、脚を抜き取ると股間には雄雄しくペニスが勃起していた。「それでは本番いきますよ。」痺れるような低音で彼が言った。
胸に付けた吸盤が外されると、ぷっくらと乳首が膨らんでいた。そこに彼がしゃぶり付いてきた。敏感になっていた俺の胸は、すぐに快感を伝えてきた。「ああん♪」俺は女のように喘いでいた。
「感じてるね。でも、もっと凄い快感を教えて上げるからね。」彼はうぶな娘に諭すように俺の耳元で囁いた。その声にさえ、俺の体はゾクゾクと快感を伝えてきていた。
「さあ、いくよ。怖くはないから、リラックスして体の力を抜いておきなさい♪」俺の片脚が持ち上げられた。股間が開かれる。腰が浮き、彼の体が割り込んでくる。股の間に彼のペニスの先端が触れるのを感じた。
ゆっくりとソレが入ってきた。「男」には存在しない筈の器官に彼のペニスが飲み込まれてゆく。俺は腹の中にソレの存在を感じていた。「良い娘だ。これから動くからね。我慢する事はない。気持ちよかったら、どんどん声を出しなさい。」
快感の為か、俺の思考能力は著しく低下していた。俺は彼の言うことに素直に頷いていた。
程なく、彼が動きだした。「あん♪ぁあ~ん。」俺は彼に言われた通り、素直に快感を声に出していた。声を出す事で、更に快感が増していった。「あん、あん、あん。」彼の動きのリズムに合わせる。俺も腰を振り、更なる快感を求めて動いた。
「良いぞ。その調子だ。もうすぐ絶頂が来る。あと少しだ。」俺は彼の声など耳に入っていなかった。頭の中は快感に埋め尽くされていた。快感がどんどんエスカレーションしてゆく。その頂が、あと少しで見えそうだった。「もっと、もっと…」俺は彼に要求していた。
「いくぞ。」彼が言った。熱いモノが押し寄せてきた。俺の中で何かが爆発し、俺は意識を失っていた。

俺はベッドの上で寝かされていた。体中に塗られていたクリームは汗や汚れとともに拭い去られ、余計な快感を伝えてくることはなくなっていた。ぷっくり膨れ上がっていた乳首も元通りになっていた。
ただ、股間だけはあのままだった。俺はこの先、小便をするにも便器に座らなければならないようだ。しかし、俺は不満を言っている訳ではない。そこに指をふれれば、あの素晴らしい快感が甦ってくるのだ。

俺はふと思った。
敬司のアレを入れたら、もっと気持ち良くなるんじゃないだろうか?

女難(第1話)

「あなたの顔には女難の相がでている。」見るからに胡散臭そうな風体の占い師は、俺にそれだけ言うと姿を消していた。

そんな占い師がいた事も忘れて、俺は親友の敬司と飲んでいた。いや、飲み過ぎて足下が怪しくなっていた。「大丈夫か?」と奴の問い掛けに「大丈夫だよ。」と答えた筈が、聞こえてきたのは「たーたーうー」と日本語になっていなかった。
肩を組んで道を歩いていたが、所々記憶が飛んでいる。タクシーがなかなか捕まらない。奴が何か言っていた。「良いぞ、任した。」などと俺は答えていた気がする。
気がつくと俺はベッドの上で寝ていた。意外と二日酔いもなく、すっきりとした目覚めを迎えていた。何故かベッドはキングサイズで隣に男が寝ていた。
「敬司?」俺が声を掛けると、奴は「むむん。」とうめいて寝返りを打った。奴の顔がこちらを向く。「?!」
その顔は敬司ではなかった。しかし、知らない男でもない。それは「俺」の顔だった。その「俺」の目が驚きに大きく見開かれた。
「誰だ!お前は?」

「俺」にそう言われると俺も答えに窮する。俺が「俺」でなければ、俺は何者なのだろう?小説とかで良くある話なら、俺と敬司が入れ替わったという展開がある。俺は自分の体を見下ろしてみた。

