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2007年8月19日 (日)

無題

僕の股間を撫であげる手を拒絶することはできなかった。「ぁあん♪」と艶かしい声をあげてしまう。その声に呼応するように、股間に這わされた手から指が秘裂に割り込んできた。
ぬめりと指を包むように体液が分泌される。指が中に入り肉壁を刺激する。溢れ出る愛液がクチュクチュと淫しい音を発する。指の腹が敏感な核に触れる度、僕は快感に身を捻り嬌声を上げるのだった。

それは通販でみつけた怪しい薬だった。体力増進、記憶力倍増、美顔回復、悪霊退散、いかがわしい煽り文句の片すみにひっそりと載っていたのが「快感百倍」に目が止まった。一般男性の性的快感の百倍の快感を体験できるという。しばらくまよったが、僕はその薬を購入してしまっていた。数日後、ポストに薬の入った封筒が入っていた。一粒の丸薬に、分厚い効能書きが添えられていた。効能書きは最初の数枚に目を通しただけで頭が痛くなった。僕は早速コップに水を注ぐと、一気に薬を飲み下していた。すぐに身体が火照ってくる。下半身に血流が集中し、ペニスが膨れ始めた。効能通りなのだろう、敏感になったペニスはパンツに触れると痛い程である。
僕は急いでパンツを脱いだ。ペニスはビクビクと脈動している。その度に今まで感じた事のない快感が襲ってくる。これで指を触れたらどうなるのだろうか?好奇心に勝てず僕はその先端にそっと指を触れてみた。




何かを感じる暇もなく、僕は失神していた。気が付いた時は既に朝だった。僕は下半身丸出しで寝てしまっていたようだ。昨夜のあれ程の快感にもかかわらず、射精はなかったようだ。いつもなら饐えた香りを嗅ぐと後始末を思いうんざりするのだが、今朝はそんな事はない。軽くなった気分で着替えを始めた。
新しいバンツを履こうとして異変に気付いた。あれ程敏感になっていたペニスが見当たらないのだ。履きかけのパンツを降ろし、床の上に座ると僕は股間を覗き込んだ。そこには女の子のように溝が穿たれていた。指で押し広げると肉襞が現れた。これではまるで女の股間ではないか?と更に指を使うと、僕はそこに膣へと続く穴の入り口を探し当てていた。その手前に肉芽のようなものがあった。見るからに僕のペニスの成れの果てに思える。
確かめようと指を伸ばそうとした時、壁の時計が時報を鳴り響かせた。(遅刻?)僕はあわてて立ち上がるとパンツを履き直し、服を着替えた。

外見はいつもの「僕」である。しかし、その股間にペニスは無く、代わりに女姓のモノが付いているのだ。誰も気付く筈はないと、僕はいつもの満員電車に乗っていた。
(んぐっ)(はふっ)僕は喉を這上がってくる淫声を必死でかみ殺していた。丸薬はその効能通り、僕の股間を百倍以上に感じ易くしていた。満員電車の身動きができない中で、サラリーマンの鞄の角が、ちょうど僕の股間の溝に当たっていた。電車の振動と供に、微妙な刺激が与えられるのだ。声は我慢出来ても、下の口は刺激に正直なようだ。すぐにもそこが潤んでくるのを感じた。しばらくすればズボンに染みが浮いてくるだろう。大腿の内側を雫が落ちてゆくのを感じた。

(欲しい♪)得体の知れない欲求に襲われた。僕の腹の中で子宮が疼いている。膣が熱くて硬いものを欲していた。
(男なのに)必死でその欲望を否定しようとするが、肉体が言うことを聞かない。手近の男に身体を擦り寄せて欲しいものを手にいれようと動こうとするのを強引に引き離し、最初に着いた駅で電車を降りた。

疼きは収まらない。僕はトイレに駆け込み、個室のドアを閉めた。ズボンを降ろし、股間を撫であげた。「ああん♪」百倍の快感が僕を捉て離さない。僕は股間に這わした手の指を秘裂に割り込ませた…

