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2008年3月11日 (火)

紅い雨

血のように紅い雨が降っていた。

俺は傘も差さずに街の中を歩いていた。「お姉ちゃん。良いの?雨に濡れると大変な事になるのよ。」小さな女の子が声を掛けてきた。「ありがとう。あたしは大丈夫だから、心配しなくても良いのよ。」と応えてやった。そう、先日の雨の日に俺はその「大変な事」に遭遇してしまったのだ。
「変身雨」とも呼ばれる特殊な放射能を帯びた雨は、宝くじの一等に当たるよりも低い確率ではあったが人を「変身」させるのだった。そして、俺は一夜にして若い女に変身していたのだった。

最初は雨に打たれて風邪をひいたのかと思っていた。妙に体が暑かったので、市販の風邪薬を飲み、風呂にも入らずにベッドに入った。薬が効いたのか、ぐっすりと眠った翌朝には清々しい目覚めが訪れていた。
「う~ん♪」と伸びをした時、いくつかの違和感を感じた。先ずは声が違う?俺の声ってもっと低かった筈だ。次に胸の辺りが圧されている。胸の上に何か乗っている?上半身を起こすと、それは重力に従って落ちようとするが、俺の胸に貼り付いているようで、胸全体が引っ張られたように感じた。パジャマのボタンを外すと、俺の胸には女の乳房がくっついていた。もしやと、股間に手を伸ばした。「な、ない…」俺の息子は跡形もなく消え失せていた。

とにかく朝なので起きるしかない。ベッドを降り、洗面所で変わり果てた自分の顔に対面した。ようやく、その時点で俺が若い女になっている事を把握した。俺自身の面影は残っているものの、それはどこから見ても女の顔だった。髪も長く伸びていた。全体的には背が縮み、体重も半分くらいになったと思えるくらい手足が細くなっている。胸には先ほどのバストがあり、くびれた腰下には脂肪の乗ったヒップが続いていた。
しかし、驚いてばかりもいられない。今日も仕事は待っている。課長の携帯に電話したら、ゆっくりで構わないし服も自由で良いから兎に角出てこい。と言われた。起きた時間は毎日と大差ないので遅れることもないなと、支度を始めた。髭を剃る必要がないのは楽だ。本物の女性なら化粧に時間を取られるのだろう。クローゼットから背広を取り出し、そこで俺の手が止まった。変身した俺は今迄より背が低くなっていた。このまま着てもぶかぶかで見られたものではない。だから課長は服は何でも良いと言ってくれたのだろうか?
ジーンズのズボンの裾を折り上げ、ぶかぶかのウエストはベルトで絞めあげた。上はTシャツの上にワークシャツを着た。IDカードと定期、財布など必要なものをディバックに詰めた。ぶかぶかのスニーカに靴下で詰め物をして、ようやく外に出られた時にはいつもより1時間以上も遅れてしまっていた。

会社には生体認証装置があり、外見の変わってしまった俺でも本人と認めてくれた。課長に連れられて応接室に入ると同じ課の女の子が控えていた。「後はよろしく頼む。」と課長は俺を女の子に託すと逃げるように応接室を出ていった。
彼女はメジャーで俺の体を計ると、内線電話でその数値を報告した。「つぎはお化粧かな?」と俺の抗議には耳を貸さず、テーブルの上に化粧道具を広げていった。
コンコンとドアをノックする音がした。仕上がり具合を確認していた彼女は一旦手を止め、ドアの外に出た。再びドアが開き、彼女が戻ってきた時には紙袋を両手に抱えていた。小さな紙袋が渡された。「これに穿き替えてね。」中には女物の下着が入っていた。「体に合った下着を着けることは大切な事なのよ。」ブラジャーのホックは留めてもらい、次に出されたブラウスのボタンが左右逆なのに四苦八苦した。
鏡の前に立たされた俺は、うちの会社の女子制服を着たOLにしか見えなかった。胸には俺の名前の入った名札が付けられていた。「これは帰りの服だからね。」と大きな紙袋が渡された。そのまま応接室を出ると、女子更衣室に連れてこられた。既に俺の名前のロッカーが用意されていた。紙袋の中身をロッカーに移し終えると、「帰りは一緒に買い物に行きましょう。課長から軍資金が出てるし、買わなきゃならないものが一杯あるでしょう?」
こうして、俺の女子社員の一日が始まった。とは言っても仕事の中身は変わらない。
胸の膨らみも慣れてしまえば気にならない。逆に男性社員と体が触れるのが気になってきた。特に課長は事ある度に俺の所に来ては肩に手を掛ける。「課長、彼女はもう女の子ですから、度が過ぎるとセクハラで報告されますよ。」たまりかねたのか女子社員の一人が課長を諭すまで、それがセクハラ行為だとは気づかなかった。