「…」

俺は言葉を発する事ができなかった。備え付けているであろう浴衣を着ていなかったとしても、ある程度は想定していた。下着もしていないのもご愛敬とはいえ、そこに「女」の体が存在しているとは思いもよらなかった。
当然、下着もつけていないのだから、そこにあるのは真っ裸の女の体だ。開かれた股間には淡い茂みと深く穿たれたスリットが見てとれた。角度が良ければ「俺」の目ははっきりと女陰を捕らえていただろう。

「お前は敬司じゃないよな。敬司は男だし、顔も違う。」奴はむっくりと起き上がった。奴は自分が「俺」である事に疑いを持っていない。つまり、入れ替わりとか、そう言うものではないらしい。「君は敬司の紹介で来たんだな。敬司もイキな事をしてくれる。」俺は「俺」の股間が激しく勃起しているのを見た。俺は「俺」が何を考えているか、手に取るように解っていた。
ガバッと「俺」が伸し掛かってくる。解ってはいたが逃げられなかった。「止めろ!!俺は男になんか犯られたくない。」と叫ぼうとしたが、「止めろ」の所で口が塞がれた。抱き締められ、奴の舌が俺の口の中で蠢いている。
男の体が密着し、俺は…俺の「女」の体は股間に蜜を染ませていた。奴の指は的確に「女」の性感帯を刺激してゆく。俺は快感の喘ぎ声を上げ始めていた。奴の腕の中で悶える。乳房が揺れる。子宮が疼いていた。
俺は彼に奏でられる楽器となっていた。触れられる度に、俺は媚声を発する。時に大きく、時に囁くように。彼に振り回されるように体位を変えてゆく。うつ伏せにされたり、仰向けにされたり。今度は脚を大きく広げさせられた。
「ああ~~~っ!!」俺は殊更大きな嬌声を上げていた。彼のペニスが俺の中に入ってきたのだ。充分に濡れていた所為か、痛みはなく、快感だけが押し寄せてきた。
永遠とも続く悦楽の時間が過ぎてゆく。絶頂を迎えたかと思うと、更なる快感がその先に待ち受けていた。「出すぞ。」と彼が言う。ぐぐっとペニスが膨らんだと思うと、一気に爆発した。ザーメンの奔流が俺の子宮を打ちつける。新たな快感の上乗せに、とうとう俺の意識は耐えられなくなった。「あーーーっ!!!!」俺は嬌声を発し、意識を失っていた。

部屋には俺一人だけだった。再び気が付いた時、俺は元に戻っていた。しかし、「俺」に貫かれた記憶は、股間の痛みと伴に生々しく残っていた。腹の中にはいまだに「俺」の精液が子宮の中で波打っているような気がする。が、今の俺は男である。膣も子宮も存在しない。股間にはちゃんとペニスが存在している。
服を着て鏡の前に立った。スーツを着た「俺」がそこに立っていた。俺の視線はズボンの前の膨らみに注がれていた。

ズキン!!

俺の腹の中で子宮が疼いた…

想い_裏話(後)

今日は一日中浩子のままだった。浩子がベッドに入ると、俺は眠気を圧してベッドを抜け出した。確かめなければいけない事がある。あの服で本当に俺の体型が変わっていたのだろうか?あれは俺の中にある浩子の記憶が見せた幻に違いない。俺は風呂場の鏡の前でパジャマを脱いだ。

鏡に写った俺は、どこから見ても「女」だった。胸の膨らみ、腰のくびれ。サラサラの髪、つぶらな瞳、ふっくらとした唇。細い首、小さな肩、白い肌…
股間に視線を落とすと、淡い茂みの向こうには、深い溝が穿たれていた。
この体はもう「女」以外の何者でもない。あの服の所為?いや、あれはきっかけにしか過ぎなかった。俺の体はそれ以前から徐々に変化していたのだ。俺はそれに気付こうとしなかったのだ。俺は俺の記憶にある俺自身の体のイメージを重ねて、自ら幻を見させていたのだ。