入れ換わり

目の前にいるのは本当に僕自身なのだろうか?
ミキが取り寄せた女装用のパーツと彼女の化粧の技術は僕の外見を全く女に変えてしまっていた。
「どう?」僕の中にいるミキが言った。その声は少しハスキーで声だけからは男とも女ともつかない。「全然男に見えないよ。」と答えた僕の声は誰が聞いても女の子の声にしか聞こえない。そう、僕とミキは心と体が入れ換わってしまっていた。僕の体の中にはミキがいて、ミキの体の中に僕がいるのだ。
中身が入れ換わってしまったことは誰も知らない。僕はミキのミキは僕のふりをしている。幸いな事に僕等は同棲していたので四六時中互いのおかしな所を指摘できた。とは言っても、本来が男の僕にとってスカートを履くことはなかなかできなかった。必然的にジーパンなどのズボンばかり履いていた。そこをある日指摘されたのだ。
「あたしもたまにはスカートを履きたいわよ。」「僕を笑い物にさせたいのか?男がスカートを履くなんて一部の芸人とオカマくらいだぜ。」「じゃあ、笑われなければ履いても良いのね。」
僕はミキに抗うことはできなかった。そして、今のこの状態が展開されたのだ。「ねぇ、外に出ない?」思いもしなかった提案に戸惑っていると、「大丈夫よ。パスできるわ。」と僕の手を引いて立ち上がった。
傍から見れば女の二人連れである。どちらが男かと聞かれても答えに困るだろう。男のようななりはしていても、僕の身体は正真正銘の女なのだ。ミキはと言えば元々が女なので、服を引ん剥いて裸にでもしない限り女にしか見えない。そんな二人が街を歩けば、いつの間にか注目の的と化していた。
いくつもの視線を引き付けながら、僕等は一軒のブティックに足を踏み入れた。ミキが選んでゆく服はどれもレースやリボンがたくさんついた可愛らしいものばかりだった。当然、彼女自身が着るものと思っていると「あなたが着るのよ。」と事もなげ言い、僕を試着室に連れ込んだ。「服を脱げばあたしの正体がバレてしまうでしょう?それにこの身体では胸の開いた服は着られないわ。とにかく自分の服を買いたいんだからサイズは実際に着てみて確認しておきたいのよね。」「自分のって?」判っていた事だが、ミキがミキの服を買おうとすれば試着するのは当然、今の「ミキ」である僕になるのだ。ここまで来ては彼女の言うことを聞くしかなかった。
彼女の罠にはめられた僕はブティックを出る時には着てきた服は紙袋に詰められ、買ったばかりのヒラヒラのドレスに身を包んでいた。

街を歩いていると幾人ものナンパ男達に声を掛けられた。ミキはそんな彼等を鼻先であしらい、久々の「女」を楽しんでいた。僕はミキを見習うことなど出来ず、彼等を無視してミキの後を付いていくしかなかった。
仮の姿ではあるが「女」に戻れた事でミキのストレスはかなり改善されたようだ。「ねぇ、久し振りにシていかない?」
いつしか、陽も暮れて僕達はネオンのきらめくホテル街を歩いていた。ミキが完全に女に戻っていたので、自分が女である事を思い出したのはホテルの部屋の鏡に自分の姿が映し出された時だった。
「脱がせてあげるから、先にシャワーを浴びてきてね。」と風呂場に追い立てられた。入れ換わる前からもミキの裸は見ていたし、入れ換わってからも何度も風呂に入っているので、シャワーを浴びるだけなら何ていうことはない。が、今はSEXを前にしてのものだ。もちろん、入れ換わってからは一度もしていない。いつもなら、すでに準備態勢を整えている息子はどこにもいない。いや、僕の息子はミキの所にあるのだ。もしかして?と思うまでもなく、僕は女としてそれを受け入れる事になるのだ。ドクリと心臓が鳴り、下腹部に熱の塊が生まれた。熱は腹の中を焦がす。汗の粒が内股を落ちていった。
身体に付いた水分を拭き取り、タオルを巻いて何事もなかったかのように出ていくと、ミキはまだ服を着たままそこにいた。「ねえ、タオルを取って。」僕はミキの願いにすぐに従った。「これがあたしの身体なのね。」そう言って僕をベッドに押し倒すと、唇を合わせた。「女の子同士みたいね。」ミキの手が僕の乳房を揉みあげる。「ぼ、僕は男としてミキを抱くことしか考えられないね。」と僕はミキの腕を止めた。「じゃあ、あたしを抱いてくれる?」
僕は上半身を起こし、ミキを抱いた。胸が合わさる。布越しに生身の乳房と贋物が押し合う。ミキに与える筈の快感が僕の方にもたらされる。これではいけないと、体を入れ替えミキをベッドに押し倒した。捲れたスカートから覗いた大腿に指を這わした。「ああん♪」とミキが吐息を漏らした。「カンじてる?」僕が聞くと、「もっとね。」と要求する。僕は更にスカートの奥に手を延ばす。「?」彼女は既にショーツを脱いでおり、僕の指は股間の奥にあるモノに触れていた。「それ、あたしのクリちゃん。優しくシてね♪」
僕は彼女の言う通り、ソレが僕の息子ではなく彼女のクリトリスと思い込むようにした。硬くなったソレに指を絡めると、ビクリと動いた。と同時にミキが「あんっ」と喘ぐ。僕は掌と指でソレをさすり上げた。
もう一方の手で服の上からミキの胸を揉んでやると、本当に感じているのか、快感に悶える仕草をした。僕は男としてミキを攻めていた。「ああん、何か来そう。ねぇ、入れてくれる?」
僕は自分にペニスがあるつもりで自らの腰を彼女の股間に割り込ませた。彼女の脚を抱え、いざ挿入しようとしてペニスがないことに気付いた。「早く入れて♪我慢できない!」ミキが腰を振ると、何かの弾みかスルリと彼女のクリトリスが収まった。「ああ、良い!あたしのナカって凄い。もう即にでもイッちゃいそう♪」ミキはそのまま上機嫌で腰を振り始めた。が、僕の方はそれ所ではなかった。ミキのクリ、いやこの期に及んではもうペニスと認めるしかない、が僕の膣の中にいるのだ。それが動く度に得体の知れない快感に襲われるのだ。僕は必死になって漏れ出ようとする声をかみ殺した。
「あん、あん、あん♪」僕の下でミキが悶えている。見た目は女の子だが、彼女の股間のペニスは僕の膣で暴れているのだ。僕は、僕の感じている快感が女の快感であることを認めたくはなかったが、もうそれも限界だった。ミキのペニスが子宮口を突き上げてくる。僕の意志ではなく膣が震える。ミキの動きに併せて収縮を繰り返す。
「ぁあん、ぁあん。」知らずの内に声が漏れていた。「あなたもカンジているのね。一緒にイきましょう♪」ミキのリズムが変わった。フィニッシュに向けて激しさを増す。「あんあんあん」二人の媚声がハモっている。そしてミキの動きが止まった。「あ、あ~~~ん!!」ミキが声を上げる。僕のナカにミキのペニスから熱い塊が注ぎ込まれた。多分僕は嬌声を上げていただろう。込み上げてきた強烈な快感に、僕は意識を失っていた。

