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2007年12月29日 (土)

夢の跡

僕は眠るのが怖かった。
夢遊病というやつなのだろうか?朝、目が醒めると、床の上にパジャマが脱ぎ捨てられ、裸のまま布団の中にいることに気付くのだ。

その日、僕は夢を見ていた。ディスコだろうか?ミラーボールの下、騒々しい音楽に合わせて皆が踊っていた。僕も皆と一緒に踊っているのだが、それは僕自身ではなかった。自の意志で踊っているのではなく、誰かに体を動かされているのだ。
更に、肉体にも違和感があった。動く度に胸の上で動くものがあった。体が下を向いた時、僕の胸が女の子のように膨らんでいるのが確認できた。そればかりか、僕の着ている服もまた、女の子のものだった。膨らんだ胸はブラジャーに包まれていた。ピンク色のジャケットに同じ色のミニスカートを着て、脚には厚底で踵が高くすぐにでも転んでしまいそうなブーツを履いている。丈の短いシャツはお腹を被いきれず、常にお臍を晒している状態にあった。
その臍の脇にどこかで見覚えのあるほくろを見付けた。「ふふふっ。また明日ね♪」僕は耳元に女の子の囁きを聞いたと同時に、意識を失っていた。

その朝も、僕は裸で目覚めた。いつもと同じだった。起き上がり服を着ようとして、ふとお腹に目が行った。臍の脇に夢の中で見たものと同じほくろがあった。背筋に冷たいものが走る。(彼女は僕自身?)

その夜は眠りたくなかった。眠気を醒ますために外に出た。コンビニで暇を潰していたがまり長居できなかった。缶コーヒーを買って道端の公園に向かった。道路の街路灯で照らされてはいるが、そこここに暗い闇があった。そこにはなるべく近付かないようにしてベンチに座った。
いくらもたたずにコーヒーを飲み干してしまった。立ち上がり備え付けのごみ箱に空き缶を捨てた。ふと、その脇にあったブランコに乗りたくなった。板に座り揺してやると、風が起こり気持ち良かった。
その気持ち良さに浸っているうちに、僕は眠ってしまったようだ。まだブランコに乗ってはいたが、自分の意志で漕ぐことは出来なくなっていた。僕は…と言うより、僕の体はブランコを降り、公園を後にした。行き先は僕のアパートだった。ドアを開けると下駄箱の奥から、昨夜の夢の中で履いていたブーツを取り出した。タンスの奥には昨夜のピンクのミニスカート以外にも数着の女物の服が掛けられていた。僕はその中の一着を取り出し、鏡の前で自分の体に充てると、満足気に微笑んでいた。
僕はどこに隠してあったのか、女の子の下着を取り出していた。ショーツに脚を通して引き上げる。股間が膨らんでしまうと危惧していたが、僕の股間はショーツに包まれると、奇麗に平になっていた。次ぎにブラジャーを着ける。今度はブラのカップを埋めるように肉が寄せ集まり、盛り上がっていった。鏡に映された僕はどこから見ても女の子だった。鏡の中の僕はニヤリと笑うと、片手を胸に充てた。そして、指を立て、力を入れた。僕は胸の上で乳房が揉まれるのを感じた。そしてもう片方の手がショーツの上から股間に充てられる。中指に力が入れられると、そこに女の子の割れ目がある事をはっきりと認識させられた。

その夜は服を着て、化粧をし、ブーツを履いてドアを出ようとした所で意識が途絶えていた。朝、いつものように布団の中で目覚めた僕は真っ先にタンスの中を確かめた。ほとんど同じ服を着廻していた僕は、ここしばらく、タンスの扉を開いていなかった。吊されている服を掻き分けて奥を覗くと、昨夜の夢と同じように女物の服が掛けられていた。更に引き出しの奥を探す。そこからは女の子の下着が出てきた。下駄箱の奥からはブーツが見付かった。
まさかとは思いつつも、手にしたブラジャーを胸に充ててみた。当然、夢の中ではないので胸が膨らむ筈もなかった。

