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2007年12月29日 (土)

夢の跡

僕は眠るのが怖かった。
夢遊病というやつなのだろうか?朝、目が醒めると、床の上にパジャマが脱ぎ捨てられ、裸のまま布団の中にいることに気付くのだ。

その日、僕は夢を見ていた。ディスコだろうか?ミラーボールの下、騒々しい音楽に合わせて皆が踊っていた。僕も皆と一緒に踊っているのだが、それは僕自身ではなかった。自の意志で踊っているのではなく、誰かに体を動かされているのだ。
更に、肉体にも違和感があった。動く度に胸の上で動くものがあった。体が下を向いた時、僕の胸が女の子のように膨らんでいるのが確認できた。そればかりか、僕の着ている服もまた、女の子のものだった。膨らんだ胸はブラジャーに包まれていた。ピンク色のジャケットに同じ色のミニスカートを着て、脚には厚底で踵が高くすぐにでも転んでしまいそうなブーツを履いている。丈の短いシャツはお腹を被いきれず、常にお臍を晒している状態にあった。
その臍の脇にどこかで見覚えのあるほくろを見付けた。「ふふふっ。また明日ね♪」僕は耳元に女の子の囁きを聞いたと同時に、意識を失っていた。

その朝も、僕は裸で目覚めた。いつもと同じだった。起き上がり服を着ようとして、ふとお腹に目が行った。臍の脇に夢の中で見たものと同じほくろがあった。背筋に冷たいものが走る。(彼女は僕自身?)

その夜は眠りたくなかった。眠気を醒ますために外に出た。コンビニで暇を潰していたがまり長居できなかった。缶コーヒーを買って道端の公園に向かった。道路の街路灯で照らされてはいるが、そこここに暗い闇があった。そこにはなるべく近付かないようにしてベンチに座った。
いくらもたたずにコーヒーを飲み干してしまった。立ち上がり備え付けのごみ箱に空き缶を捨てた。ふと、その脇にあったブランコに乗りたくなった。板に座り揺してやると、風が起こり気持ち良かった。
その気持ち良さに浸っているうちに、僕は眠ってしまったようだ。まだブランコに乗ってはいたが、自分の意志で漕ぐことは出来なくなっていた。僕は…と言うより、僕の体はブランコを降り、公園を後にした。行き先は僕のアパートだった。ドアを開けると下駄箱の奥から、昨夜の夢の中で履いていたブーツを取り出した。タンスの奥には昨夜のピンクのミニスカート以外にも数着の女物の服が掛けられていた。僕はその中の一着を取り出し、鏡の前で自分の体に充てると、満足気に微笑んでいた。
僕はどこに隠してあったのか、女の子の下着を取り出していた。ショーツに脚を通して引き上げる。股間が膨らんでしまうと危惧していたが、僕の股間はショーツに包まれると、奇麗に平になっていた。次ぎにブラジャーを着ける。今度はブラのカップを埋めるように肉が寄せ集まり、盛り上がっていった。鏡に映された僕はどこから見ても女の子だった。鏡の中の僕はニヤリと笑うと、片手を胸に充てた。そして、指を立て、力を入れた。僕は胸の上で乳房が揉まれるのを感じた。そしてもう片方の手がショーツの上から股間に充てられる。中指に力が入れられると、そこに女の子の割れ目がある事をはっきりと認識させられた。

その夜は服を着て、化粧をし、ブーツを履いてドアを出ようとした所で意識が途絶えていた。朝、いつものように布団の中で目覚めた僕は真っ先にタンスの中を確かめた。ほとんど同じ服を着廻していた僕は、ここしばらく、タンスの扉を開いていなかった。吊されている服を掻き分けて奥を覗くと、昨夜の夢と同じように女物の服が掛けられていた。更に引き出しの奥を探す。そこからは女の子の下着が出てきた。下駄箱の奥からはブーツが見付かった。
まさかとは思いつつも、手にしたブラジャーを胸に充ててみた。当然、夢の中ではないので胸が膨らむ筈もなかった。