女としての生活にも慣れた頃、社内での飲み会があった。俺は男の体のつもりで、いつものペースで飲んでいた。しかし、体の大きさからして許容量が違っている。気が付くと意識が朦朧としていた。「大丈夫かい?」と課長が声を掛けてくれたのは覚えていた。

部屋の中に淫陶なオンナの喘ぎがあった。AVを点けたまま、寝てしまったかとも思ったが、この部屋は俺の部屋ではない。それに、俺独りではないようだ。俺の上に伸し掛かっている奴がいる。そいつの腰が振られる度に俺の腹の中がかき回される。「ああん♪」と媚声を上げていたのは俺自身だった。「おっ、んんっ!」奴はうめくと、俺の中に精液をぶちまけていた。と同時に、俺の体が一気に熱くなる。「あん、ああ~ん♪」と俺も嬌声を上げ、快感の津波に押し流されていた。

俺はホテルのベッドの中にいた。ジンジンと痛みを発する股間に手を伸ばすと精液と愛液の名残が指に触れた。部屋には数枚の紙幣と共に俺は独り残されていた。シャワーを浴び何事もなかったかのようにホテルを出た。
数日後、俺は生理になった。初めての経験に驚き、慌てると共に、俺は自分が女になった事を実感した。そして、もし生理が来なかったら妊娠していたと思うと背筋に冷たいものが落ちて行くのを感じた。

俺は外見上は若い女である。外見に合わせて自分の事を「わたし」と言い、女らしい言葉遣いも板に付いてきた。しかし、俺は男に戻りたかった。
紅い雨が降ると、俺は傘を差さずに外に飛び出すのだ。「変身雨」で変身した者が再度変身した事例が皆無である事を知っていても尚…

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コメント

なにげにHでお気に入りになりました。
また、「特殊な放射能」は新しいタイプだと思いました。
これからも頑張ってください。
(これの続きを色々考えていますが、文才が無いから途中で考えがまとまらないです)

子供の頃、放射能を帯びた雨に打たれるとハゲになると言われていました。放射能で超能力者になったヒーローも数多くいました。「新しいタイプ」というよりは「古い引き出しを開けた」ような感覚です。

だからと言って「すーぱーアスパラガス」みたいに「変身」した女の子達が5人くらい集まって悪者を退治するような話しには持っていきたくないですね。

たとえば、「人魚」に変身してしまった悲哀などはどうでしょうか?もっとダークにするなら「石化」というのもあります。ライトタッチでいくなら「猫娘」みたいな「獣化」も良いですね。

だから、5人集めても話しにならないって…ブルー・マーメイド、ホワイト・アラバスタ、ブラック・キャット、グリーン・ファーン、ピンク・フィメール…

昔の漫画「ワースト」を思い出しました。
この「変身雨」って、どんな変身もするんでしょうか?
だと・・・東京はやばいかも?ゴジラが何匹も現れて・・・
初代、モスゴジ、キンゴジ、平成ゴジラ・・・・なんてね。

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