この不条理な事態に僕が半ば諦めを感じると同時に、タンスの中の服はどんどん増えていった。しかし、夢の中だけでなく、現実世界のタンスの中も増えていくのだから、いくら何でもタダでは済んでいない筈だ。かと言って、僕の財布の中からも、銀行口座からもお金が使われた形跡はなかった。そんな僕の疑問を解決させるかのように、その夜の夢は目の前に置かれた紙幣から始まった。
そこはホテルの一室のようだった。僕は全裸で紙幣を数えていた。「まぁ、こんなものかしらね。」とつぶやくと紙幣をハンドバックの中に入れた。全裸、そして股間の疼き。どうやら僕は売春をしているらしい。シャワーを浴び、身仕度を整えてホテルを後にした所で僕の夢は終わった。
朝、起きるとタンスの扉を開いた。昨夜使っていたハンドバックを取り出した。何故か?と言うより、当然のように、そこには数枚の紙幣が入っていた。僕はそれが夢なのか、現実なのか判らなくなっていた。
僕はその夜、パジャマを着る代わりにタンスの中の服を着てみることにした。もちろん、下着も女物を着けている。現実の中では胸は膨らまないし、股間には男のシンボルがそのままになっている。僕は構わずにハンドバックから取り出した道具で化粧を始めた。もう何度も夢の中で見させられている。いつものように駅前で待っていると声を掛けられた。男にエスコートされてホテルに入った。
「いつもと雰囲気が違うね。」男が言った。「解るのか?」「そう、まだ夢を見ていないんだね。そのままで良ければシてあげるよ。」「な、何を考えているんだ?」「君がその方が良ければ男同士のSEXも可能だと言ったのだよ。」「ぼ、僕にはそんな趣味はない。」「では、何故ここまできたのかね?それも、こんな格好までして。」
僕はこの男が全ての元凶であると気付いた。「お前は何者なんだ?」「ようやくそこに辿り着いたか?お前達の表現を使えば、私は悪魔と言うことになる。更に言えば夢魔と分類されるんだろうな。」「悪魔?」「別に命を取ろうとかいうのではない。」僕はその場から逃げ出そうとしたが脚が動かなかった。「私は人間の負の思念を糧としている。恐怖や背徳、性的な快感も美味なものがある。」「性的?」僕は思わず股間に手を充てていた。「淫夢を見させ、己の背徳に気付きながらも快感に身を委ねる等はお美味い部類に入る。お前のように、女にされて戸惑いのうちに女の快感に染まってゆくのもまた珍味だな。」僕は自分の意志とは無関係に体の奥が熱くなるのを感じた。「さぁ、どうしたい?夢の中に入って女になるか、このまま男として私に抱かれるか?」股間の疼きが激しさを増す。夢の中で男に抱かれて快感に喘いでいた自分を思い出す。「どちらが良いかね?」悪魔が囁いた。

「ぼ、僕は…」答えを口にする事をできないでいると、体の方が先に反応していた。股間に充てた掌の下で変化が始まった。突起物が姿を消し、溝が穿たれる。すぐにも蜜が溢れ出し、ショーツを濡らす。胸が盛り上がり、ブラのカップを満たしてゆく。「良い娘だ。」僕は男に抱き締められた。

朝が来た。僕は全裸で布団に包まっていた。その光景は昨日までと同じだ。しかし、布団の内側にある肉体は昨日とは違っていた。夢から醒めているにもかかわらず、僕の体は女のままだったのだ。
僕は夢遊病に悩まされることはなくなった。が、僕は四六時中が夢魔の慰みものと化していた。夢の中はもとより、現実世界でも責めたてられた。真昼間の公園で、通勤ラッシュの電車の中で、買い物客で溢れる商店街の道端で。様々な状況の中で奴に犯される。そして、奴の思惑通りに奴の糧が生み出されてゆくのだ。
僕は女の快感に抗いきれず、所構わず媚声をあげていた。

