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2008年1月20日 (日)

一人旅

「良かったらアルバイトしないか?」運転席に座った若い男が僕に提案してきた。

大学生になって初めての夏休みに「気ままな一人旅」を計画した。最初は各駅停車で行けるとこまで行って、それから先は気分次第と、意気揚々と出発つした。が、それもすぐ様破綻する事になった。都会を離れると、駅近くに泊まれる所がない。仕方なく、駅舎のベンチで夜を明かすことになったが、ある朝目を覚ますとベンチの下に置いてあった荷物がなくなっていた。着替えとかはどうでも良いが現金が失われてはどうにもならない。交番とかに泣きつけば何とかなるが、旅はそこで打ち切らざるを得ない。
このまま旅を継続するとなると、一般の交通機関は使用できない。徒歩か、ヒッチハイクという事になる。金がない処で体力を使いたくはなかった。腹が減ってもそれを満たす事が困難だからだ。僕は駅舎を出ると朝日が上り始めた道を歩き出した。
駅前の地図で確認した国道に辿り着いた。が、まだ早朝の為かなかなか車が通らない。ヒッチハイクなど考えなければ良かったと思ったその時、僕の前に白いスポーツカーが止まった。「どっちに行くんだい?」運転席から声を掛けてきたのは感じの良い青年だった。
僕がこれまでのいきさつを話すと、彼はアルバイトの提案をしてくれた。「この先、旅を続けるなら少しでも蓄えはあった方が良いんじゃないか?長くは引き留めないよ。まずは一週間やってみないか?」「って、あなたが雇ってくれるんですか?」「これでも青年実業家のはしくれでね。人を雇ったりするのも融通が利くのさ。どうだい?住み込みで三食付き。」「お願いします。」僕は食い物に釣られOKと答えていた。

小さな街では、この高さでもかなり高いビルになるのだろう。僕はその最上階のオフィスに通された。「ネットを使っての商売なんでオフィスを構える必要もないんだが、公私を分ける為に置いているんだ。」と説明されたが、どこも生活臭に溢れていた。風呂もキッチンもあり、奥にはベッドルームもあった。「君には秘書として働いてもらう。とは言ってもスケジュール管理なんかはPCがやってくれるから、身の回りの雑用をお願いする事になる。寝る所は奥のベッドを使ってくれ。前の人の服が残っているから気にせずに使ってくれ。背丈も同じ位だったからサイズは合う筈だよ。」とクローゼットからシャツとズボンを取り出した。「下着なんかは脱衣所の戸棚に入ってるから、食事の前にシャワーを浴びてきなさい。」
脱衣所には洗濯機があったので着ていた服を全て放り込んだ。久しぶりの風呂であったが、彼を待たせているのでのんびりとしている訳にはいかなかった。シャワーでざっと汗を流しただけで切り上げ、バスタオルで体を拭きながら脱衣所に戻った。洗濯機が元気良く回っているのを見ながら、戸棚の中から下着を取り出した。ランニングシャツのようだが、ちょっと変わったデザインのトップがあった。ボトムは前開きのないボクサーパンツだ。ちょっと窮屈目だが問題はない。問題は彼に手渡されたシャツを着ようとして発生した。僕はドア越しに訴えた。「すみません。これ、ボタンが左右逆なんですけど?」
「どうした?入っても良いかい?」と落ち着いた彼の声が返ってきた。僕は慌ててズボンを履き、ドアを開けた。「慣れていないから填め難いだろう。やってあげるから貸してごらん。」て僕の手から引き取っていった。だいたいの想像はついていたが聞かずにはいられなかった。「なんで左右逆なんですか?」「それは、前の秘書が女性だったからね。女物の服は袷が逆だよね。」「他にはないんですか?」「ここにある中では一番男っぽいものを選んだつもりだよ。それより、食事の予約をしてあるから、さっさと支度を済ましてしまおう。」
結局僕はその上に女物のジャケットをはおり、かかとの少し高い革靴を履かされた。「近くだから」と徒歩で行く事になった。女装ではないと自分に言い聞かせるが、今身に付けているもの全てが女物であることに違いはない。街を歩けば人目に触れる。僕が女装者と見られているのではないかとビクビクしていた。「その靴は歩き辛かったかな?」「な、なんとか大丈夫です。」と虚勢を張る。「帰ったら色々な靴を出して慣れておいた方が良いね。」「仕事中もこの靴を履くんですか?」「靴もそうだが服にも慣れておいた方が良い。仕事中は制服を着て欲しいがどんな服でも良いよ。オフィスの中は他に見る人もいないからね。ただし、裸は困るよ。」

