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2007年12月20日 (木)

霊媒師

朦朧とした意識の俺は、スナックの隅のテーブルに正態もなく俯っていた。
ホステスだろうか、若い女達の喋る声が聞こえた。パタリとドアの開く音と共に水の流れる音がする。確か、俺の席の隣はトイレだった。「よぉ、意識はあるか?」声を掛けてきた男は、このスナックに俺を誘ってくれた同僚の桐木だった。俺は片手を上げるだけで返事に代えた。
「こいつがこんなに酒に弱いとは思わなかったよ。なぁ、アレやってくれないか?」と女の子に言うと、「え~、もう?」と厭そうな答えが返ってきた。「チップを弾むからさぁ。」と桐木、「しょうがないわね。」と女が立ち上がった。女の気配が近付いてくる。「じゃあやるわね。」と女が俺の隣に腰を降ろした。モゴモゴと彼女が呪文を唱えると、俺は意識を失っていた。

「おい、三矢。起きてみろよ。」と桐木に肩を揺すられていた。俺は体を起こした。そこはまだスナックの中だった。そんなに時間はたっていない筈なのに、すっかり酔いは醒めていた。「どうだい、気分は?」と桐木。「不思議だ。全然酔ってない。」と言った俺の声は、いつもの声とは違っていた。「そら、」と桐木が指を指す。振り返るように、その先を見た。
テーブルにぐったりしている「俺」がいた。

スナックの壁は狭い店内を広く見せようと、鏡が嵌め込まれている。しかし、それは鏡に映った俺自身ではなかった。俺は立っているが、「俺」は寝ている。そして鏡に映る俺自身は「俺」ではなかった。
「女?」俺は女のような叫び声、いや、俺自身が女になっているのなら当然だが、女の声で叫んでいた。

「凄いだろう。コレなら酔わずに呑み続けられるぞ。」桐木はニヤつきながら俺を女の子達の待つテーブルに引っ張っていった。「ど、どうなっているんだ?」俺が女の声で聞こうとすると、奴はそれを遮るようにグラスを差し出した。「先ずは乾杯だ。復活した三矢クンに」チンッとグラスを触れ合わす。そのまま、中の液体を口の中に注ぎ込んだ。さっきまではアルコールの強さに負けてしまっていたが、今度は酒の美味しさが口の中に広がっていた。
「その娘は変わった特技を持っているんだ。霊媒師って知っているか?死んだ人の霊を自分に宿らせてその人しか知らない事を聞き出すんだ。彼女は更に生きた人間の霊をも呼び寄せることが出来るんだ。」「それが今の俺の状態って事か?でも、俺は生きているから、聞きたい事があったらいつでも聞けるだろう?」「ふうむ、みっちゃんは未だ解っていないようだな?」「だ、だれがみっちゃんだ。」「そんな可愛い姿で三矢君はないだろう?僕としてはもっと親密になりたいんだがね。」「桐木、変な事を考えているんじゃないだろうな。」「何も変な事は考えていないよ。可愛い女の子と親密になって、やる事はヤりたいなぁ。なんて思っているだけだよ。」「その可愛い娘って、俺の事か?」「何だ、充分に理解しているじゃないか?」「馬鹿言うな。俺は男だ。」「どこが?」
と奴は俺の肩に腕を廻し身動きできないようにすると、空いた手を俺の胸に差し込んできた。「ほら、これはオッパイだろう?」ブラの中に手を入れ、先端の突起をつまんだ。「ああん。」俺は思わず女のように喘いでいた。「ちゃんと感じるだろう?みっちゃんは可愛い女の子なんだよ。」
奴の言葉と同時に、急速にアルコールが頭の中に広がっていった。俺は抵抗もできず、ぎゅっと抱き締められた。奴の手が肩から腰に降りてくる。それは俺の身体の女らしい曲線を際立たせる。腰に廻された手で尻を撫でられると、俺の身体から一気に力が抜けていった。

俺は桐木の肩に凭れていた。奴の手が俺の頭を支える。奴の顔が迫ってくる。奴が何をしようとしているか判ってはいたが、拒絶しようとする気力が萎えてしまっていた。代わりに、俺は瞼を閉じていた。
奴の唇が俺の唇に触れた。そのまま舌が侵入してくる。俺の意識の中では男同士と判っているが、身体が奴の侵入を拒もうとしない。舌を絡め、注がれる奴の唾液を喉の奥に送り込んでいた。奴の手が胸を揉み朶く。得体の知れない快感に、何も考える事ができなくなってゆく。唇が離されても、しばらくはぼーっとしていた。
「みっちゃん。キーさんのキッスて凄いでしょう?」「初めての娘には酷かったんじゃない?」女の子達が話し掛けてくる。「でも、良かったでしょう?」と言われ、俺は首を縦に振っていた。
「みっちゃんは感度が良いから、あそこの蜜も溢れだしてるんじゃないか?」桐木が俺の耳に囁きかける。実際、俺の股間は胎の内から滲み出てきたモノで湿り気を帯びてきていた。彼の手が俺の膝の辺りからスカートの中に入り込もうとしていた。「駄目っ!」と俺はその手をスカートの上から抑えつけた。
「そうよ、キーさん。そこから先は外に出てからにして頂戴ね。」ママがカウンターから声を掛けると皆が一斉に動き始めた。