女性に生理があるということに気が付いたのは気分の悪い日が続き、計らずもミキの前で嘔吐しそうになった時だった。「つわりかもね?」と冗談で言ったつもりが、見る見るミキの顔色が変わっていった。「あんた、この前の生理はいつだったの?」と迫られたが、僕はのほほんと「生理って?」と聞き返す始末だった。
そう実際入れ換わってこの方、僕は一度も生理と言うものになった事がなかった。だから生理が来ない事を気付く事など出来る筈もない。
「中絶は厭よ。」「ぼ、僕が産むのか?」「この際、元に戻ることは諦めた方が良いわね。」ミキはそう言ってしばらく考え込んだ。

「ミキさん。」ミキが真剣な顔をして僕に向き直った。「ミキはお前だろう?」僕は言ったが、「もう覚悟を決めましょう。今日からはあなたがミキよ。そしてミキ、僕と結婚しないか?」
突然の展開に僕は何も言えなかった。「別に子供が出来たから責任を取るというものではない。確かに子供はきっかけだけど、僕は君が好きなんだ。男だとか、女だとかは関係ないの。純粋に君が好きなんだ。」ミキの瞳は真っすぐに僕を向いていた。「愛している。結婚してくれるかい?」僕は何と答えて良いか判らなかった。普通ならこんな時、考えさせてくださいとか言って少し時間を置くべきなのだろう。いや、本来は男の僕が言わなければいけない台詞だ。
ミキの視線は熱かった。僕は目を反らせられなかった。何かを言わなければ、と喉を震わした。
「はい。」僕の口はそう言っていた。
ミキが僕を抱き締めた。そして、唇を合わせる。キスは長い間続き、僕は気を失いそうになっていた。

「ミキ♪」彼が僕の掌を握ってくれた。幾分か気分が楽になる。お腹からの痛みが再びやってきて、僕が顔をしかめると彼が手に力を込めた。「大丈夫よ。女の人はみんな経験することだもの。」僕はそう言って彼の手を離した。
ベッドが分娩室に続く扉をくぐった。「やさしそうな旦那さんね。」ベッドを押していた娘が言った。「はい♪」
今の僕にはもう迷いはなかった。僕は彼の妻であり、生まれてくるこの子の母になるのだ。