「お早う。」寝室のドアがノックされた。僕は慌てて起き上がった。結局寝間着はひらひらのネグリジェしかなかったので裸で寝ていたのだ。着替えをどいしようと考えて、自分の服が洗濯機に入れっぱなしであった事に気付いた。それはまだ生乾きで着られそうにない。昨日食事に着ていた服はさっさとクリーニングに出されてしまっていた。「食事にしよう。誰も見ていないから服は適当で良いよ。」と急かされる。手にしたのはピンク色のパンティだった。後で替えれば良いと、脚を通した。トップは肩が紐状になっていて下端にはレース、胸元にはリボンがあしらわれたものだった。ブラジャーも置いてあったが無視した。寝室に戻り、クローゼットの一番手前にあった服を取り出した。ワンピースだった。スカートの類しかない事は彼も承知している筈、笑われる事はないだろう。僕はボタンが前に付いていることに若干の感謝をしながら填めていった。
サンダルを履いてオフィスに入ると会議卓の上に皿とカップが並べられていた。皿の上には焼き立てのトーストにハムエッグが添えられていた。「おはようございます。」と彼に挨拶した。彼はコーヒーを注ぐ手を止めこちらを見た。「あぁ、お早う。夕べは眠れたかな?」僕の格好を見ても平然としていた。朝食が終わると僕はエプロンを着けて片付ける事になった。彼は机について仕事を始めていた。
「おーい。」ベッドを片付けているとオフィスから声が掛かった。「はい。」と手を止め彼の下に向かう。「申し訳ないがコンビニでこれを買ってきてくれないか?」
大至急と付け加えられる。「着替えたら即に行きます。」と言うと「そのままで大丈夫だから。それより、こっちは一刻を争うんだ。君にその損金が負担できると思っているのかい?」
現在、一文無しの僕にとってお金に絡む話しは決定的なものがあった。女装という羞恥心をねじ伏せるしかなかった。メモを手にコンビニに向かった。何故これが一刻を争うものかは判らなかったが、カゴに放り込みレジに差し出した。「いらっしゃいませ。」と店の叔父さんが僕を一瞥した。カゴの中の物を一つづつ取り出していく。僕は女装がばれないように声を出さないことにした。合計金額が告げられる。彼から渡された紙幣を渡し、お釣りをもらった。「あんた、若旦那ん所の新しい秘書さんだろ?もう少し愛想良くした方が良いぞ。折角の美人が台無しになる。」
「余計なお世話です!」と出かかった言葉を飲み込み、僕は一礼しただけでレジ袋を受けとるとオフィスに戻っていった。「ありがとう。これでなんとかなりそうだ。」と彼は買ってきたものも確かめずにそう言った。「しばらくは何もないから、着替えるのも良いし好きにしていいよ。」
僕は寝室に戻り、クローゼットの中を確かめた。が、結局何を着ても同じである事が判っただけだった。改めて鏡に自分の姿を写してみた。コンビニの店員が言った「美人」は商売句としても、喋らなければ女に見えない事もない。
ふと見ると鏡の前に化粧品が並べられていた。これで化粧をしたらどうなるのだろう?僕の手は口紅のスティックを取り上げていた。キャップが外される。深紅の芯が頭を出していた。その先端を唇に当ててみた…  唇が朱色に染まった。僕の顔は皿に女らしくなっていた。
「そろそろ食事に行かないか?」と彼の声が掛かった。「ちょっと待って下さい。」と口紅を拭おうとすると、「良いんじゃないか?そのままで。」と背後に立っていた彼が鏡越しに僕の顔を覗いていた。「見ないで下さい!」「大丈夫。おかしくはないよ。さぁ、行こう。」と、そのまま外に連れ出されてしまった。
「何が良い?」彼はさかんに何か言わせようとしていた。僕が何か喋れば即に男であることかばれてしまうと判っていて意地悪しているようだ。メニューを指して注文したが「ライスにしますか?パンにしますか?」と聞かれてしまった。僕は相当困惑した表情をしていたのだろう。「ライスで良いよね?」と彼が助け船を出してくれた。僕がYESと首を縦に振ると「じゃあ彼女にもライスで。」とその場を収めてくれた。