2007年12月20日 (木)

霊媒師

朦朧とした意識の俺は、スナックの隅のテーブルに正態もなく俯っていた。
ホステスだろうか、若い女達の喋る声が聞こえた。パタリとドアの開く音と共に水の流れる音がする。確か、俺の席の隣はトイレだった。「よぉ、意識はあるか?」声を掛けてきた男は、このスナックに俺を誘ってくれた同僚の桐木だった。俺は片手を上げるだけで返事に代えた。
「こいつがこんなに酒に弱いとは思わなかったよ。なぁ、アレやってくれないか?」と女の子に言うと、「え~、もう?」と厭そうな答えが返ってきた。「チップを弾むからさぁ。」と桐木、「しょうがないわね。」と女が立ち上がった。女の気配が近付いてくる。「じゃあやるわね。」と女が俺の隣に腰を降ろした。モゴモゴと彼女が呪文を唱えると、俺は意識を失っていた。

「おい、三矢。起きてみろよ。」と桐木に肩を揺すられていた。俺は体を起こした。そこはまだスナックの中だった。そんなに時間はたっていない筈なのに、すっかり酔いは醒めていた。「どうだい、気分は?」と桐木。「不思議だ。全然酔ってない。」と言った俺の声は、いつもの声とは違っていた。「そら、」と桐木が指を指す。振り返るように、その先を見た。
テーブルにぐったりしている「俺」がいた。

スナックの壁は狭い店内を広く見せようと、鏡が嵌め込まれている。しかし、それは鏡に映った俺自身ではなかった。俺は立っているが、「俺」は寝ている。そして鏡に映る俺自身は「俺」ではなかった。
「女?」俺は女のような叫び声、いや、俺自身が女になっているのなら当然だが、女の声で叫んでいた。

「凄いだろう。コレなら酔わずに呑み続けられるぞ。」桐木はニヤつきながら俺を女の子達の待つテーブルに引っ張っていった。「ど、どうなっているんだ?」俺が女の声で聞こうとすると、奴はそれを遮るようにグラスを差し出した。「先ずは乾杯だ。復活した三矢クンに」チンッとグラスを触れ合わす。そのまま、中の液体を口の中に注ぎ込んだ。さっきまではアルコールの強さに負けてしまっていたが、今度は酒の美味しさが口の中に広がっていた。
「その娘は変わった特技を持っているんだ。霊媒師って知っているか?死んだ人の霊を自分に宿らせてその人しか知らない事を聞き出すんだ。彼女は更に生きた人間の霊をも呼び寄せることが出来るんだ。」「それが今の俺の状態って事か?でも、俺は生きているから、聞きたい事があったらいつでも聞けるだろう?」「ふうむ、みっちゃんは未だ解っていないようだな?」「だ、だれがみっちゃんだ。」「そんな可愛い姿で三矢君はないだろう?僕としてはもっと親密になりたいんだがね。」「桐木、変な事を考えているんじゃないだろうな。」「何も変な事は考えていないよ。可愛い女の子と親密になって、やる事はヤりたいなぁ。なんて思っているだけだよ。」「その可愛い娘って、俺の事か?」「何だ、充分に理解しているじゃないか?」「馬鹿言うな。俺は男だ。」「どこが?」
と奴は俺の肩に腕を廻し身動きできないようにすると、空いた手を俺の胸に差し込んできた。「ほら、これはオッパイだろう?」ブラの中に手を入れ、先端の突起をつまんだ。「ああん。」俺は思わず女のように喘いでいた。「ちゃんと感じるだろう?みっちゃんは可愛い女の子なんだよ。」
奴の言葉と同時に、急速にアルコールが頭の中に広がっていった。俺は抵抗もできず、ぎゅっと抱き締められた。奴の手が肩から腰に降りてくる。それは俺の身体の女らしい曲線を際立たせる。腰に廻された手で尻を撫でられると、俺の身体から一気に力が抜けていった。