「さぁ、あと一息ですよ。」医師の声に合わせて再度いきんだ。気が遠くなりかける。その直後、大きな赤ん坊の泣き声が響き渡った。「お母さんに似た愛らしい女の子ですよ。」その声を聞いて僕はほっと胸を撫で降ろした。

今日は特別な日。僕は娘を抱いて待っていた。扉が開き、美しい女性が現れた。「ミキ、」僕が声を掛けようとすると、「ミキは貴女でしょう?あたしはマキ。マミちゃんのもう一人のママよね♪」と僕の腕の中からマミを奪ってゆく。
一年に一度だけ、ミキは女に戻る。それが、僕達の約束なのだ。今日だけはマミの母親の座を彼女に譲ってあげる。
今日は僕達が入れ換わってしまった記念日だから...

泉の秘密

親友の誘いに乗って、夏休みを彼の故里で過ごすことになった。
故里と言っても、彼が幼い頃に過ごしていた彼の実家は既に無く、僕達は小さな別荘を借りてひと夏を過ごすことにしたのだ。観光地ではないが、それなりに観る所はあった。しかし、炎天下を歩き回るより僕等は別荘のある木立に連なる森の中の小川で涼を取ることが多かった。「この森は部落の氏神様の森で、その奥にある神聖な泉がこの小川の源になっているんだ。」晃司の話に、「その泉を見てみたい。」と僕が言うと晃司は猛烈に反対した。
反対されると余計に気になるなが人の性である。僕は朝早く、まだ晃司が眠っているうちに別荘を抜け出していった。空はまだ暗かったが、別荘の周りはだいたい解っている。そして、森の中の小川に着く頃には空も明るさを湛え始めていた。僕は小川に沿って上流へと向かった。途中、何度か木々の間に朱塗りの鳥居が見えた。
朝日が顔を出した頃、僕は問題の泉の前に立っていた。泉はしめ繩で囲まれ、供え物が置かれていた。僕は縄をくぐり、泉に手を差し延べた。小川の水も奇麗であったが、涌き出たばかりの水は更にキラキラと輝いているようだった。
僕は泉の水を掬い上げ、口に含んだ。
その直後、僕の意識はプツリと途絶えていた。

「…、ゴロー、吾郎!」
僕を呼んでいたのは晃司だった。「気が付いたか?」心配そうな晃司の顔が覗き込んでくる。どうやら僕は別荘に戻されていたようだ。起きようとすると「もう少し安静にしていた方が良い。」とベッドに押し戻された。
「吾郎、しばらくの間、僕の話を聞いて欲しい。」そう晃司は寂しそうに言った。「この部落の昔話なんだ。」彼の申し出を断る理由もなかったので、僕は頷き先を促した。
「昔、一人の女の子がいた。彼女は好奇心が旺盛で、何でも知りたがった。当然のように森に流れる小川の源に興味を持った。大人達から源が泉である事と同時に、そこに行ってはいけないと、きつく咎められた。しかし、小さな子供にとって大人の言い分は決して理解できるものではない。ある朝、彼女は独りで森に出掛けていった。
程なく女の子はしめ繩に囲まれた泉の前に立っていた。泉は水を流しているのに水嵩が減っているようには見えない。見渡したところ、どこにも水道の蛇口はなかった。彼女はどこかに蛇口はないものかと、探しまわった。気が付くと、彼女は泉の中に足を踏み入れていた。
やがて女の子は泉の底から水が涌き出ている所を発見した。もっと良く見ようと彼女は泉の水に顔を浸けた。水は岩陰から出ていた。さらに首を延ばすと岩に隠れるように大きな水晶玉があり、その下の穴から噴き出す水流で少しだが浮き上がっている。それは朝日を受けてキラキラと輝いていた。
わぁ、奇麗。女の子はそう呟いた。が、その拍子に水を飲んでしまい、そのまま意識を失ってしまった。
女の子は小川に流されている所を近所の人が見付け、すぐに病院に運ばれた。命に別状はなかったが、彼女の身にはとんでもない事が起こっていた。
両親が呼ばれ、医師が口を開いた。私は彼女を生まれた時から看てきています。確かに彼女は女の子でした。医師は夫婦に宣告した。今の年令なら隠せるでしょう。長じても手術で外見をそれらしく見せることは可能です。が、あなたがたのお嬢さんは既に完璧な男の子です。女の子として育てるよりは、肉体に合わせた育て方をする方がより自然な事と考えます。
一家はしばらくの後、ひっそりと部落を離れた。女の子は晃司と言う新しい名前と、男の子の戸籍を手に入れて、戸惑いながらも男の子として生活を始めたのでした。」