記憶を遡る。俺はかなり前から女性化していた。あの日、気分が悪かったのは、本当に生理が来ていたのだ。それを俺は浩子の所為にして、幻を見させられていたと思い込ませていたのだ。
俺は自分の体が女性化するのに耐えられなかったのだ。だから、浩子という人格を作り上げ、全てを浩子の所為にしようとしたのだ。しかし、どこかで破綻が来る。俺の体はすっかり「女」になってしまっていた。胸は膨らみ、腰にはくびれが生じている。もう、男の服を着ても、男装した女にしか見えないだろう。
突然、俺の目に涙が浮かんだ。ヒック、ヒックと子供のように泣きだしていた。俺はもう「男」ではないのだ。突きつけられた現実に成す術のない自分自身が腹立たしかった。
ひと泣き毎に、俺の頭の中から浩子の記憶が消えてゆく。幼い頃が思い出せない。そこにあるのは男の子としての「俺」の記憶だけだった。女子校での記憶が消えてゆく。親友がいた気がする。名前が思いだせない。憧れていた男子がいた気がする。誰だったのだろう?頭の中が真っ白になっていった。

朝、ベッドの中で目覚める。この部屋には俺独り、最初からそうだった。起き上がり、下着を着ける。胸の膨らみが強調され、俺が女であることを知らしめる。スカートを穿き、髪を梳る。鏡の中の俺は女だった。

俺は、唇にルージュを引いた。

想い_裏話(中)

ハイヒールを履くなんて本当に久しぶり。巧く歩けるかしら?外は日差しが強いから、今度、明さんに日傘か帽子を買ってもらおうかな?「じゃあ、行ってくるね♪」と明さんに声を掛けたけど、ぐっすり眠っているようで何も返事はなかった。ドアの鍵を掛けて一階に降りると、管理人の叔父さんがいた。「こんにちわ♪良いお天気ですね。」あたしは軽く頭を下げてそう言った。「あ、ああ。いってらっしゃい。」なんか不思議そうな顔をしてそう言っていた。

ちょっと待てよ。何で俺が女装して買い物なんかに出るんだよ。管理人のおっさんだって変な顔していたじゃないか。これ以上俺の恥を広げないでくれ…とは言っても、俺は寝ている事になっているので俺の声が届く筈もない。

お買い物の前に、ちょっと寄り道をしても良いよね♪明さんに雑誌を買ってきてもらってるけど、やっぱりお洋服やアクセサリーは実物を見て、触ってみたいよね?あたしは小洒落たブティックを覗いてみた。可愛い服がいっぱい並んでいる。コレが今流行りのデザインなのよね。

おいおい、こんな店に入るのかよ。俺の体にそんなピラピラした服を当てるんじゃない。何?試着するって?俺は服を手に試着室に入っていった。鏡の中で浩子が服を脱ぎ、下着姿になると、持ってきた服を着た。背中のファスナーを上げると、服は体にフィットした。彼女の女らしい体のラインが強調されている。

「いかがですか?」店の人が声を掛けてきた。カーテンを開ける。「お似合いですよ。この服は体型効果があって、お胸の寂しい方でもそれなりのボリュームに見せてくれます。」言われて胸元に視線を落とすと、最近は気にすることのなかった胸の膨らみが復活していた。手を当てると柔らかな感触が感じられた。

「このまま、着て行って良いですか?」「お買い上げですね。タグをお取りしますね。」会計を済ませると、着てきた服をお店の手提げ袋に入れさせてもらい、お店を出た。久しぶりなので、胸の揺れも新鮮に感じる。なんか、さっきより大きくなったんじゃないかしら?あたしはウキウキしながら買い物を済ませると、明さんの所に戻っていった。

想い_裏話(前)