俺は桐木の肩に凭れていた。奴の手が俺の頭を支える。奴の顔が迫ってくる。奴が何をしようとしているか判ってはいたが、拒絶しようとする気力が萎えてしまっていた。代わりに、俺は瞼を閉じていた。
奴の唇が俺の唇に触れた。そのまま舌が侵入してくる。俺の意識の中では男同士と判っているが、身体が奴の侵入を拒もうとしない。舌を絡め、注がれる奴の唾液を喉の奥に送り込んでいた。奴の手が胸を揉み朶く。得体の知れない快感に、何も考える事ができなくなってゆく。唇が離されても、しばらくはぼーっとしていた。
「みっちゃん。キーさんのキッスて凄いでしょう?」「初めての娘には酷かったんじゃない?」女の子達が話し掛けてくる。「でも、良かったでしょう?」と言われ、俺は首を縦に振っていた。
「みっちゃんは感度が良いから、あそこの蜜も溢れだしてるんじゃないか?」桐木が俺の耳に囁きかける。実際、俺の股間は胎の内から滲み出てきたモノで湿り気を帯びてきていた。彼の手が俺の膝の辺りからスカートの中に入り込もうとしていた。「駄目っ!」と俺はその手をスカートの上から抑えつけた。
「そうよ、キーさん。そこから先は外に出てからにして頂戴ね。」ママがカウンターから声を掛けると皆が一斉に動き始めた。

彼は立ち上がると、どこかに電話を掛けていた。誰かが俺の唇に口紅を足していた。毛皮のコートが用意され、ハンドバックが手渡された。高いヒールに転びそうになると、桐木の逞しい腕に抱き留められた。
店の前に停まっていたタクシーに乗り、程なくホテルのエントランスに着いた。そのままエレベータで昇り、部屋に入った。豪華なダブルベッドが鎮座していた。これからどうなるのか?答えは解っていたが、認めたくなかった。

俺の手からハンドバックが取り去られた。コートが脱がされる。背中のファスナーが下ろされると、ドレスはスルスルと足元に落ちていった。俺は下着姿を晒した。ブラジャーに包まれた胸は服の上から垣間見ていたが、確かに俺の胸に存在していた。彼の手がパンストを擦り下ろしてゆく。俺は脚を上げ、脱ぐのを手伝った。ネックレスが外され、ブラも外されると俺はショーツだけになる。
彼に手を引かれベッドに近付く。そのままベッドに押し倒された。彼の手でショーツが外される。両脚を開かされ、濡れた股間が彼の前に晒された。「厭っ」と言う抵抗の言葉も弱々しく、形だけのものになっていた。
「ああんっ」俺は女のように喘いだ。彼が俺の股間に顔を埋め女陰を嘗めあげたのだ。俺の胎の奥から更に蜜が溢れてゆくのが判った。

俺は女の悦感に翻弄されていた。止めどなく嬌声をあげ、自分から誘うように腰を振り、更なる快感を求めて彼に跨っていた。膣の中を彼のペニスが行き来する。高まりを迎えたペニスは俺の中にザーメンぶちまける。
ペニスが萎えると、俺は身体を入れ換えて残滓の残るペニスを口に含み復活させてやる。そして、復活が成功すると再び俺の膣に導いてゆくのだ。

