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2007年11月14日 (水)

赤い靴

船が見たくて横浜まで足を延ばした。
岸壁に小さな波が打ち付けてはチャプリと音を立てている。柵に手を掛け、沖にいる船達を眺めていた。停泊している大きな船は貨物船。頻繁に行き交う小さな船は港を巡る観光船だろうか?僕の視線は大桟橋にある豪華客船に注がれた。「あんな船で海外旅行に行かれたら良いなぁ。」
僕は声に出したつもりはなかったが、その男はそれを聞いていたようだ。「あの船に乗ってみるかい?」声のした方を向くと、いかにも上品な紳士といった風采の男が立っていた。「旅行にまでは連れて行けないが、今夜のパーティに一緒に出てみないかい?」豪華客船の中に入れるなんてめったに経験できるものではない。「良いんですか?」「もちろんだよ。」その場で決めてしまった。僕は紳士に連れられてタラップを昇っていた。
「ここが私の部屋だよ。」とドアが開けられた。壁側には今夜のパーティに備えて、タキシードとドレスが準備されていた。「その人なの?」ベッドから弱々しい女の人の声がした。「そうだよ。喜んで引き受けてくれた。」と僕をベッドに近付けた。「私の妻だ。体調を崩していてね。君には彼女の代わりにパーティに出てもらうことになる。」「そうね。じゃあ支度を始めましょうか?」「支度って?」「バーティはオフィシャルなものだからドレスコードがある。私もそうだが、君にも着替えが必要なのだよ。大丈夫。君の服も用意してある。妻が手伝ってくれるから任せておきなさい。」そう言って男は壁のタキシードを手にすると、隣室に消えていった。
「さぁ、あなたも支度をしなくちゃね。」と夫人がベッドの上に半身を起こした。「まずは着ているものを全部脱いで頂戴。あたしはこんなお婆さんですもの、恥ずかしがることはないわ。」僕は言われた通りに服を脱いでいった。「で、何を着れば良いんですか?」壁にあるのは夫人が着る予定だったドレスしかない。そして、それ以外に用意されている服は見当たらなかった。まさか?とは思ったが口には出せなかった。「わたしの言う通りにしてね。」夫人は手元に置いてあったモノを渡した。肌色をしたサポータのようなパンツだった。僕がそれを履くと、夫人は呪文のようなものを唱えた。
体がほかほかと暖かくなり、頭がボーっとしてきた。目で見ているものは認識できるのだが、それがどういう意味を持つのかまでは思い至らない。目の前でパンツの境目があやふやとなり、僕の皮膚と区別が付かなくなった。下腹が引き締まと同時にペニスの膨らみがなくなり平らになってゆく。股間には縦の筋が浮かび上がっていた。
「では、ドレスを取ってきて頂戴。」僕は言われた通り壁のドレスを手に取っていた。シルクの下着の上にドレスをまとった。「良く似合っているわ。」と、夫人が背中のファスナーを上げてくれた。
背中まで伸びた髪が頭上に結い上げられた。爪が紅く塗られ、顔に化粧が施される。「あとはココね。」と隙間の開いてブカブカな胸元に夫人の手が充てられる。唱えられる呪文と共に、ずっしりとした重みが胸に生じ、ドレスの胸元を形よく埋めていった。
「さぁ、お嬢様。あちらでお父様がお待ちよ。」と扉が開かれた。タキシードを着た男が僕に手を差し延べる。「今日はお母さんの代役を頼むな。君は私達の娘だ。」「はい、お父様。」そう答えた僕の声は鈴を鳴らすような愛らしい女の子の声だった。僕はドレスの端を摘まみ優雅なお辞儀をしていた。

港が遠くに離れてゆく。「いいんだね?」との問い掛けに、僕は「はい、お父様。」と答えていた。
パーティの後も僕は彼等の娘として船の中ににいた。幾人もの男達から誘いを受け、父の眼鏡に適った男と一夜だけの交際をする。僕は身も心も女となっていった。僕は母から女のたしなみを教えられ、男達に奉仕する。男達は僕に快感を与えてくれる。「君のおかげで私の商売も順調だよ。よかったら次の港でも協力してくれないかね?」僕はこのまま船に乗っていられる事が嬉しかった。その夜、僕は父にい抱かれた。そして、彼等の家族として迎え入れられた。
甲板を吹き抜ける風が僕の解いた髪をなびかせる。視線を落とすと紺色のワンピースも風に揺れていた。スカートに見え隠れするように、可愛らしい赤い色の靴の先が覗いていた。
僕は再び去りゆく横浜の港を見た。古い歌の詩が頭を過ぎっていった。
「赤い靴履いていた女の子…」

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コメント

海見てた若い男の子~異人さんに連れられて~いいちゃったぁ~~♪

あの歌にはこういうお話もあったのかぁ。
さすが奈落さん。次はどんなお話でしょう?

何時も見ていますが、さすがに奈落さん。
短いながらもとても官能的で素晴らしかったです。
すぐに次の話が出ているから楽しみです。

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