あたしは明さんの為に朝ご飯を作っていた。形はどうあれ、同棲している女の子が家事をするのが当たり前だと思う。けれど、あたしは明さんと向かい合って食事をすることはできない。食卓に出来たての朝ご飯を並べると明さんのベッドに向かう。スカートを脱いでパジャマに着替える。「明さん。朝ですよ♪」そう言ってベッドに入り込む。
「あ~あっ」と俺はわざとらしく伸びをした。もう一度寝直すことなく、ベッドの上に起き上がる。パジャマを脱いでズボンに穿き替えた。面倒ではあるが、こうでもしないと俺は自己を保てない。そう、浩子として行動しているのは、他ならぬ俺自身なのだ。
浩子の意識と混ざり合っているため、浩子の希望を満足させようとすると、浩子がしたいと思った事を「俺」がやる事になるのだ。俺の為に料理したいと彼女が望んでも、結局は俺が自分で作っているのと同じになる。しかし、彼女は俺の為に自分自身で作っていると感じているのだ。
だから、少しでも「彼女が作っている」という感じを出す為に、俺は浩子に成り切る事にした。誰にも見せたくはないが、俺はスカートを穿き、自分の事を「あたし」と言う。体は男のままではあるので、そのままでは違和感が生じてしまう。俺は浩子としての記憶を前面に出し、自分が女であると刷り込むようにした。生まれた時からずっと女をしていた事になれば、スカートも「あたし」と言うのもおかしくはない。
浩子としての自分と、本来の俺自身を明確にする為に、浩子が起きている間の「俺」はベッドで寝ている事になっている。浩子がベッドに戻って初めて「俺」が目覚めるのだ。

今日は明さん、朝から具合が悪いみたい。せっかくお粥を作ったけど、いらないって言うから、あたしが食べちゃった。明さんは動けないけど、冷蔵庫の中は少ないので買い物に行かないといけない。いつもは明さんに頼んでいたけど、今日はあたしが行かなくちゃね♪久しぶりの外出なので、お化粧にも力が入った。

俺は今、何をしているのだろう?カーラーで毛先を丸めている?鏡に写っているのは俺の顔ではなかった。マスカラで睫毛が強調され、アイラインとの効果でパッチリと見開いているように見える。眉毛が愛らしく描かれ、チークが健康的な肌に見せている。ピンクの口紅が清楚な女の子を演出していた。

想い(後)

「ヒロコ、大丈夫?」女の子の声に目を開けた。しかし、何で俺をヒロコと呼ぶ?俺は…俺の名前は……浩子だった。声を掛けてくれたのは親友の美穂で、俺はグランドを走っている大谷さんを見にきていたのだ。俺は起き上がり、セーラー服のスカートに付いた枯れ芝を叩き落とした。
大谷さんは、まだ走っていた。彼の顔が眩しく輝く。俺は目を細めて彼を見ていた。…?…俺は彼の顔をもっと昔から知っている?確か中学の時に親父の都合で引っ越してきた筈だ。俺は生まれた時からこの街で、美穂とは幼稚園に上がる前から…って、これは浩子の記憶だ。俺が大谷さんの過去を知っているのは、俺が大谷明本人だからだ。

俺は浩子の記憶に捕らわれていたようだ。グランドで走っているのは俺ではない。それを見ている俺は女子高生ではない。隣にいる娘は俺の親友なんかではない…「浩子?」「何?美穂。」「どうしたのよ、ぼーっとしちゃって。」「ちょっと考え事。あたしって何なんだろうって。」「らしくないよ。浩子は恋する乙女なんでしょ。大谷君を見ているだけで幸せだって言ってたじゃない。」…再現される浩子の記憶。俺はセーラー服を着た女子高生として、彼女の記憶の中に取り込まれてしまっていた。
「見ているだけって、本当にそれで良いのかよ?」俺はそう言って足を踏み出した。それは浩子の記憶の再現でしかないのかも知れないが、俺はこの行動が俺の意思であると信じていた。俺はグランドに足を踏み入れた。「邪魔しちゃ駄目よ!」美穂が叫んでいる。俺は向こうから走ってきた俺自身に正対した。
あの時、俺は幻を見たのを思い出した。それはセーラー服の女の子だった。彼女は俺にしか見えなかった。俺の目の前に彼女が迫っていた。にっこりと笑っている。ぶつかる直前、俺は体を捻った。
俺の体は宙を飛んだ。彼女の体をすり抜け、俺は地面に叩き付けられた。足首に激痛が走った。それは、俺の選手生命が絶たれた一瞬でもあった。