「三矢さん?」と女の声とともに肩を揺すられた。俺はゆっくりと上体を起こした。
そこはスナックの中だった。振り返ると鏡があった。そこにはスーツを着た「男」の俺自身がいた。(あれは夢だったのか?)と手を胸に、腰に、股間に充てた。俺は自分が「男」である事を確認した。が、掌の下には未だ痺れるような疼きが感じられた。
「良かった?」ママの問いに俺は「うん♪」と素直に頷いていた。「あなたも、本気で女の子になってみない?」「女の子、に?」「キーさんに抱かれて気持ち良かったでしょう?女の子になれば、また、キーさんのような男性に抱いてもらえるのよ。」「もう一度、桐木に?」「一度ではないわ。何度でもよ。」
俺は桐木に触れられた胸の感覚を思い出していた。絡めあった舌の感覚、腰のラインに沿って撫でられる感覚。嘗め上げられた股間、挿入された彼のモノ、膣の奥に注ぎ込まれた精液…
俺は股間が濡れてゆく錯覚に囚われていた。
「このお薬を飲んでごらんなさい。あなたはあなたの望む肉体を手に入れることができるわ。」ママが錠剤と水の入ったグラスを差し出した。「女、になるの?」「いいえ、あなた本来の姿に戻るだけよ。」「お、俺は…」「あなたはもともと女の子だったのよ。それをキーさんが気付かせてくれただけ。」「女の子だった?」「そうよ、そしてこのお薬はあなたの本来の姿を取り戻してくれるの。」ママの言葉は俺の思考回路を狂わしていった。「俺の、本来の、女?」
「愛されたいんでしょ?」ママの言葉に頷く。俺は錠剤を飲み下していた。

「みっちゃん。キーさんが来たわよ。」ママの声に俺は立ち上がった。鏡に姿を映す。スカートに変な皺は出来ていない。お化粧もOK。「待っていたわ♪」俺は店に出るなり彼に飛び付いていった。「みっちゃんも、随分女の子らしくなったなぁ。」「変なコト言わないで。あたしは元々女の子よ。」「そ、そうだったね。」と彼が苦笑いする。「お詫びに、今夜はとことん可愛がってあげよう。」彼の言葉にあたしの胸はキュンとなり、股間がじんわりと濡れてゆくのを感じていた。

「今度も巧くいったようね。」
ママは二人を送り出すと店の奥にいる女の子達に言った。が、既に彼女等はスイッチが切れたように身動きひとつしなくなっていた。「もう逝っちゃったの?また新しい霊を集めてこなくちゃね。」
そう言って彼女は魂の抜けた義体を壁の裏側に仕舞い込んでいくのだった。

2007年12月14日 (金)

侵略者?(後編)

その夜、街に宇宙から飛来したものがあった。中には手足の生えたオタマジャクシのような生物が乗っていた。それが彼を呼んだ。「どこに居る?」
彼は男に抱かれ、悦楽の際にいた。が、その声には逆らうことができなかった。一瞬にして正気に戻る。「はい、ここにいます。」と宙に向かって答えると、のしかかっていた男をはねのけた。
男のモノが抜けた股間から、男の精液が滴っていた。彼はティッシュで手早く処理すると、服を身に着けていった。化粧は簡単に済ませ、部屋に鍵も掛けずにマンションを飛び出していった。
そこは祈念公園となっていた。彼は広場の中央に立ち、上を見あげた。そこには見えないが、宇宙船が存在している。「ヤツはどうした?」彼の頭の中に声が響く。「知らないわ。」彼は宇宙船に向かって言った。「調べろ。我々が直接調べるより、この世界に精通したお前が行う方が効率が良い。」彼はこの身体もまた奪われてしまうかとビクついていたが、どうやら回避されたようでホッと胸を撫で下ろした。

「あたしが安眠マスクをあげたのは、少しでも明かりがあると眠れないと言われたからです。」調べを終えた彼は再び宇宙船の下に戻ってきた。「あたしもあの身体の頃は安眠マスクをしていた。何故餓死したかについては、あたしの推測ですが、安眠マスクをしたままだったので、夜がずっと続いていると思っていたのではないでしょうか?夜だから、寝続けていたと思います。あなた方は、今のあたしのように食事を採ることなく生きてきたのでしょう。空腹感が何を意味するかが判らなかったんじゃないでしょうか?」「我々は遥か昔に他の動植物を殺生し、自らを生きながらさせるというような野蛮な行為は行っていない。」「それにしては、大量の人命が失われたわ。小さな子供の命まで。」「我々も今回の事故の件は想定していなかった。やつは身をもって償いをしたと考えてやろう。我々は不幸にも事故によりあなた方を傷付けてしまった。深く謝罪する。が、死を克服することはできても、一度失われた肉体を取り戻すことは我々にも出来ない。せめて、あなたには可能な限りの償いをさせていただきたい。元の姿に戻す事はできないが、その身体を男性にする事は可能だ。」