この不条理な事態に僕が半ば諦めを感じると同時に、タンスの中の服はどんどん増えていった。しかし、夢の中だけでなく、現実世界のタンスの中も増えていくのだから、いくら何でもタダでは済んでいない筈だ。かと言って、僕の財布の中からも、銀行口座からもお金が使われた形跡はなかった。そんな僕の疑問を解決させるかのように、その夜の夢は目の前に置かれた紙幣から始まった。
そこはホテルの一室のようだった。僕は全裸で紙幣を数えていた。「まぁ、こんなものかしらね。」とつぶやくと紙幣をハンドバックの中に入れた。全裸、そして股間の疼き。どうやら僕は売春をしているらしい。シャワーを浴び、身仕度を整えてホテルを後にした所で僕の夢は終わった。
朝、起きるとタンスの扉を開いた。昨夜使っていたハンドバックを取り出した。何故か?と言うより、当然のように、そこには数枚の紙幣が入っていた。僕はそれが夢なのか、現実なのか判らなくなっていた。
僕はその夜、パジャマを着る代わりにタンスの中の服を着てみることにした。もちろん、下着も女物を着けている。現実の中では胸は膨らまないし、股間には男のシンボルがそのままになっている。僕は構わずにハンドバックから取り出した道具で化粧を始めた。もう何度も夢の中で見させられている。いつものように駅前で待っていると声を掛けられた。男にエスコートされてホテルに入った。
「いつもと雰囲気が違うね。」男が言った。「解るのか?」「そう、まだ夢を見ていないんだね。そのままで良ければシてあげるよ。」「な、何を考えているんだ?」「君がその方が良ければ男同士のSEXも可能だと言ったのだよ。」「ぼ、僕にはそんな趣味はない。」「では、何故ここまできたのかね?それも、こんな格好までして。」
僕はこの男が全ての元凶であると気付いた。「お前は何者なんだ?」「ようやくそこに辿り着いたか?お前達の表現を使えば、私は悪魔と言うことになる。更に言えば夢魔と分類されるんだろうな。」「悪魔?」「別に命を取ろうとかいうのではない。」僕はその場から逃げ出そうとしたが脚が動かなかった。「私は人間の負の思念を糧としている。恐怖や背徳、性的な快感も美味なものがある。」「性的?」僕は思わず股間に手を充てていた。「淫夢を見させ、己の背徳に気付きながらも快感に身を委ねる等はお美味い部類に入る。お前のように、女にされて戸惑いのうちに女の快感に染まってゆくのもまた珍味だな。」僕は自分の意志とは無関係に体の奥が熱くなるのを感じた。「さぁ、どうしたい?夢の中に入って女になるか、このまま男として私に抱かれるか?」股間の疼きが激しさを増す。夢の中で男に抱かれて快感に喘いでいた自分を思い出す。「どちらが良いかね?」悪魔が囁いた。

「ぼ、僕は…」答えを口にする事をできないでいると、体の方が先に反応していた。股間に充てた掌の下で変化が始まった。突起物が姿を消し、溝が穿たれる。すぐにも蜜が溢れ出し、ショーツを濡らす。胸が盛り上がり、ブラのカップを満たしてゆく。「良い娘だ。」僕は男に抱き締められた。

朝が来た。僕は全裸で布団に包まっていた。その光景は昨日までと同じだ。しかし、布団の内側にある肉体は昨日とは違っていた。夢から醒めているにもかかわらず、僕の体は女のままだったのだ。
僕は夢遊病に悩まされることはなくなった。が、僕は四六時中が夢魔の慰みものと化していた。夢の中はもとより、現実世界でも責めたてられた。真昼間の公園で、通勤ラッシュの電車の中で、買い物客で溢れる商店街の道端で。様々な状況の中で奴に犯される。そして、奴の思惑通りに奴の糧が生み出されてゆくのだ。
僕は女の快感に抗いきれず、所構わず媚声をあげていた。

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コメント

夢遊病の結末が、こういう風になってくるなんて、おもしろいです。
夢遊病の気がある方はお気をつけください。

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