「おじさん。ここは関係者以外立ち入り禁止なんだからね。」俺はようやく現実に引き戻された。「頑張れよ。」と声を掛け、学校を後にした。
しばらく歩くと、あの交差点に出た。あの日、浩子は俺を目にすることはなかった。浩子の記憶を辿れば即に判る。俺が足を痛めたその直前に、浩子はダンプカーに跳ねられていたのだった。浩子の俺に会いたいという強い想いだけが、彼女の意識を俺の元に飛ばせていたのだろう。また、その強い浩子の「想い」が、こうして俺に再び出会う奇跡を起こしたのだ。彼女の記憶を自分のことのように見てしまった俺は、彼女の強い想いがどれほどのものかを知ってしまっていた。
地蔵尊の前で手を合わせ黙祷する。俺の目の前に浩子がいた。(お、大谷さん。あたしと付き合っていただけませんか?)顔を紅潮させ、真剣な目で俺を見つめていた。その心の奥で断られたらどうしようと、ドキドキしているのが手に取るように解っていた。「良いよ。これからもヨロシク。」

想い(前)

いきなり現れたのは巨大なダンプカーの前面だった。

その瞬間、俺は「死んだ」と思った。しかし、裕長にそんな事を思い出していると言うことは、俺はまだ生きているらしい。目を開けると青空が見えた。背中にごつごつとした感触がある。俺は地面の上に寝ているのだろう。ゆっくりと上体を起こすと目の前にあの交差点があった。
しかし、そこで事故があったようには見えない。確かに、俺は何かにぶつかってここまで飛ばされたようだが、その「何か」が何なのかを知る手掛かりはありそうになかった。
夢でも見たのかと、立ち上がり、体に付いた泥を払った。俺は再び交差点に戻った。「?」と俺は足元に転がっているモノを見た。小さな地蔵尊だった。首に掛けられた袈裟には「交通安全」と記されていた。俺は地蔵尊を起こしてやった。過去にこの交差点で事故でもあったのだろう。俺は地蔵尊に手を合わせた。
(そうよ。その事故であたしは死んじゃったの)と女の子の声がした。実際に「音」として聞こえた訳ではない。彼女の声が俺の頭の中に直接響いていた。(あれは、あたしの記憶…ダンプカーに跳ねられて、あたしの体が無くなった日の記憶よ)俺には何がどうなっているのか、さっぱり解らなかった。(あなたは、あたしの記憶に引っ張られて、あたしと同じショックを体験したんだと思う)
何で俺が事故で死んだ女の子の感覚を追体験しなくちゃならないんだ?(多分、波長が合ったんだと思う)そんな事で変な体験をさせられるのは迷惑だな。俺はその場を立ち去ろうとした。(待ってよ、あたしを置いて何処に行くつもりなの?)そんなの俺の勝手だろ?俺は地蔵尊に背を向け、歩き出した。
(え?!)俺の頭の中で女の子が驚いている。(何で動けるの?)知るか?お前が勝手にひっ付いて来てるんだろ?(あぁ、歩けるって何年ぶりだろう?)うるさいな。ひっ付いて来るのは良いが少しは静かにしてくれないか?俺がそう思考すると、ようやく静かになった。

どうやら、俺は女の子の幽霊に取り憑かれてしまったらしい。一部を除いては生活に不自由はないし、その「一部」もこちらが気を張っていればどうにかなる程度のものだった。逆に気を緩めていると、いつの間にか俺は恥ずかしい行為をしてしまうのだ。幽霊の少女は憑依しているとは言っても、俺の体を勝手に動かすことはできない。
が、彼女は彼女の記憶を俺に見せつけることができた。その際、俺の記憶が一時的に混乱する。たとえば、スーパーで買い物をしている時に俺が買おうとしているリストを思い出しているつもりが、彼女の記憶と刷り変わっていたりする。気がつくと、女性の生理用品がカゴの中に入っていたりする。
(あの服可愛いなぁ)などと彼女が言っている時は要注意である。少しでも気を抜いていると、その服を着て鏡に写っている少女の姿がイメージされる。それだけなら良いのだが、その少女は俺自身なのだ。俺がその服を着てくるりと回っている。そして、鏡に向かって満足げに微笑んでいる。その姿が可愛らしいのだから始末に終えない。そして、気が付くと俺のクローゼットにまた一枚、女物の服が増えているのだ。