「男に戻るのは厭よ。」彼は即座に答えていた。「あなた達の干渉さえなければ、あたしは十分幸せよ。女の方が楽だし、楽しいし、この身体なら妊娠することもない。」「では、我々でできる事はないと?」「もう、あたしの事は放っておいて。じゃあね。」彼はそう言うと宇宙船に背を向けた。

「あっ、」と彼が立ち止まる。
彼は「私」を指さした。「もう、あたしはとっくに女なの。彼って言わないで頂戴!!」

彼… 彼女はそう言って街の中に消えていった。

侵略者?(中編)

彼はその街からかなり離れた場所にいた。
一目を忍んで逃げ続ける間に、彼は己の肉体が特異なものであることを学んだ。彼がこの肉体を得た時、この少女は既に彼の腕の中で息絶えていたのだ。一度死んだ少女は、もう死ぬことはなかった。彼はいくら空腹になっても餓死できない事を知った。手首を切り裂いても血は流れず、傷口は即にふさがっていった。彼は人気のない倉庫の片隅で身じろぎもせずに、時が過ぎ行くのを待っていた。彼は知る由もなかったが、既に彼を追うモノはいなくなっていた。が、彼は隠れ続けていた。
しはし、彼は隠れ続ける事ができなかった。死んでいる体ではあったが、成長は続いていた。流れゆく時は彼の身体を少女のままでは置かなかった。始めのうちは、小さくなった服を脱いで凌いでいた。やがて下着も着れなくなり、彼は全裸で隠れ場所にいた。寒くても凍え死ぬ事はなかった。が、成長を続ける肉体は、隠れ場所を圧していった。ついには隠れ場所自体が狭くなり、彼を匿い続ける事ができなくなっていた。ある日、彼は宵闇に紛れて隠れ家を出た。彼は初めて盗みを犯した。近くのアパートの軒下に無造作に干してあったズボンとシャツを失敬する。お金を持っていなかった事もあるが、お金があったとしても全裸では買い物はできなかったからだ。
彼は食事を採る必要はなかったが、いつまでも盗んだ服と拾ったサンダルのままではいられなかった。もう子供ではなかったので補導されるような事はなかったが、道行く人々の視線が痛かった。しかし、ちゃんとした服を手に入れるにはお金が必要だった。だが、このような身なりではアルバイトも探せない。彼は途方に暮れ、公園のベンチに座っていた。

「ねぇ、君。」と声を掛けた男がいた。かなり泥酔しているようだ。「オジサンに良いコトしてくれたら、これをあげるよ。」と紙幣をヒラヒラさせていた。彼が反応を示すのも待たずに、男はズボンのチャックを下ろしていた。男の手が彼の手をつかみ、自分のモノに触れさせる。それだけで男は股間を硬くしていた。さすがに唇を触れさせようとした時には彼も拒絶したが、男のモノをつかむ所で妥協する他はなかった。男は自らの手で彼の手を動かした。男は勝手に精を飛ばすと、彼に紙幣を渡し後始末もしないで公園を去っていった。彼は翌日、その金で服を買った。

その夜は駅前のベンチに座っていた。「ねぇ、君。」と声を掛けた男がいた。「オジサンと遊ばないか?」彼は「遊ぶ」がどういう意味を持つかを理解していなかった。男に導かれるままゲームセンター、ビリヤードと巡っていった。もっぱら男がゲームを進め、彼はただ見ているだけだった。
「疲れたろう?」と男はホテルのレストランに彼を誘った。食前酒に続き豪華なフルコースが運ばれてきた。勧められるままに飲み干したワインが彼の意識を朦朧とさせていた。
「ぁあん♪」彼は久し振りに艶かしい女の媚声を聞いた。それはAV女優の演技されたものではなく、生々しく快感から発せられたものであった。そして、彼はその声が自ら発したものであることを知った。「幼いのに感度は良いようだな。」男はそのざらついた舌で彼の身体を嘗めまわした。男の舌先が彼の鋭敏な箇所に触れる度に、彼は艶声を上げるのだった。