僕はハッとして股間に手を延ばした。パジャマの上からでは良く判らない。パンツの中に手を入れる。腕が胸の障害物に当たるが、とにかく指先を延ばしていった。
そこには、ある筈の物は無く、縦に刻まれた溝に指が挟まれた。
「な、ない…」僕の発した声は、いつもと違い甲高くなっていた。晃司の話に出てきた女の子が彼自身の過去である事は容易に理解できた。泉に落ちて女の子から男の子になった事は、不思議なことではあるが事実なのだろう。だからと言って、泉に落ちた僕が男から女になるなんて考えられない事だった。妙に女の子と同じような行動をとっていたからと言って、僕が女になったなどある筈がない!!
しかし、僕の指は何にも触れることはなかった。なにより、腕を圧迫している存在をこれ以上無視する事はできない。腕に触れる胸の感触、そして胸から伝わって来る腕の存在が、その肉塊が僕自身のバストであることを証明していた。
「まだ寝ていた方が良いよ。君は一週官の間眠り続けていたのだからね。ただでさえ栄養不足で弱っているのに、君の身体は全てが作り替えられたようなものだからね。」僕は晃司を見た。「鏡はあるか?」「あぁ、ちょっと待ってな。」と晃司は僕の側から離れた。僕はそっと胸に手を充てた。パジャマの上からバストの膨らみを確認した。ボタンを外し胸元から掌を差し込む。直接触れた僕のオッパイは柔らかく、弾力があった。
「吾郎、持ってきたよ。」と晃司が現れた。肩を抱くようにして僕の上半身を起こした。「あっ!」と僕が声を上げると「どうした?」と僕を覗き込む。「何でもないよ。」と言ったが、僕は胸の重さをはっきりと感じ、驚きの声を上げたのだった。
「どう?」と晃司が聞いてくる。鏡の中の僕は確かに僕自身ではあったが、眉毛が淡くなり、唇がふっくらとしていて、見ようによっては女に見えないこともなかった。「大丈夫だよ。吾郎は美人だよ。髪の毛をセットして、お化粧をすれば、だれもが振り返るよ。」美人と言われて少し心がウキウキした感じがしたのは、僕の心も女性化し始めているのではと心配になった。「よかったら着替えてみないか?」晃司の提案に同意すると、紙袋が渡された。「サイズは合っている筈だよ。」紙袋の中からは上下揃いの下着-ブラジャーとパンティが入っていた。「これを僕が着けるのか?」「女の人はみな、そうしているよ。今の君の身体では必需品に違いないね。着けかたは判る?」僕は自分の胸を見下ろした。確かに必要であるには違いない。僕はパジャマを脱ぐとブラジャーのストラップに腕を通した。
なかなかフックが掛からないでいると晃司が見兼ねて手伝ってくれた。ブラウスもまたボタンが左右逆に付いていて嵌るのに苦労した。「すぐに馴れるよ。」と晃司は笑って言う。「男には戻れないのか?」「僕が女の子に戻れないくらいね♪」
ベッドを降りてスカートを履かされた。椅子に座ると晃司は僕の顔に化粧を施していった。眉毛を切り揃え、その上から鉛筆で塗ってゆく。まつげが挟まれ、小さなブラシで何度か撫でられる。刷毛で頬に白粉が乗せられ、最期に口紅が塗られた。晃司はスティクから筆に付けて丁寧に唇の輪郭を描いていった。
全てが終わると「ちょっと待ってて。」と鏡を僕に渡して晃司は姿を消した。鏡を覗くとその中には見知らぬ女性がいた。「これが僕?」その女性はどこかに僕の面影はあるものの、どうしても自分自身とは思えなかった。しかし、僕が口を開けば彼女も口を開き、片目を潰れば彼女も同じようにする。僕は時間の経つのも忘れて鏡を覗き込んでいた。