今日は朝から気分が優れなかった。(そろそろアノ日じゃないかしら?)などと言われても、それに反応する気力もなくなっていた。ナプキンを貼り付けたショーツが更に気分を憂鬱にさせる。さすがに女子トイレに入ろうとした時は慌てたが、小用だけなのに個室に向かっても何も思わなくなっていた。
気分転換に街を歩くことにした。自然と足は、昔通っていた学校に向かっていた。桜並木は四月には美しい花びらのトンネルを作っていた。その下を友達と喋りながら…って、何でセーラー服を着た娘と親しそうにしている図が浮かんでくるんだ?俺はそんなに親しい女友達はいなかった。第一、うちの学校はブレザーだった。
俺の目の前に教会のような校舎があった。懐かしさに目が潤む。が、その門柱にある学校名には「女子」の2文字が冠されていた。俺の記憶が彼女のものと混ざりあってしまっているようだ。俺は自分の通った高校を思い出した。
俺の高校は俺の記憶通りにあった。グランドに向かう。俺はこのトラックを必死になって走りまわっていたのだ。今も、あの時の俺と同じように走っている男子がいた。そいつに、昔の俺の姿が重なる。
ドクリ。と胸が鳴っていた。あの時も俺はここから、一生懸命に走っている男の子を見つめていたのだ。とうとう告白できなかったけど、見ているだけで幸せだった…って、何で俺が男に告白しなくちゃならないんだ。また、彼女の記憶が入り込んでいた。

アリバイ(2)

結局、僕はワンピースを着させられ、二人で外に出た。お定まりのデートコースのそこかしこで写真を採った。二人でフレームに入ることもあったが、かなりの枚数を僕だけで写していた。「これだと、場所がはっきりして証拠になる。」と言っていたが、本当だろうか?
夕食が終わった後「最後にもう一箇所付き合ってもらえないか?」と言われた。そこはラブホテルだった。「どうも誰かにつけられているみたいなんだ。」と言う。僕はミコに抱かれるようにしてホテルに入っていった。「へ~、中はこうなっているんだ。」初めて入るラブホテルの中を、僕は物珍しそうに眺めていた。「ジュースでも飲むかい?」ミコは馴れた手つきで冷蔵庫からジュースのビンを取り出すとグラスに注いでいった。
しばらくは二人並んでベッドに座り、ジュースを飲みながら今日のデート?について話ていた。「少し暑くない?エアコンの温度、見てみようか?」とサイドテーブルに伸ばした僕の手をミコが掴んだ。「ミコ♪」と彼女が僕をそう呼び、僕はそのままベッドに押し倒されてしまった。彼女…いや、彼の唇が僕の口を塞いだ。「俺はお前が好きだ。」そう言って僕を抱き締めると、再び口を塞ぐと唇の間から舌を割り込ませてきた。
ジュースにお酒が混ぜられていたのだろうか、僕の頭は朦朧としていた。いつの間にか服を脱がされていた。ブラジャーとショーツだけの僕にトランクス一枚の彼がのし掛かってきた。胸が揉まれると快感が湧いてくる。性感帯を刺激され、僕は悶え、女の子のように喘いでいた。「ミコ♪」彼の手が僕の股間を撫であげた。ビクリと反応するものがあった。「濡れてるね。」僕の愛液?「ミコ。いいね。」僕は頷いていた。彼の手がショーツを下ろしてゆく。僕の股間が彼の前に晒された。恥ずかしさに隠そうと伸ばした手が掴まれた。「いくよ。」彼の体が僕の股間に割り込んできた。
快感だけしかなかった。気がつくと二人とも全裸でベッドに寝ていた。僕は彼に抱かれたまま、寄り添うようにして寝ていた。

僕は時々ミコになった。ミコの部屋で、暫くの間ミコとして生活するのだ。ベランダで布団を干していると「ミコちゃん。最近、綺麗になったわね。」と隣のオバサンに声を掛けられた。昼近くに本物のミコが帰ってきても、僕(ミコ)の旦那さんが帰ってきたとしか認識されていないのだろうか?僕は彼の為の夕食を準備する。彼はビールを片手にTVを見ていた。ピピッと風呂場から音がした。「お風呂沸きましたよ。」と声を掛ける。「ミコも一緒に入らないか?」と彼。「まだ夕食の支度が終わっていませんから。」と言うと、「じゃあ、また今度な♪」と僕の尻を撫でてから風呂に向かった。

