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2007年4月28日 (土)

勇者

竜王は断末魔の雄叫びを上げた。
俺は奴の唯一の弱点である首の付け根に突き立てた剣を引き抜いた。剣は奴の心臓を貫いていたのだろう、猛烈な勢いで青黒い血が噴き上げてきた。奴の命が消え欠けてゆく。と同時に奴の魔力の効果も消え始めていった。この城も崩壊を始めていた。
「お前は逃げないのか?」絶え絶えの息で竜王がそう言った。「ここからでは崩壊を逃れることは出来まい。元より貴様と心中する覚悟。貴様を殪せたのなら本望さ。」「その命に未練はないと?」「応!」
「ならば、その命貰い受ける。」床が波打ちだしたのは崩落の故か否かは確かめることはできなかった。竜王の声とともに、俺の意識はブラックアウトしていった。

俺は死んではいなかった。気が付くと俺は草の上に倒れていた。大きな怪我はしていないようであったが、指一本動かすことができなかった。
「ふむっ」と俺が唸った。両手を突き、身体を起こす。が、俺の身体は俺のとは別の意思で動かされていた。「解るか?勇者よ。」俺が喋っていた。「わたしは竜王だ。お前の身体に転生させてもらった。しばらくは魔力が使えないのでおとなしくしているが、いずれは竜王として復活させてもらうからな。」奴は俺に言い聞かせるように、そう言った。悔しいが、今の俺には奴を止める手だては何もなかった。
「勇者よ。さぞや悔しかろう?しかし、もっと悔しい思いをさせてやるから楽しみに待っていな。」

奴が街に戻ると、竜王を殪した勇者として盛大に迎え入れられた。奴は街に腰を落ち着けると、酒池肉林の毎日を送っていた。贅沢な衣服をまとい、王侯貴族並の料理を食し、名酒・幻酒を飲んでは手当たり次第に女を抱いた。自ら勇者に捧げる女もいれば、まわりから強制されて来たものもいる。生娘はもとより、器量が良ければ人妻もお構いなしで抱いていった。
そんな事をしていれば、当然に街の人々の反感を買うようになる。「そろそろ潮時かな?」奴はそう言うと、前から目を付けていた奴隷女を買い受けた。女を使って旅仕度を整えると、彼女も連れて街を後にした。
「アテナ。何で、お前も連れ出したか判るか?」奴は女に向かって言ったが、半分以上は俺に聞かせるためなのだろう。「当然の事ながら、夜の相手はしてもらう。だが、それ以上にお前の持っている星がわたしの竜王への進化に多大な力を与えるのだ。お前は犧えとして竜王様に捧げられることになる。光栄に思うんだな。」アテナは俯いたまま「はい。」とだけ言った。「良い良い。」と奴は上機嫌であった。「怖がることはない。その時のお前は、お前ではないのだからな?」アテナは訳が判らずどう反応したら良いか迷っていた。
「まずは勇者殿にお前の性技を教えてやってくれないかね?」と彼女の頭に手を置いた。と同時に俺の意識が渦のようなモノに呑み込まれる。視界が閉ざされていった。
「はい。」と俺は返事をしていた。その声は俺の声ではなかった。目の前には奴がいたが、今の俺の背丈では奴の顔は仰ぎ見る形になる。「勇者よ、聞こえるか?」奴がアテナに、アテナの内に居る俺に向かって言った。「わたしに奉仕することになるとは、さぞや悔しかろう。」俺は奴の内に居たときと同様、アテナの内でも何も出来ずにいた。「奉仕だけではないぞ。お前自身のモノでお前を慰めてやる。女の快感に喜悦する時こそ、お前とっての最大の屈辱であろう?」

夜が訪れた。奴の言葉通り、アテナは奴の前に跪ずいて奉仕を始めた。奴の内に居た時に奴と共に彼女の手や口からもたらされる快感を知った。今度は逆の立場で奴に快感を与えるのだ。アテナの、俺の手が奴のズボンの中からペニスを引き出していた。その先端にキスをする。不快な筈の臭いに俺は、アテナはうっとりとしていた。奉仕する事は不快ではなかった。アテナは喜々として奴のペニスをしごいている。その証拠に、彼女の股間が濡れ始めているのに俺は気付いていた。
俺の口の中に放たれた奴の精液を飲み込むと「ご褒美だ。」と言って、俺をベットに押し倒した。俺は股間を広げ奴を迎える体勢を取っていた。いつものように前技もなく挿入が開始される。「あ、ああ~~♪」俺は嬌声を上げていた。これまでに感じたことのない快感に全身を揺さぶられる。これが女の快感と判ってはいたが、屈辱を感じるより先に、その快感に圧倒されてしまった。