「お待たせ。」晃司の声でようやく鏡から目を離した。振り向いた、が晃司はそこにはいなかった。そこにいたのは白いワンピースを着た女性だった。「どう?」その女性の話した声は確かに晃司のものだった。
「お、お前晃司か?」「そうよ、でもこの姿の時は光子ってよんでね♪」今度の晃司…光子の声はその姿に合った愛らしいものに変わっていた。
「お前、そんな趣味持っていたんだ。」「趣味じゃないよ。さっきも言ったでしょう?あたしは元々女の子だったの。男の子として生活していても、どこか違う気がしていて、結局心の病気になっちゃったの。そんな時、ママが言ったの。辛い時には光子に戻ってごらんなさいって。」「それを僕に言いたいがために、僕を女にしたのか?」「違うわ。信じて頂戴。あなたをこんなふうにするつもりはなかったの。確かに、この場所であたしの事を知ってもらいたかったのは事実だわ。あの泉も一緒に見にいくつもりだった。だけど、あなたを女にしたいなど、これっぽっちも思っていなかったのよ。」
僕はふうと溜め息をついた。「話は判った。晃司が光子になることも理解した。あとは、この先をどうするかだ。」「パパやママに相談すればあたしの時のように戸籍の変更はできると思う。学校の方もなんとかなる筈よ。」「女になった僕の姿をみんなに晒のか?とりあえず、しばらくはじっとしていたいな。」「だめなの?」「子供じゃないんだ。体形の変化は隠せるものじゃない。僕は女としては赤ちゃんのようなものだ。これからひとつづつ女を身に付けていかなければならないんだ。」「それは、あたしも協力するわ。女としてならあたしの方が先輩だものね。」

僕は夏休みの残りを女に馴れることに費やした。自宅に戻っても戸惑うばかりだからと、晃司の家に厄介になることにした。僕は「いつみ」という名前を付けられ、晃司とその母親から毎日、24時間、女になるための特訓を受けることになった。
服や化粧のみだしなみ、女らしい言葉や所作、家事一般をたたきこまれた。今日は休みだといってはショッピングに付き合わされる。

夏休み最後の日曜はプールに行くことになった。さすがに光子としては行けないので、僕は独りで女子更衣室で着替えることになった。他の女性達に混じって真新しいビキニの水着に着替えた。誰も僕の事を不審に思う事はなかった。
「いつみ!」と晃司が声を掛けてきた。彼のはだけられた胸を見て、一瞬どきりとする。男だった時には何度も見た筈なのに、何だってこう胸が高まるのだろうか?照れ隠しに準備体操もそこそこに、僕はプールに飛び込んでいた。

「水着の跡が付いているね。」僕はノースリーブのワンピースを着て晃司と夕暮れの公園を歩いていた。「光子ちゃんは水着を着ないの?」「跡が残ると物議を醸し出すからね。」
他に誰もいない公園を二人はしばらく無言で歩いていた。が、不意に晃司が立ち止まった。僕が振り返ると、そこには真剣な顔をした晃司がいた。「いつみ、これは責任を取るとか、そういった話ではないんだ。僕は男として、本気でいつみの事が好きになってしまったみたいなんだ。だから、僕と正式に付き合ってもらえないだろうか?」
「好き」という言葉に僕はどう反応して良いか判らなくなっていた。彼と同じように、僕も彼のことを好きになっているのではないだろうか?俯いた僕の肩が彼の腕に抱き寄せられた。
驚いて顔を上げると、そこに晃司の顔が迫っていた。明らかにキスを求めている。俯いたのが肯定と受け取られたのだろう。
僕は今更、否定することもないと、ゆっくりと瞼を閉じた。

鐘が鳴っていた。目の前の扉が開かれると赤い絨毯の上に白い布が道を作っていた。オルガンが鳴り響く。僕はゆっくりと一歩を踏み出した。その先には僕の愛する人が笑顔で待っている。
僕は女の幸せに満たされているのを感じていた。

入学試験

兄貴が東京の大学に行ってから、電話は掛かってくるものの一度も帰ってくることはなかった。
僕も高校三年となり、大学受験のために東京に出ていくことになった。東京では兄貴の所に泊めてもらおうとしたが、即座に断られた。結局ホテルに泊まることになった。試験日を考えると一週間の連泊となる。親にしてみれば心配な事ではあるが、僕にとっては初めて手にする完璧なプライベート空間にわくわくしていた。
試験の初日で手応えを感じた僕は、残りの試験より今度の土日の計画に向けて気持ちが集中していた。
土日の計画とは、皆の想像する通り「兄貴の住み処を襲撃する」である。それも、兄貴に気付かれないように、変装して行くのだ。僕は試験が終わると、残りの時間を翌日の準備ではなく、土日のための買い物についやしていた。その為の資金はこの一年間のバイトで充分に溜めておいたのだ。