食事の片付けが終わった。彼はまたビールを片手にTVを見ている。「じゃあ、お風呂入ってきますね。」と僕は風呂場に向かった。エプロンを外し、スカートを脱いだ。ブラウスのボタンを外すとブラジャーに包まれた「胸」が現れる。僕がミコになるために飲み始めたサプリで形良く膨らんできている。全裸の僕の姿を鏡に写しても、もう男には見えなくなっていた。ペニスは陰毛に隠れ、勃起することもなくなっていた。性的な刺激を受けて勃起するのは胸の先端にある乳首の方だった。でも、変わり果てた自分の姿を見ても後悔することはない。僕はミコとして彼に愛されているのだから。
今夜の彼の愛撫を想像しただけで、僕の太股の内側を愛液が落ちてゆくのだった。

アリバイ(1)

ミコは男みたいな女の子だった。
彼女とはコンビニのバイトで出会った。流石に制服はスカートなのだが、言動は男子そのものだった。私服に着替えてしまうと、彼女は声さえ聞かなければ誰が見ても男の子にしか見えない。聞くところによると、声優のトレーニングで男の子の声を出せるように練習しているそうだ。
僕はと言えば、ひ弱でガリガリ、身長も平均男性より低い。どこに行ってもなかなか男扱いしてもらえない。かと言って彼女みたいに反対の性別である女の子に見られる、といったことは決してない。要は、ガキ扱いしかしてもらえないのだ。
僕がミコに惹かれたのは、同年にもかかわらず彼女が一人前として自立しているところにあった。バイト仲間という立場から、一歩踏み込んで「友達」になれたのは、僕とミコがお互いを異性として認識していない所がにあったのかもしれない。

ある日、ミコが自分が性同一性障害だと思うと告白した。「何かの病気なの?全然悪いようには見えないけど。」何も知らない僕はそんな事を口走っていた。「心の病気の一種だよ。でも、直す為には外科的な手術が必要なんだ。お金が掛かる筈だから今のうちからバイトをして、お金を貯めておくんだ。」「病気ならご両親が援助してくれるんじゃないの?」「親達には迷惑掛けたくないんだ。だから、手術も未成年のうちはできないんだ。」
そんな話をした数日後「お願いがあるんだ。」とミコから話し掛けられた。「やはり、もっと割りの良いバイトがしたいんだ。けれど、それには男でないといけないんだ。君の名前を貸してくれないか?」僕は軽い気持ちで了解した。僕は履歴書を書いて渡すと、ミコはそれを新しい履歴書に写していった。ミコが僕の名前を書いて、僕の名前の印鑑を押した。
ミコはコンビニのバイトを辞めた。久しぶりに会ったミコは更に男らしさを増していた。とにかく、声が違った。アニメで使われる青年の声ではあったが、男の声には違いなかった。「いつも、困った時に頼ってしまうな。」ミコの現在の問題は客や従業員の女達にしつこく付きまとわれてしまうことだった。苦肉の策でミコという女の子と同棲している。と言ってしまった。住んでいる所が突き止められ、その表札がミコの名前だったので一旦は収まったが、今度は二人揃った姿が目撃されていないという事実が浮上してきた。「つまり、ミコと僕が一緒にいる証拠を作りたいんだね。」僕は気安く了承していた。
僕はミコの部屋に連れて来られた。彼女の部屋はやはり、女の子の部屋には見えなかった。綺麗に整頓されている。ポスターなどの装飾がないので、無機質な感じがする。クローゼットを開けると男物の服の中に一枚だけワンピースが掛けられていた。「じゃあ、これに着替えてくれないか?」とそのワンピースが差し出された。「僕が着るの?!」「俺とミコが揃ってないとな。店での俺はミコではないから、君にミコを演ってもらう必要があるんだ。大丈夫、サイズは問題ないよ。化粧すれば判りはしない。」

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