彼は幾枚かの紙幣を手にしていた。街を歩いていると、店先には様々な女の服が飾られていた。彼は自分の体が女である事を否定するかのように、男物のズボンとシャツを着ていた。しかし、体や顔は女であることを隠しきれていない。鏡を見る度に、その事を痛感させられていた。彼はふと、店先に飾られている服を自分が着たらどう見えるだろう?と考えていた。
ショウウィンドウのガラスに彼の顔が映った。それなりに可愛い顔をしていた。が、髪の毛は何も手入れがされておらず、伸び放題となっていた。奇麗な服を着せてるには問題がある。彼は近くにあった美容院のドアをくぐった。再び服の前に戻った彼は着ている服を除けば、どこにでもいる女の子と変わりはなかった。彼の目に止まった服を着てみたい気持ちは更に強まっていた。
彼は店に入った。「あれ試着できますか?」とショウウィンドウの服を指した。「サイズは?」店員は厭な顔もせずに応対してくれた。分からないと彼が言うと、彼の体にメジャーが当てられた。しばらくして飾ってあったものと同じ服が彼の前に差し出された。
「お似合いですね。」言われるまでもなく、彼は美しく装った自分自身に陶酔していた。更に、アクセサリーや化粧がどんなに自分を奇麗に見せるかを想像していた。
しかし、それらを実行するには費用がかかるのだ。この服でさえ、彼の手持ちでは手に入れることはできない。お金を得る必要がある。彼は二度の実績から体を売ることが最大の近道であると知っていた。彼はしばらく思案した。

彼は今日も駅前のベンチで男を待っていた。男から得た金で毎日違った服を着ることができた。様々なアクセサリーを身にまとう。自分の美しさがワンランク上がる度に、寄ってくる男達のランクも上がっていった。
そして彼はその街から消えた。

「あぁん、んあん♪」彼は艶声を上げる。男はその気になって、ありったけの精を彼の膣に放出する。毎日異なった男が彼のマンションを訪れてくる。彼を抱いて満足すると、彼に報酬を残してゆく。その金で彼は自らを飾りたてる。彼は壁一面を占める大きな鏡に時間をかけてドレスアップした自分を映し出しては悦に入るのだった。

侵略者?(前編)

雨が降っていた。
窓の外を色とりどりの傘を差して小学校の子供達が通り過ぎていった。街は平和な光景で溢れかえっていた。

ひゅ~~っと何かが風を切る音がした。
ドンッと床が突き上げられる。
街の中を衝撃波が突き抜け、そこここで窓ガラスが割れていった。

いくつもの車のクラクションが鳴り渡り、あたりが騒音に包まれていた。空が黒雲に塗り潰されてゆく。誰かが叫んでいた。女の悲鳴と泣き声がそれに重なる。
何が起きたのか?それが途方もなく悪い事象であろう事は容易に想像がついた。
「避難しろ。ここから離れるんだ。」警官でも消防でもない私服の男が叫び走り回っていた。人々は本能的に彼の指示に従うべきだと思った。そして、それを行動に移す。傷付いた人に肩を貸し、お互いに励ましあって歩き始めていた。

その中心には宇宙から飛来したモノが在った。それは手足の生えたオタマジャクシのような姿をしていた。半透明の体を自ら発する光で輝かせながら宙に浮いていた。
「お前!」そいつが男を呼んだ。 実際には声ではなく、男の頭の中にそう響いていた。声は強制力を伴っていた。男は抗うこともできず、倒れていた女の子を腕に抱いたまま、そいつの下に近付いていった。
「お前はこの星の支配的な種の一員だな。ここではこの姿を維持できない。お前の身体を貰い受ける。」未知の生物がそう宣言すると、男の身体が光に包まれた。彼を包む光は未知の生物の発する光と融合する。やがて光が褪せると、そこに未知の生物の姿はなくなっていた。