「これを付けてみるかい?」と蝶の形のアクセサリーが差し出された。「これを首に付けると微弱な電磁波が声帯に緊張を与え、声が高くなるんだ。」僕はそれを喉に当ててみた。「こんな感じですか?」恐る恐る出してみた声は、確かに本来の僕の声よりは高くなっていたが、それだけでは女の声には聞こえなかった。「声は声帯だけで出すものじゃないんだ。口の大きさや開き方、舌の使い方など様々な要因が複雑に絡み合っているんだ。自分の声にするには、もう少し練習が必要だね。」彼は装置をリボンで僕の首に固定してくれた。
「ちょっと寄りたい所があるんだが良いかな?」レストランを出ると彼がそう言った。僕は新しく手に入れた声で「はい」と答えていた。連れて来られたのは美容院だった。「彼女をもう少しお洒落させてあげてくれないか?」そう店員に話している。ここまで来ては逃げようもなかった。「オフィスに戻っている。今日はもう用事はないから、ゆっくりしていきなさい。」結局、僕はエステのフルコースを体験することになった。磨きあげられた僕はどこから見ても女の子だった。

翌朝、僕は美容院で教えられた通りにメイクをしていた。首から上はもう、すっかり女の子になっていた。服を選ぶのも楽しくなってくる。唯一の難点は胸だった。男には存在しない胸の膨らみを、ブラジャーに詰め物をして再現してみたが、どうしても不自然さが拭いきれない。何より、胸元の開いた服が切れない事で選択枝が大きく狭まってしまう。僕は胸元に飾りのあるブラウスでごまかす事にした。
「今日はタイトスカートか?キャリアウーマンらしくて良いね♪」褒められ、僕は気分が良くなった。「お茶を淹れますね。」とキッチンに向かおうとすると、「これから出掛けなければならないんだ。」と制された。「君にも来てもらいたいんだが、出掛ける前にこれを付けてもらえないだろうか?」と箱が手渡された。開けてみると、それは胸に貼り付けるタイプのブラジャーだった。それも、僕が使うことを前提としているかのように、カップのほとんどが専用のパッドで埋められていた。「少し待ってもらえますか?」僕はそれを手に寝室に入った。
ベストとブラウスを脱ぎ、今付けているブラジャーを外した。バラけるように詰め物が床に落ちた。説明書を読みながら新しいブラを手にした。ずっしりと重みがあった。ホックを外して左右のパーツに分け、専用の接着剤を裏側に塗り込む。胸の上に貼り付けると自然な形のバストが出来上がった。もう片方も貼り付ける。ずっしりとした重みは女の証とでも言うのだろうか?時計を見て所定の時間が経過したことを確認する。ブラのホックを止めると…おぉ、更に胸が形良く突き出してくる。僕はブラウスを元に戻すと、少し化粧を直してオフィスに戻った。
「キャンッ!」彼に胸を触られ、僕は女の子のように叫んでいた。「悪い、悪い。君がすごく綺麗でセクシーになったんで、我を忘れてしまったよ。」「セ、セクシーですか?」「そうだよ。今にもベッドに押し倒したいくらいだ。」「何言ってるんですか?僕は男ですよ。」彼はその答えをうやむやにしたまま、僕を車に乗せ発進した。

車は街を離れ山の方に向かっていった。緑に囲まれた小高い丘の上にはお城のようなホテルがあった。駐車場には高級そうな車が並んでいた。エントランスに着くとボーイがドアを開けてくれた。「ありがとう♪」差し出された手を取って車を降りる。僕はできるだけ愛想良く振る舞ってみた。案内された控え室にはお姫様が着るようなドレスが飾られていた。彼はその脇にあったタキシードを手に取ると「じゃあ後で。」と隣室に消えていった。となると、このドレスを僕が着るということ?
「失礼します。」と係りの女の人達が入ってきた。「お着替えのお手伝いをさせていただきます。」と、てきぱきと支度を始めていった。僕一人では到底着る事などできなかっただろう。一旦、下着姿にされると、コルセットを始め様々なパーツが僕の体に取り付けられていった。そしてドレスが被せられる。
コルセットで絞め上げられたくびれが、その下につながるスカートの広がりをより優雅に見せている。彼にもらったブラジャーが作り上げた胸の谷間がレースの飾りに縁取られ、官能的に強調される。僕は王子様を待つお姫様になっていた。