そして土曜の朝。まだ空が暗いうちから支度を始めたが、兄貴のアパートに着いたのは昼近くだった。表札には兄貴の名前に並んで女の人の名前があった。あの兄貴が同棲していることに驚かされる。
気を取り直して呼び鈴を押した。「は~い♪」と女の人の声がした。カチャカチャと音がしてドアが開いた。「タカシよね?良く来たわね。とにかく上がりなさいな。」僕は彼女に腕を引かれ中に入っていた。(この女性は誰?なんで僕の事を知っているの?どうして、こうも簡単に変装が見破られたの?)混乱する頭のまま、彼女に導かれるままリビングのテーブルについた。コーヒーのカップが並べられ、彼女が席についた所でようやく一声だけ発することができた。
「あの~、兄貴は?」

しばらくの沈黙の後、彼女が口を開いた。「判らない?目の前にいるのよ。」そして彼女の声が変わった。「俺だよ、俺。」それは男の、兄貴の声だった。
「あ、兄貴?」僕は開いた口がふさがらなかった。「こら、この姿の時はお姉様と呼びなさい。」再び姿に合った女の声に戻っていた。「それにしても、あんたも随分可愛くして来たわね。さすがはあたしの弟よね。」
兄貴も兄貴であるが、僕が変装として選択したのが「女装」だったのは何か兄弟の縁があるのだろうか?「ねぇ、受験でこっちに来たんでしょう?どう案配は?大学はこっちに来れそう?」兄貴(?)の矢継ぎ早の質問には「な、なんとかなりそう。」と答えるのが精一杯だった。

一緒にお昼を食べようと外に連れ出された。勝手にマサミという名前を付けられ、食事の後も連れ廻された。「妹に服を買ってあげるのって憧れだったのよ。」そう言って試着室に運ばれてくる服を、僕は片端から着ていくしかなかった。
買い物が終わると、僕のボイストレーニングと称してカラオケBOXに缶詰にされた。当然の事ながら歌わされるのは美少女アイドルの曲ばかりだった。そして声の出しかただけでなく、女の子らしい仕草も同時にたたき込まれた。
結局、兄貴のアパートに泊まる事になった。風呂から出て素顔に戻りくつろいでいると、後から入った兄貴も出て来た。が、兄貴はバスタオルを胸の所で留めていた。兄貴の胸は女の人のように膨らんでいた。
僕の視線を感じたのか、兄貴(?)がバスタオルを外した。「ねえ、奇麗でしょう?」兄貴の体はどう見ても男には見えなかった。バストだけではない。ウエストはくびれ、なだらかなヒップラインにつながっていた。そして、股間の淡い茂みの下には何もなかった。
「見てみる?」と片脚を上げ、指で股間の裂け目を押し広げた。「どお?素適でしょう?」それはどこから見ても女の秘部そのものだった。「手術?」まさかとは思いつつ尋ねてみる。
「違うわよ。そんな大金持っていないし、痛いのも厭だからね♪」と、ハンドバックから何かを取り出した。「これなら簡単に女の子になれるのよ。あんたも使ってみる?」
僕はごくりと唾を飲み込んだ。僕が女装したのは単に兄貴にばれないよう変装することが目的だった筈だ。しかし、一日中連れ廻されて女の子でいることに馴らされてしまったのだろうか?僕はその「Vスキン」と書かれたパッケージから目が離せなくなっていた。
兄貴に手伝ってもらいスキンを装着した。ペニスが押し込められる痛みを我慢してしばらくすると僕の股間は女の子になっていた。「凄いね。」と言った僕の言葉はまだ男のままだった。「ほら、練習した通りにしないと恥ずかしいことになるわよ。」と兄貴が笑う。
「Vスキンはそこだけしか変えてくれないから、声とかはそのままなのよ。まぁ、変声器なんてものもあるけど地声でないとどうしても不自然さは残ってしまうものよ。」「わ、わかったわ。頑張ってみる。」僕は練習したての女声でそう答えた。

