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2007年1月27日 (土)

ベットに入りサイドテーブルに置いてある瓶から一錠の薬を取り出す。「良い夢が見れますように。」そう言って飲み下すと、一気に深い眠りへと引き込まれていった。

ドラムがリズムを刻んでいる。ベースが響き、ギターがイントロを奏でる。そしてスポットライトが当たった。
僕は歌い始めていた。

聞いた事のない歌だったが、僕の口は滑らかに詩を紡いでいた。そして、その声は甲高い少女の声だった。客席にいる親衛隊のお兄さん達からの声援にも笑顔で応えていた。
マイクを持つ手にはレースがヒラヒラとなびく手袋をしていた。僕の出す声に似合った小さくて華奢な手だった。
リズムに合わせて脚が軽やかにステップを踏んでいた。信じられないくらい踵の高いサンダルだったが、僕は難無く踊り続けていた。動く度に大腿に当たってくるものがあった。スカートの裾である。ここまで状況が把握できていれば当然であるが、僕はスカートを履いていた。ステージの為の衣装として女装しているレベルではない。ドレスの下には女物の下着を付けているのが判った。とくに胸はブラジャーで固定されているにもかかわらず、僕が動く度に大きめのバストは暴走を繰り返していた。

「おつかれさま。」ステージが終わり、皆が声を掛け合う。僕は控室の鏡の前で大きく溜め息をついていた。「今日はどうもありがとう。これがアルバイト代だ。」と白い封筒を渡してきたのは、この娘のマネージャだ。「じゃあ、脱ぐのを手伝ってあげよう。」もちろん、この衣装も一人では脱着できないが、更にその下の特殊スーツは間違いなく彼の補助が必要である。そして、特殊スーツの中から出てきたのは若い男=僕自身の身体だった。楽屋口から外に出ると、先程の親衛隊のお兄さん達が待ち構えていた。が、僕に熱い声援を送ってくれた彼らだが、今の僕には見向きもしてくれなかった。

数日後、あのマネージャから電話があった。彼女がしばらく入院しなければならなくなったらしい。今度はステージの上だけの代役ではないのだ。無理に決まっているとは思いつつも、彼女の普段着を着てみたいと僕の心は揺れ動いていた。

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コメント

おお!奈落さんの皮モノ。
ん?ひょっとして奈落さんの実体験?

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