どさり!
何かが落ちる音とともに、彼は正気を取り戻した。「いたたたっ」と落ちた時に打ち付けた尻をさする。と、同時に彼は違和感に気付いた。着ている服が違う。声も彼本来の声ではない。何より、目の前にかざした手は子供のように小さかった。
「え?」彼は脇に立っていた男に気付き、見上げるようにその顔を見た。「俺、なのか?」脇に立っていた男は彼自身であった。状況から察するに今の自分は抱いていた少女になってしまったのだろう、と彼は思っていた。では、彼の元の身体はどうなったのだろうと彼が考えていると、「ふむ。何とかなりそうだ。しかし、言葉を音にしなければならないとは面倒だな。」そう言って男の身体を手に入れたモノは彼を見下ろした。
「おい、お前。いつまでそうしてるんだ。さっさと立つんだ。」男の言葉に彼は立ち上がった。子供の身体では立っても男を見上げるしかない。「お前は私の命令には逆らえないようにしてある。お前にはこの世界の事を教えてもらう。ついてくるんだ。」男はそう言って歩き始めた。彼は男の指示に従い、その後を早足でついて行くしかなかった。

男は本当に何も知らないようであった。しかし、目の前の惨状と彼自身の現実を考えると、男をそのままにしておくには危険極まりないと思えた。彼はひとまず男を自分の家に招き入れた。傍から見れば男が小学生の女の子を連れ込んでいるようにしか見えない。が、既に辺りの人々は避難所に移動していて彼等を見咎める者は一人もいなかった。
電気もガスもない暗い部屋の中で男は彼に聞いた。「で、これからどうすれば良い?」彼は男をここに留めておく事だけを考えていた。「夜だからベッドに入って眠るんだ。」そう言って男を寝室に案内した。「寝る時はパジャマに着替えるんだ。」とタンスから彼のパジャマを出した。
男は着替えが済むと「お前も着替えろ。」彼に言った。彼は男の言葉に逆らう事はできない。着ていた物を脱ぎ、Tシャツをパジャマ代わりに着た。男をベッドに上がらせると、彼は床に寝ようとした。すると「寝る場所はベッドなのだろう。」男は彼の発言に忠実であった。そして彼にも同じ事をさせるのが当然に如く、彼をベッドに上がらせた。
狭いベッドで二人の身体が密着する。幼くとも彼の肉体は女であった。当然、男は生理現象に遭遇する。「何なんだ?これは。」男は彼に説明を求めた。彼は説明するしかなかった。そして…
男は彼の発言に忠実であった。そして彼は男の言葉に逆らえなかった。男は彼の説明を実行に移す。彼の幼い少女の肉体は男の…彼自身のモノを受け入れるにはあまりにも未熟であったが、彼はそれを受け入れるしかなかった。男が疲れ果て眠りに就くまで、彼は痛みに耐え続けた。

窓の外に朝日が差し込んでいた。彼は男が今だ熟睡しているのを見届けてからベッドを抜け出した。男の言葉さえなければ彼は自由に行動することができる。男の声の届かない所まで離れる事ができれば良い。彼は外に出ることにした。もちろん、ダボダボのTシャツのままでは外に出られない。彼は気が進まなかったが他に着るものがないので、昨日着ていた少女の服に着替えた。
外に出る。とにかく、今は男から離れる事が全てであった。近くの避難所には男が現れる可能性がある。また、子供の姿であるので、だれかに見付かれば強制的に避難所に連れていかれてしまう。この子は通学途中であったことを考えると、親は男の近くの避難所にいるはずだ。そこに戻される訳にはいかない。彼は人目に付かないようにして移動していった。

事件から数ヶ月後、彼のアパートからベッドの上で餓死している男が発見されていた。安眠マスクを付けて寝続けていたようで、それは自ら食事を採ることを断っていたようにも見えたという。

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