アテナにされた初日は最初の一突きだけで意識を失ってしまったが、毎夜のように繰り返されると、だんだんに耐性ができてくる。アテナの性技を受ける方ではなく、施す側から感じられるようになった。それは決して不快なものではなかった。
繰り返される度にいつしか、アテナの身体が覚えている技が俺自身のものとして刷り込まれていった。夜になると奴の前に跪づき、奴のペニスを咬えている俺がいた。股間を濡らし、うっとりと奉仕する快感に身を委ねていた。
奴に突かれ快感に喘ぐ。絶頂を迎え嬌声を上げる。短いインターバルに至福のまどろみを堪能する。まだ、奴とはつながれたままだった。俺の中で奴はまだ威力を保っていた。
「勇者どの?」唐突に奴が俺に声を掛けてきた。「いかがかな?女の快感は?」アテナは瞼を開き、奴の顔を見た。いや、アテナは何もしていなかった。俺がアテナの瞼を開いていたのだ。
「もうすぐ、竜王への進化の儀式が行えるようになる。女との約束だったな。犧えは女の代わりに勇者殿にやってもらう。しばらくは女の替わりに勇者どのに夜の相手をしてもらうことになる。よろしいかな?勇者殿。いや、新しいアテナよ。」
俺はアテナの身体を動かす事ができた。しかし、俺の精神は既にアテナの肉体に冒されていた。股間につながれた奴のペニスが活気を取り戻すと、そこから沸き起こってくる快感に敏感に反応してしまう。快感に導かれるように、俺は性技を使い奴を喜ばそうと奉仕を再開していた。快感に喘ぎ、歓喜の嬌声をあげる。俺はもう、アテナ以外の何者でもなかった。

「アテナよ。」奴に呼ばれ俺は「はい。」と答えていた。「これが進化の儀式の祭壇だ。」
奴は短期間の間に近くにいた山賊を手なずけ、近隣の山賊の砦を次々と落としていった。ついには立派な山城を手に入れ、その地下を祭壇に作り替えていた。「準備は全て整った。あとは新月の夜を待つばかりだ。」
俺の方も準備が整っていた。夜になると俺は奴の奴隷女と化してしまうが、昼間の内は自分の意思を保っていられる。どのような姿になろうとも、俺は勇者である。竜王の復活はなんとしてでも阻止しなければならないのだ。

最後の夜。俺は明日の夜には犧えとなり、この世から消える。奴もまた竜王に進化するため、この姿での契りは今宵限りとなる。俺はこれまでに習得した性技の全てを駆使して奴に奉仕した。それは奴を油断させるためであったが、それ以上に俺自身に快感として跳ね返ってきた。俺は意識を保つのに苦労しながらも、奴を満足させてやった。底無しの性欲かと思われたが、精液は搾り尽くされ、どんな性技を尽くしても萎えたままとなったペニスを前にしたのは夜も白み始めた頃だった。奴は既に疲れ切って眠っていた。俺も奴以上に疲れてはいたが、最後の一仕事が残っていた。
俺は奴の上に跨り、萎えたペニスを俺の中に導いた。呪文を唱えながら、俺は剣を抜いた。呪文は奴の動きを封じるものだった。
「アテナ?」俺の行動に異変を感じたらしいが、俺が呪文を唱え続ける限り、奴は身動きできない。俺は剣の切っ先を奴の喉に押し充てた。今の俺の力では奴を切り倒す事はできない。剣自体の重さで奴の急所を貫くしかないのだ。気管が切り裂かれ、奴はもう声を出せない。口をパクパクさせているのは、俺にこの体を放棄させようと言うのだろうか?
剣を左右に揺すると首を通る血管がちぎれる。太い血管からは大量の血が迸しる。体内から血液が失われるとともに、奴の動きが緩慢になる。それでも奴は、俺の呪文を途切れさせようとする。
奴は残った血を股間に集中させた。萎えていたペニスが俺の中で膨れあがる。快感が生まれ始めた。奴が俺の中で蠢く。喘ぎ声を上げそうになるが、俺は呪文を唱え続けた。
腕から力が抜ける。剣が倒れる。奴の首が裂かれているのが判る。切り口から零る血には、もう力はなかった。奴の胸に手を置くと、心臓が止まってゆくのが判った。それでも奴は最期の力を振り絞って、俺の中に精を注ぎ込んだ。
「あ、ああ~♪」俺は堪えきれずに呪文を止めてしまった。が、既に奴は息絶えていた。奴から体を離すと奴の放った精の一部が滴り落ちてきた。それは白い精液ではなく、ドス黒い血であった。

俺は山賊達に見付からないように城を抜け出した。俺は今度こそ、死なない決意で臨んでいた。生き抜く事が勇者の誇りである。

俺は竜王の噂も届かない村の教会の世話になっていた。「アテナさん。あまり無理をしないでくださいね。」司祭の奥様が優しく声を掛けてくれる。俺は臨月間近のお腹を抱えて立ち上がった。
そう、俺のお腹には新しい生命が宿っている。奴の、いや、だれのでもない!「俺」の子供だ。

俺はこの子と共にここで平和に暮らしていけるよう、神に祈った。

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コメント

皮肉な結果ですね。
マンガで、自分の妻と尊敬する大学教授の魂をいれかえる話がありますが、皮肉なことに、自分の体は妻の魂に乗っ取られ、自分は生まれてくる子供の身体に入ってしまいます。
妻になった教授が、生まれてきた子供を見て、「ちゃんと教育するから大丈夫」と言うシーンを思い出しました。
生まれ変わったであろう魔王も、元勇者の母に育てられてまともに育つのかしら?
その前に、生まれてくる子供は、男の子?女の子?

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