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2008年1月20日 (日)

再会

晶は振り返ると僕に言った。
「じゃあね♪」それは彼の最後の別れ言葉だった。僕は親友の目に涙が浮かんでいた事に気付くことはなかった。

僕は大学に入って二年目の春を迎えようとしていた。長らく空いていたアパートの隣の部屋に引っ越し業者が入っていた。騒がしさから避難するようにパチンコ屋に出かけて帰ってくると、僕の部屋の前に女の子が立っていた。「今日、隣に越してきた宮園晶です。」と手を伸ばしてきた。「初めまして。」と差し出された手を取ろうとすると、彼女の手はするりと逃げていった。
「初めてじゃないよ。」と言われてもこんな可愛いコなら忘れるなんてあり得ない。「でもこの格好じゃ大親友でも無理かな?」
あれっ?彼女の今の言葉、何か引っかかるものがあった。僕は重大なことを見逃しているみたいだ。「でも、この顔に見覚えがないとは言わせないぞ。」確かに彼女の顔は記憶の底に存在した。宮園さん、宮園さん、と記憶のドブさらいが始まった。
宮園さん、宮園晶、晶… 「晶?!」たった一つ一致した顔と名前があった。「ようやく思い出した?親友の顔は忘れないでよね。」「だ、だって、お前、女…」
「そうなのよね。あたし、女になっちゃったのよね。実際はもともと女だったんだけど、生まれた時におちんちんがあったんで男の子として育てられたって話なのよ。」晶を僕の部屋に招き入れると、晶はこれまでのいきさつを話してくれた。
「手術やカウンセリングなんかで1年遅れたけど、こうやってお前と同じ大学に入る事ができたって訳。女になると同時に女子校に入れられちゃったの。そこは全寮性でめったに外にでられなかったし、実家に帰る以外はグループて行動しないといけないの。お前を含め男と会うなんて一切許されないのよ。だから、学校を卒業するまで会えないのなら、大学くらいはお前と一緒にいたいと受験勉強をがんばったんだ。そんなんで、お前に会うのがここまで延びちゃったと言うわけなの。」
僕は一生懸命に説明してくれる晶に見とれていた。晶には悪いが晶の説明はほとんど聞いていなかったようにも思えた。

「ねえ、再会を祝してパーティしない?」晶の突然の提案に僕はすぐに反応する事ができなかった。「パーティって言ってもそんな大げさなものじゃないわよ。引っ越したばかりであたしの部屋がまだ片づいていないんで料理できないから、ついでにお前と食事しようってだけだよ。」「ぼ、僕は構わないけど。」「じゃあエプロン取ってくるわね。」「って、ここで作る気か?それに、料理できるのか?」「当然、親の脛を齧っているうちは節約しなくちゃ。それに、何年あたしが女の子してると思ってるの?家に帰るたんびに母さんに仕込まれちゃったわ。」しかし、僕の部屋の冷蔵庫の中には食材と言える物など入ったためしがない。「じゃあ、その前に買い物ね♪」と晶は僕の腕を引いて立ち上がらせた。

傍目には僕達はどう写っているのだろう?手をつないだ若い男女はどこから見ても恋人同士ではないか?晶はどう思っているかは知らないが、僕はこの状況が嫌ではないと認識していた。
晶はコンビニではなく、その先のスーパーに入っていった。僕はカゴを手に荷物持ちに徹することにした。あれこれと商品を吟味している晶の姿はいっぱしの主婦の雰囲気があった。「これは?」最後に缶ビールが放り込まれた。「お祝いだもの。良いんじゃない?」

晶の料理は美味かった。「良い奥さんになれるね。」などと僕はバカな事を口走っていた。呑み馴れないビールに酔っているのだろうか?てきぱきと後片付けを終えた晶が戻ってきた。エプロンを外す仕草が色っぽい。ビールの缶を手に僕の隣に腰を下ろした。
「やっと会えた。」晶が呟くように吐いた。「お前が変わっていなくて良かった。」「晶に比べればな。これでも少しは逞しくなったんだぞ。」「そういう無神経な所が進歩がないって言うか…。それじぁ、彼女の一人も持った事ないでしょう?」「そ、それは言うな。」「ねぇ、あたしが彼女になってあげようか?」「あ、晶?酔っぱらっているのか?」「素面でも同じよ。あたしのコト嫌い?」「嫌いな訳あるか。」「じゃあキスして♪」
晶が僕に迫ってくる。僕は必死で晶が親友であると自分に言い聞かせた。晶の濡れた唇が吸い付いてきた。胸の間で晶の柔らかな胸の膨らみが押し潰される。僕の理性の糸はぷっつりと途絶えていた。

「お早う、ダーリン♪」晶の声に目覚めた。僕は裸で寝ていたことに気付きはっとした。「初めてはお前って、ずっと思っていたんだ。」晶の手が僕のぺニスを優しく握り締めた。「僕、で良いの?」「あなたしかいないわ。愛してる♪」
彼女は唇で僕の答えを封じ込めた。僕は心の中でもう一度繰り返した。
(僕もだよ♪)

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コメント

親友との再会。それは春の訪れ?
う~ん、コレだけの美人だとありかな?

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