兄貴のベッドは何故か二人で寝ても充分な広さがあった。枕を並べて眠るなんて何年ぶりだろう?と考えているところに兄貴が身体を寄せてきた。避けるように背中を向けると、その背中にバストを圧し付けてきた。「あ、兄貴。止めろよ。男同士で何をするんだよ。」僕の抵抗を楽しむかのように、兄貴は腕を廻してきた。「何言っているの♪あたし達は女の子同士でしょう?これくらいのスキンシップは普通の事でしょう?」本物の女の子でない僕には、どこまでが普通なのかを知る術がなかった。
兄貴の身体が僕の背面に密着する。前に廻した手が股間に伸びてきた。「!!」これまで感じた事のない、猛烈な快感に襲われた。「気持ち良いでしょう?あなたのソコはちゃんと濡れているわよ♪」兄貴が指を動かすと僕の股間からクチュクチュと湿った音がする。その度に僕は喉に込み上げてくる嗚咽をかみ殺した。
「我慢することはないのよ。媚声を上げちゃいなさい。そうすれば、もっと気持ち良くなるわよ。」それは薄々気が付いていた。我慢しなければもっと大きな快感が得られる。しかし、それは男が決して味わう事のない「女」の快感なのだ。僕は変装しているだけで、女の子になりたい訳ではない。僕は本質的には「男」なのだ。
だが、兄貴の巧妙な責めは執拗に続いた。「ぁぁん…」と微かではあるが、一旦嗚咽を漏らすと堰を切ったように僕の口から甘声が続く。それは誰が聞いても女の嬌声にしか聞こえなかった。
「ああん、あん。お願い、欲しいの。もっと、もっと。」僕は股を開き、腰を突き上げていた。「そうね。じゃあ、これはどうかしら?」兄貴は枕元から棒状のモノを取り出した。バイブだった。実物は見た事がなかったが、女の人のアソコに入れて使うものだという知識はあった。それが、僕の中に入ってきた。スイッチが入れられた。バイブが僕の中で動き始めたのを最後に、僕の記憶はぷっつりと途絶えてしまっていた。

快感の余韻を引きずったまま、月曜の朝を迎えた。受験勉強で詰め込んだ知識は身体を動かすそばからボロボロとこぼれ落ちていった。電車に乗って試験会場に向かう。電車がトンネルに入ったとき、窓に僕の姿が映った。
「?」
僕は窓に映った自分の姿に愕然とした。僕は無意識の内にかつらを被り、化粧をしていた。兄貴に買ってもらったワンピースを着た僕は「女の子」にしか見えなかった。気が付くと視線を感じる。周りの男達から送られてくる視線は女の子を品定めする好色の視線だった。
いつもとは異なる視線は僕に緊張を与える。それは、僕に自分が女の子であることを意識させた。窓に映る自分が女の子としておかしな所がないか確認する。まわりにいる数少ない女性の視線を確認する。彼女等は一瞥しただけで、後は僕に関心を示すことはない。とりあえず、おかしな所はないと言う事なのだろう。
僕は再び男達に視線を戻した。「女」として彼等を見てみる。ヤニまみれのおじさん、いかにもスポーツマンといいたげに汗臭を撒き散らす若者、似合いもしないブランドスーツで気取っているサラリーマン。そんな中にひとりだけ目を曳かれた男性がいた。
このひとなら、あたしも抱かれても良いかな♪なんて思っていると、じわりと股間が潤んでくるのが感じられた。
(いかん、いかん。)僕は自分が男である事を思い出す。男に抱かれたいなんか、どうかしているぞと自分に言い聞かした。

試験場に入ると周りの雰囲気は一転する。張り詰めた緊張感が漂っている。私服の者もいるが、半分以上は高校の制服を着ている。男子が多いので私服の女の子は更に数が少なくなる。僕はそんな中で浮いた存在なのだろう、誰もが僕を見ては気にしているようだ。
「あなたはどこの出身なの?」教室の決められた席に着いた途端、見知らずの女の子に声を掛けられた。誰も知る者はいないと自分の通っている高校の名前を教えた。「あたしは聖蘭女子なんだ。」て、同郷?僕は自分が男であることがばれないように慎重に言葉を選んだ。特に自宅の場所が特定されないように注意する。当たり障りのない駅前の店の話題で時間をつないでいると、試験の予鈴が鳴った。
試験は思った程難しくはなかった。それよりも、僕はさっきの女の子の方が気になっていた。「ねぇ、一緒にお昼しない?」案の定、午前の試験が終わると声を掛けられた。断る理由も見付からぬまま、近くの喫茶店で食事をすることになった。ほとんど一方的に喋る彼女に付き合っているうち、彼女が僕の家の近くについてはあまり明るくないことが判った。午後の試験の後にも合うことになったが、心には大分ゆとりができていた。

試験の最期に面接があった。「君は普段もそういう服を着ているのかね?」試験官が僕に聞いた。「服装は自由と聞いています。何か問題があるのですか?」と聞き返すと、「自由な校風はウチのウリだが、自由の裏には責任が伴うことを理解してもらいたい。君にはその覚悟はあるのかね?」そう言ったのは中央に座っていた学長その人だった。僕は彼を見据えると、「はい。」と答えていた。

春がきた。僕は新調したワンピースを着て入学式の列に並んでいた。
人生の新しいページがこれから始まるのだ。

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