彼は立ち上がると、どこかに電話を掛けていた。誰かが俺の唇に口紅を足していた。毛皮のコートが用意され、ハンドバックが手渡された。高いヒールに転びそうになると、桐木の逞しい腕に抱き留められた。
店の前に停まっていたタクシーに乗り、程なくホテルのエントランスに着いた。そのままエレベータで昇り、部屋に入った。豪華なダブルベッドが鎮座していた。これからどうなるのか?答えは解っていたが、認めたくなかった。

俺の手からハンドバックが取り去られた。コートが脱がされる。背中のファスナーが下ろされると、ドレスはスルスルと足元に落ちていった。俺は下着姿を晒した。ブラジャーに包まれた胸は服の上から垣間見ていたが、確かに俺の胸に存在していた。彼の手がパンストを擦り下ろしてゆく。俺は脚を上げ、脱ぐのを手伝った。ネックレスが外され、ブラも外されると俺はショーツだけになる。
彼に手を引かれベッドに近付く。そのままベッドに押し倒された。彼の手でショーツが外される。両脚を開かされ、濡れた股間が彼の前に晒された。「厭っ」と言う抵抗の言葉も弱々しく、形だけのものになっていた。
「ああんっ」俺は女のように喘いだ。彼が俺の股間に顔を埋め女陰を嘗めあげたのだ。俺の胎の奥から更に蜜が溢れてゆくのが判った。

俺は女の悦感に翻弄されていた。止めどなく嬌声をあげ、自分から誘うように腰を振り、更なる快感を求めて彼に跨っていた。膣の中を彼のペニスが行き来する。高まりを迎えたペニスは俺の中にザーメンぶちまける。
ペニスが萎えると、俺は身体を入れ換えて残滓の残るペニスを口に含み復活させてやる。そして、復活が成功すると再び俺の膣に導いてゆくのだ。

「三矢さん?」と女の声とともに肩を揺すられた。俺はゆっくりと上体を起こした。
そこはスナックの中だった。振り返ると鏡があった。そこにはスーツを着た「男」の俺自身がいた。(あれは夢だったのか?)と手を胸に、腰に、股間に充てた。俺は自分が「男」である事を確認した。が、掌の下には未だ痺れるような疼きが感じられた。
「良かった?」ママの問いに俺は「うん♪」と素直に頷いていた。「あなたも、本気で女の子になってみない?」「女の子、に?」「キーさんに抱かれて気持ち良かったでしょう?女の子になれば、また、キーさんのような男性に抱いてもらえるのよ。」「もう一度、桐木に?」「一度ではないわ。何度でもよ。」
俺は桐木に触れられた胸の感覚を思い出していた。絡めあった舌の感覚、腰のラインに沿って撫でられる感覚。嘗め上げられた股間、挿入された彼のモノ、膣の奥に注ぎ込まれた精液…
俺は股間が濡れてゆく錯覚に囚われていた。
「このお薬を飲んでごらんなさい。あなたはあなたの望む肉体を手に入れることができるわ。」ママが錠剤と水の入ったグラスを差し出した。「女、になるの?」「いいえ、あなた本来の姿に戻るだけよ。」「お、俺は…」「あなたはもともと女の子だったのよ。それをキーさんが気付かせてくれただけ。」「女の子だった?」「そうよ、そしてこのお薬はあなたの本来の姿を取り戻してくれるの。」ママの言葉は俺の思考回路を狂わしていった。「俺の、本来の、女?」
「愛されたいんでしょ?」ママの言葉に頷く。俺は錠剤を飲み下していた。

「みっちゃん。キーさんが来たわよ。」ママの声に俺は立ち上がった。鏡に姿を映す。スカートに変な皺は出来ていない。お化粧もOK。「待っていたわ♪」俺は店に出るなり彼に飛び付いていった。「みっちゃんも、随分女の子らしくなったなぁ。」「変なコト言わないで。あたしは元々女の子よ。」「そ、そうだったね。」と彼が苦笑いする。「お詫びに、今夜はとことん可愛がってあげよう。」彼の言葉にあたしの胸はキュンとなり、股間がじんわりと濡れてゆくのを感じていた。

「今度も巧くいったようね。」
ママは二人を送り出すと店の奥にいる女の子達に言った。が、既に彼女等はスイッチが切れたように身動きひとつしなくなっていた。「もう逝っちゃったの?また新しい霊を集めてこなくちゃね。」
そう言って彼女は魂の抜けた義体を壁の裏側に仕舞い込んでいくのだった。

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コメント

な、な、なんと、霊媒師は、ここのママだったのか。
そして、女の子の身体は、霊を下ろすための依り代。
生霊を別の身体に下ろすなんてすごいなぁ。
おもしろいです。はい。

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