ホールには沢山の人が集まっていた。そのだれもが上流階級の人々だった。そんな中に僕は迷い込んでいた。逃げ出したい気持ちを、彼とつないだ手が引き留めてくれていた。雰囲気に呑まれ、僕は何をしていたのか記憶できていなかった。
「お疲れ様。」彼のキスでようやく自分を取り戻した。僕達は部屋の中で二人きりになっていた。とは言っても、いつものオフィスではない。「ここは?」「ホテルの部屋だよ。今日はここに泊まってゆくんだ。」「ここに?」僕の目にはキングサイズのベッドが写っていた。「一緒に… 良いだろう?」
僕はどう返事をしたら良いか解らなかった。彼の手がブラウスのボタンを一つ一つ外してゆく。心臓が激しく脈打っていた。スカートのジッパーが下ろされ、ホックが外された。スカートが床に落ちた。すぐにブラウスも後を追う。手を引かれ、下着姿のままベッドに横たえられた。
彼の唇が僕の口を塞ぐ。僕は彼の舌を受け入れていた。パチりと胸元のホックが外された。彼の手がブラジャーを剥がしてゆく。解放されたバストの先端で乳首が摘まれた。痛みではなく、快感が広がってゆく。彼の唇は僕の口を離れ、喉を這い降りるともう一方の乳首に到達した。彼の口の中に僕の乳首が含まれていた。「あ、あぁん♪」乳首を吸われると、僕の喉からオンナの喘ぎ声が漏れていった。
彼の手がショーツの上から僕の股間を撫でていた。その奥が熱く潤み始めていた。彼の手がショーツの縁に掛かると、僕は腰を浮かして彼がそれを剥ぎ取るのを手伝った。彼の指が直に股間に触れた。割れ目の中に侵入してくる。クチュリと愛液が淫碑な音を発てた。僕の股間が疼いていた。
「いくよ。」彼が僕の上に覆い被さっていた。脚が抱えられ、大きく股間が開かれていた。ゆっくりと彼が侵入してくる。「あぁ、あぁ…」言葉にはならない。痛みはなかった。僕の肉体が満たされてゆく満足感に支配される。僕の内で彼が動いていた。

僕は快感に失神していたようだ。ベッドの隣には彼が眠っていた。結合は解かれていたが、僕の股間は今だ彼の存在を覚えていた。僕はベッドを抜け出してバスルームに向かった。股間から彼の名残りが伝降りてきた。
僕は鏡に全身を写してみた。僕の肉体は完全に女の子のものになっていた。胸に貼り付けた筈のパットは僕の肉体の一部と化していた。コルセットで締め付けられたままの形で腰のくびれが残っていた。彼を受け入れた股間の穴は新しく穿たれたものであった。そして、僕のペニスはどこかに消えてしまっていた。僕はその姿に当惑するどころか、満足げに笑みを浮かべていた。

「お早うございます。」僕はオフィスの会議机に朝食を並べると、寝室に彼を起こしに行った。ホテルのように広くはないが、抱き合って眠るには十分な広さがあった。「お早う。」と彼も起き上がる。彼は全裸だった。彼の股間をまともに見てしまった僕は「キャッ」と叫んで顔を赤く染めていた。
アルバイトの一週間はとうに過ぎていた。季節はもうすぐ冬になろうとしている。「大学に戻らなくて良いのか?」と彼は言ってくれるが、この姿で戻れる訳もない。「今はこの子を産んで、育てることが大事でしょう?」
僕は胎児の宿るお腹を摩りながらそう答えていた。

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コメント

マイフェアレディTS版ですね。
こんなバイトは・・・・・・・・やってみたいかも?
でも、容姿に自信がないし^^;

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